ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ラブレス」

「ラブレス」観ました。
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ロシア。アンドレイ・ズビャギャンツェフ監督作品。

 

一流企業に努める夫と美容サロンを経営する妻。12歳の一人息子。

所謂富裕層。ハイソなマンションで暮らすその家族。一家離散寸前。

夫婦は互いに現在のパートナーに愛想を尽かし。そして互いに新しい恋人が居て。

離婚する事も決まっている。今家族で住んでいるマンションも売却の手続きが着実に進んでいる。

一刻も早く新しい生活に進みたい。こんな所に居たくない。最早一ミリも愛着など持てない生活は苛々する事ばかり。

そんな二人は一人息子を押し付け合い。

「母親が面倒を見るべきだ」「年頃なんだから父親が必要よ」「愛せない」扉を挟んで当の本人が居るにも関わらず大声で怒鳴り合い。声を殺して泣く息子。

 

ある日。唐突に息子が姿を消した。

 

学校へ行くと家を出たまま。帰ってこなかった息子。

夫婦はボランティアの助けも借りながら、息子を探し始める。

 

「寒い…あまりにもラブがレスしすぎて寒い…」

 

映画館で震える当方。ロシアというお国柄(?)雪のシーンも相まってまた寒い。

これがもう…黙り込んでしまう位「胸悪う~」という作品なんですよ。(褒めています)

 

ハイソな夫婦。周りの人間には人当りも悪くない。けれど。

「かつては愛し合っていたんでしょうが…」当方溜息。愛想を尽かした相手。そんな相手にならここまで酷い言葉を投げつけ合えるものなのか。

 

特に当方が嫌いだったのは妻。

男女関わらずヒステリックな人物に嫌悪感を覚える当方としては、何かとキレて大声出すあの妻…嫌過ぎる。

しかも「あの子が出来たからあんたと結婚する羽目になったのよ」「堕せば良かった」「あんな子愛せない」酷い。

そして「私は母親から逃げ出したかっただけよ。誰でも良かった」

息子が失踪した後。妻の実家に行くんですが。もう出てきた祖母が『年寄りの可愛さ』なんて微塵も持ち合わせていない人物。はっきり言ってクソババア。(汚い言葉)

あの母親と暮らす日々。確かに発狂しかねない苦行だと思いますが。ますが…「あんた。その『母親』そっくりやで」妻の姿に思わず突っ込んでしまった当方。

 

また。毎度言い返す訳では無いけれど。ムスっとした態度を取り続ける夫。

新しい恋人の間には新しい命が宿っていて。彼女は若くて自分を頼りにしてくれている。

今の妻との生活はもううんざり。いつだって不機嫌で当たり散らしてきて。俺は疲れているんだぞ。こんな日々、もうとっとと終わりたい。なのに。

息子を押し付けてこようとする妻。息子はお前がみるべきだろうが。俺には新しい家族が出来るんだぞ。

 

普通、子供の失踪って。そして夫婦で子供を探す話って。壊れた夫婦関係を見直したり…下手したら関係修復されたりという展開がデフォルトに思うじゃないですか。けれど。

全く。二人の失われたラブは全く修復などされず。ただただ冷え切った感情をぶつけ合うばかり。

 

「まあ。ある意味リアルだと言える」震えながら。そう思う当方。

 

新しい恋人に愛されたい。「貴方を知って初めて愛を知った」運命の人だと。いつだって会えば互いを求め合って。大切にされている。幸せ。これが自分が求めていた幸せ。

 

セックスレスな熟年夫婦。慣れ合いで惰性の日々。このまま枯れていくのかな~なんて思っていた時に新しい異性に出会って。久しぶりのときめき。

早くに出来ちゃった結婚をしてしまって現在に至っていたけれど、そうかまだ自分は恋愛に対して現役だったんだと。そうなると今までの使い古したパートナーは鬱陶しいし顔も見たくない。そして二人を縛り付けてた息子も邪魔でしかない。

 

新しい恋人となら上手くやっていける。

 

愛されたい愛されたい愛されたい。

 

「じゃあ何故息子を探すんだ」

 

終始身勝手で憎たらしい態度を取り続けた夫婦が。最終見せたあの姿。

状況的には一切救われていないのに何故かほっとした当方。

 

だって。12歳の息子と過ごした日々がずっとこういう感じでは無かった…はずだから。

かつては愛し合い。だから子供にも恵まれた。一緒に住んでいたマンションで。笑顔で食卓を囲んだ日だってあったはず。

 

ラブが。失われたように見えたラブが。少しは生きていた。そう見えて。

 

「今ここにある幸せがどうして見えなくなっていくのだろう」

 

新しい家族。そこで見せる二人の表情に。「また同じ事をするんやろうな」としか思えず。「学べよ!」もう数え切れない程の溜息で酸欠状態…の作品でした。