ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「孤狼の血」

孤狼の血」観ました。
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「これは『アウトレイジ』に対する東映の答えですね」ー古舘伊知郎

 

「最早現代の日本に『ノアール作品(暴力映画)』は存在しない」

当方の属する、たった二人の映画部で。時折語られる、『日本ノアール作品絶滅説』

深作欣二監督亡き後の継承者不在」「アウトレイジは『死に方大喜利』と化した」「園子温監督は?」「冷たい熱帯魚以降のマンネリ感」「敢えて言うなら井筒和幸監督かも…」そして「もうバイオレンス畑は韓国映画に持って行かれる」となっていた昨今。

「ああそうか。白石和彌監督!『日本で一番悪い奴ら』の‼」しかも会社は東映

これは期待できるかなと。胸を膨らませて公開翌日に観に行きました。

 

「冒頭の『東映』ロゴの古さ!ぐっとくるわああ~」まだ何も始まっていないのに。高まる当方。

 

東映』言わずと知れた、任侠映画の老舗。『網走番外地』『仁義なき戦い』『極道の妻たち』どのシリーズも最早伝説。

 

「けれど。これはあくまでも『呉原東署第二課暴力団係の刑事』が主人公。ヤクザの仁義がどうこうという話では無いんよな」

 

昭和63年。広島。架空の都市、呉原東。

広島大学を卒業したエリート、日岡秀一(松坂桃李)。広島県警から配属され、第二課暴力団係:マル暴のベテラン問題刑事大上省吾(役所広司)とコンビを組まされる。

大上。数多の功績を挙げながらも。その手段を選ばない犯罪すれすれな捜査手腕と、余りにも多くの情報を握っている事から、ヤクザも警察も一目置かざるを得ない刑事。

地元を取り仕切る尾谷組とズブズブの関係に見せながら。対立している加古村組にも多少話が出来る。

両者の組はかつて衝突。一般市民を多数巻き添えにした大抗争を起こし。余多の血が流れた挙げ句、加古村組の上層部ヤクザが刺殺され。抗争の結果尾谷組組長が逮捕された。

それから14年。尾谷組は若頭一ノ瀬守孝が取り仕切り。対する加古村組はバックに付く五十子会に守られながら。

両者は一触即発の日々を送っていた。

 

ある日。とある消費者ローンに努める会社員の男が行方不明になった。

数か月後。会社員の妹が呉原東署に捜索届けを提出。その消費者ローン会社が加古村・五十子会の傘下であった事から、ヤクザの仕業だと。大上・日岡は捜査に向かうが。

 

「どっちがヤクザか分かったもんじゃない」という強引スタイルで。ヤクザだろうが何だろうが踏み込んでいく大上。証拠を得る為には暴力、恐喝、放火。何でもあり。

そして「広大」と呼ばれながら。大上に付いていって。「ちょっと!大上さん!」「こんなの駄目ですって」一々正論を言うけれど。結局大上に押し切られる。そうして次第に『大上スタイル』に仕上がっていく日岡。(実は空手の達人)

 

ヤクザ映画あるある。組のメンツ。組の中のヒエラルキー。その誰に顔を立てなければいけない云々。「オヤジ」「お前うちのシマで何さらしとるんじゃ」「どの面下げてうちのシマ歩いとるんや」「お前らの組はお終いじゃ」「全面戦争やぞ」「おどれ。警察ちゃうんか」「警察じゃけえ。なにしてもええんじゃ」「おもろいこと言うちょるな」「今のうちが居るんはガミさんのお蔭じゃあ」「ガミさんが本当に大切にしちゅうは何か分かるか?」「カタギの人間守る為やったら何でもするわ。」「ガミさんにとっちゃあ、ヤクザは捨て駒じゃあ。」あるあるほっとワードのみで構成、展開される世界。

 

つまりはいつでも戦争寸前だった二つの組(プラスもう一つ大きな闇組織)。そこに関わっていたカタギの人間の失踪が起きた事で警察が介入せざるを得なくなる。

それをきっかけに双方の幾つかのトリガーが引かれ。あわや大戦争寸前。しかし、そうなるとまた一般市民が巻き添えを食ってしまう。そこで一番穏便な方法での終結を目指した大上と、その破たん。そして大上の後継者となっていた日岡の取った行動とは~という流れ。

 

「まあ~綺麗何処を集めましたな」革張りの黒いソファーに沈みながら。足を組んで。肘乗せから伸びた腕を…腹の上で…指を組む当方。(目を閉じてご想像下さい)

 

「『渇き』の実績があるから。アウトロー寸前の汚い刑事大上を役所広司。そして徐々に仕上がっていく若手エリート刑事日岡松坂桃李。このキャスティングは間違いない。」

(先日の映画部長と当方のやりとり。「松坂桃李は面白い」「一つ頭突き抜けましたね。『彼女がその名を知らない鳥たち』のクズ、最高でした」「ああいう汚れが出来るって頼もしいよな」)

「尾谷組若頭一ノ瀬に江口洋介って。って言うか一ノ瀬の下の名前『守孝:モリタカ』って。絶対狙ってるよな!だって大上に何で若頭が下の名前で呼ばせてるよ!笑ってもうたやろ!」

その他。クラブママに真木よう子。そしてヤクザサイドに中村倫也竹野内豊石橋蓮司ピエール瀧等々。比較的『驚きもしない綺麗処』集結。

 

この手の作品にありがちな、『スクリーン一杯に広がる俳優の顔。キメ顔とキメセリフ』それが一々決まる。でもそれが少し物足りない。

 

「北野組、園組の面々を概ね省いて行って。(ピエール瀧石橋蓮司は別)そうなると綺麗処になっちゃうんやなあ~」全体的に絵面が綺麗すぎて。のれない当方。

 

國村隼。でんでん。渡辺哲。そして女性陣の活躍はもっと見たかった。そうなるとやはり黒沢あすか姐さん。

「それか。畑違いの起用狙いならばいい加減、中井貴一織田裕二池脇千鶴忽那汐里のヤクザ映画参入はどうだ。」脳内キャスト置き換え遊びが発動する当方。

 

一見アウトロー寸前の不良刑事。しかし彼が本当に守りたかったものとは。そして当初の目的と変わって。次第に『本当のマル暴刑事』に仕上がっていく若手刑事。

 

「そういう話やって事は良く分かった。そして良く出来ていた。そこそこバイオレンスな描写も頑張った。間違いなく及第点。なのに少し食い足りない」

 

「続編?」汚らしい恰好の松坂桃李が、アウトロー寸前の不良刑事をしっかり継承しながら呉原東を闊歩する姿?そんな続編?いらんいらん。(そしてあんな落とし前をつけた日岡が生きておられる訳が無い。そう思う当方)

 

「一体何を観たかったのかと言われたらあれやけれど…おそらくもっとむさ苦しい男男したしたものを欲していたのかと…分かるよねえ?東映さんよ」

 

完全に当方の嗜好の問題。「良いんやけれど…スマートで綺麗すぎる」という理不尽ないちゃもんを付けて。歯切れが悪く終えたいと思います。