ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「友罪」

友罪」観ました。
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薬丸岳の同名小説を。『64 ロクヨン』の瀬々敬久監督で映画化。

 

ジャーナリストの夢を諦め、とある町工場で見習いとして働き始めた益田(生田斗真)。同じ日から働きだした鈴木(瑛太)。

街工場の持つ寮に揃って入寮。隣同士の部屋になったけれど。誰とも関わろうとはしない鈴木。

毎日皆が寝静まった頃帰ってきて、そして毎夜うなされている。

何を考えているのか分からない。一体鈴木は何者なのか。

前後して。工場の近くで、小学生男子の滅多刺しにされた死体が発見される。

 

益田と鈴木を主軸として。次第に鈴木と恋仲になっていく美代子(夏帆)。益田の元彼女で雑誌記者を山本美月。そして鈴木がかつて在籍した医療少年院の先生を富田靖子

タクシードライバー佐藤浩市が演じた。

 

「いや…これ。話詰め込み過ぎなんちゃうの。」

 

いきなり結論を出してしまいますが。どうしても言わざるを得ない。散漫だと。

 

「益田と鈴木の主軸のみで十分やろう。富田靖子佐藤浩市のパート、ばっさり切っていいんちゃうの。」

 

~一体鈴木は何者なのか。って。予告と宣伝から既に『鈴木が17年前に14歳で殺人事件を犯した元少年だった』と公表しているので。

「猟奇殺人を犯した人間の今」「加害者とその家族の一生涯抱えていかなければいけない罪」「一家離散」「人は犯罪者に対してどういう印象を持つのか」「大人は助けてくれない」そういう…聞いた事あるなあ~という内容のオンパレード。

 

なので。「かつて罪を犯した人間は幸せになってはいけないの」「人様の家族を壊したお前が家族を作ろうとするな」「あんた。謝る事に慣れてるんだよ」お決まりのセリフ山積。

 

文句ばかりが先行しましたが。一応話の流れとして。

工場付近で起きた児童殺傷事件。犯人不明の中、ふとネットで沸き上がった『元少年の仕業じゃないの』『あいつ、最近まで働いていた工場辞めて行方分からねえぞ』という無責任な発言。それを知った雑誌記者が元彼の益田に相談(何で?あんたの仕事守秘義務とか無いの?コンプライアンスは??)。

慣れない生活で疲労しながらも、益田も何となく調べたら(しかもウィキペディアレベル)元少年はまさかのお隣さん、鈴木であったと。

鈴木という人物。確かに得体は知れないし、初めは不気味だった。けれど。

一緒に働いて。暮らしていくうちに、次第に打ち解けてくれる部分もあって。優しい一面や笑う顔も見た。俺たちは友達。なのに。

 

「ていう所メインでええやないかあああ~」

 

「少女漫画ですか?『天使なんかじゃない』??」ベタ中のベタ、捨て猫云々からの(いやいや、そういやDVストーカー男からやった)鈴木と美代子の恋。

美代子に関しては「警察に相談しろ。そいつのやっている事は犯罪だ」と真顔で言うしかない当方。

まあ。アダルトチルドレン鈴木と、美代子と、「その引きずり方は夏目漱石の『こころ』の先生っぽ過ぎる。Kしかり、その親友しかり、なんて当てつけがましい死に方をするんだ」中学生時代の罪に悩まされ続ける益田。その3人の心情を丁寧に掘り下げていけばよかったんですよ。

 

医療少年院の先生。彼らと関わって。彼らには闇もあるけれど甘えたい所もある。そういう視点でのみ描けばいいのに。先生と娘の話は何処か他所でやってくれ。

そして何より蛇足だったタクシードライバー。『加害者家族』って、てっきり鈴木の父親かと思うじゃないですか。それが全然違うって。

 

「またねえ。これ、役者は軒並み良い演技をしているんですよ」(何様)

 

佐藤浩市富田靖子は当然。益田の中学時代の親友の母親、坂井真紀とか。脇役も渡辺真紀子。光石研宇野祥平等、早々たるメンバーが全力投球。

 

「弁当の美味しそうな奴全部乗せ状態。結局何食べてるんだか分からなくなっちゃうんよな。」

 

そして。主演の生田斗真瑛太

瑛太の演技プラン…確かに凄かったけれど…わざとらしいと言えばそうも見えてしまって…」もごもごする当方。「あの。いっそ生田斗真瑛太、逆にしてみても良かったんじゃない?」

『脳男』で心の無いキャラクターを演じていた生田斗真。意外とこういう役嵌りそうな気がするんやけれど。

 

「そして監督よ。女優を綺麗に撮る気無いやろう」

富田靖子。坂井真紀。渡辺真紀子。ベテラン手練れ女優達の「(本当にすみません)老けたなあ~」という映り方。

「しかしそこで唯一驚異的な透明感を見せた夏帆!一体今幾つだよ!何あのイノセント感‼」どんなに汚れてみせたって。絶対に汚れない。却って恐ろしい…。

 

結局。「何がジャーナリズムだ」というゲス展開に依って二人の友情は破られ。けれど俺たちはまた出会う。という終焉。

 

「うわああ。全然しっくりこない」

元少年犯罪者。ひっそりと生きていたはずの彼と俺はたまたま出会ってしまった。始めは何も知らなくて。けれど次第に打ちとけあって。「大切な事」も話せそうな信頼関係も構築されてきた。なのに。そこで知ってしまった彼の罪。けれど。「あいつは怪物じゃない」。だって彼はこの歳で出来た友達。不器用な友達。

彼だけが罪を負っているんじゃない。俺だって人には言えなかった罪がある。

 

順を追って振り返れば、そういう話であったとは理解しているんですがね。何だか平行事案が多すぎて。

 

「何か惜しい。」確かに満腹にはなりましたが。全部乗せ弁当感が半端なかったです。