ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」

ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」観ました。
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第90回米アカデミー賞ゲイリー・オールドマン主演男優賞受賞。辻一弘メイクアップ賞受賞作品。

 

1940年5月。第二次世界大戦。イケイケのドイツナチス軍に、ヨーロッパが大打撃を受けていた時。

ベルセルク三国陥落。幾つもの国がナチスに主導権を奪われる中。

フランス・イギリス連合軍も追い詰められ。フランス陥落の窮地。所謂『ダンケルクの闘い』

そんな中『戦時内閣首相』として指名された、ウィンストン・チャーチル

平時では『イギリスの災難』と揶揄された嫌われ者。そんな彼が『最も偉大なリーダー』と呼ばれるに至ったのは。

彼が就任した1940年5月10日~4週間ほどの日々を描いた作品。

 

あらかじめ予防線を張らせて頂きますが。

当方は恥ずかしながら無学なもので。後付けで資料も読みましたが、如何せん付け焼刃な知識故。恥ずかしい事も書いてしまうと思います。

「お前…それ。違うぞ」と思ったとして。その言葉は胸にしまって…ぬるい感じで読んで頂けると幸いです。

 

この作品に於いて。先述した、役者や裏方スタッフの功績。確かに観ていて「凄いな。特殊メイクってここまできているのか。いつものゲイリー・オールドマンの面影全然ないやん」「そしてこの喋り方。振舞い。全然いつものゲイリー・オールドマンじゃない」とは思いましたが。

彼等が大きな舞台で仕事ぶりを評価されたのは素晴らしい。けれど。

この作品をそういう視点で観るのはナンセンス。何故なら彼らはあくまでも作品の世界観を演出するために各々の仕事を全うした。それだけだから。

「またまた~。何を偏屈な」と言われてしまいそうで。上手く言えませんが。

『イギリスの名宰相』それを最大限表現するために。彼らが各々の持ち場で最高のクオリティを発揮。技術だけじゃない。それを最大限提供した心意気。それが評価されたのだと。そう思った当方。

(お気付きでしょうが。当方は今現在酔っています。自分にではありませんよ。酒にです…いつもの事ですが)

 

ヨーロッパ大陸最大の窮地。数多の国がナチスの手に墜ち。仲間のフランスも陥落寸前。世界のジャイアンアメリカだって、全然助けてくれる気配なんかない。そんな誰も仲間が居ない。イギリス。泥船状態。

前政権は「ナチス舐めすぎ。危機管理能力なし」と叩き潰された。そんな荒れた国会で。「野党にも一応話が出来る」と。与党の中で渋々次期首相として指名されたチャーチル

「え~。チャーチルって…」当時の国王ジョージ6世もドン引き。けれど。

「若さは無いけれど」言葉の魔術師、チャーチル始動。

 

当方の近くにいる教育者が、常々言っていた言葉。「日本の戦後教育で成功したのは『戦争は悪だ』という認識の刷り込みだ」

 

この教育者は、聡明であり左右の偏った思想はありません。そして御多分に漏れず当方も「駄目 絶対」という戦争=悪の構図は叩き込まれている。

日常で生死をおびやかされる事態。そんな体験はこれまでの半生で終ぞありませんでしたし「殺される」も「殺してやる」も切羽詰った感情としてこれまで有した事は無い。

例えば竹やり持たされて「あいつを殺してこい」なんて指令、絶対受けたくないし不毛だとしか思えない。そこまで誰かを憎むような思想も、守らなければならないものも無い。命は地球より重い。そういう考え方が当方にはあります。ですが。

 

「どうして戦争は起きたのか」「当時の人たちは戦争をどう受け止めていたのか」

当方の中でずっとくすぶっていた疑問。

だって。きちんと社会科の日本歴史授業で教わった覚え、ありますか。一学期に縄文時代だの弥生時代だの貝塚から始まって。最終三学期文明開化から急に時間切れ。駆け足で過ぎ去った現代史の授業。説明不足。

 

たった二、三世代前の人々が。今と全く違う考え方をしていたとは思えない。誰にだってかけがえのない、平凡な日々があって。戦争とは目の前の日常が奪われる有事。

確かに普通の人にはそれをどうこうする力は無かったのかもしれない。けれど。

「どうやって戦争という日常に対して折り合いを付けていたのか」

「折り合いなんて付けてないよ!」そういうお怒りの声が上がりそうですが。ですが。

戦争があったという事実。それを後付けの「あれはいけない事でした」で塗り固めるのではなく。かさぶたはいで。ちゃんと見たい。実際どういう風に当時の人たちは思っていたのか。

 

戦後教育。最早戦後生まればかりの世代で埋め尽くされる中。ただただ「過ちは繰り返しませんから」ではなく。きちんと実際の当時の人たちの想いを知りたい。彼らがどうその時代を感じ。生きたのか。

そこから「戦争も致し方ないな」とは思わない…はず。何しろ我々には『戦争は悪だ』という認識が植え付けられているのだから。(あくまでも日本の話ですが)

 

文字通り窮地に立たされていたイギリス。実際にナチスとの和平交渉のカードもちらつかされていた。「あくまでもイギリスが主権を握れるのなら…」そう切り出したいけれど。ムッソリーニが相手?「お話しなさいよ~」とイギリスに声を掛けてくる国も。最早ナチスの傀儡。信用出来ない。

 

「和平か徹底抗戦か」究極の選択を強いられる中。国会の閣僚内では「和平で行こうぜ~」「どれだけの命が奪われると思ってるんだ」「俺なら話付けられるぜえ~」と戦わない姿勢。けれど。

 

冒頭の就任の挨拶から。「徹底抗戦する」というスタンスを突きつけたチャーチル

けれど。

 

圧倒的不利な現実。フランス・イギリス連合軍はドイツに追い詰められ。海岸線はほぼナチスが制圧。連合軍はダンケルクで息の根を止められるの待ち。それを食い止めようとした部隊は全滅。フランスは大打撃を認識しており「もう…ええやん…」と朽ちていこうとしている。

そんな中。あくまでも「フランスの一部がやられているけれど。俺らはまだまだやれるぜ!」と国民の士気を上げようとするチャーチル。内情を知るものからは「嘘を言うな」と怒られ。

 

確かに人命程尊いものはない。勝ち目の無い戦。そして「俺が上手く言うって」という和平交渉派。多勢に無勢。

 

「間違っているのかな」雨に打たれ。夜の空を見上げるチャーチル

 

けれど。その夜、チャーチルの元を訪れた国王。「民の声を聞け」まさかの国王からのアドバイス。そして。あの地下鉄のシーン。

 

あの展開は…どこまで史実に従ったのか疑ってしまいましたが。とはいえあそこからの怒涛の畳みかけに。圧倒された当方。

 

「イギリスがナチスの傀儡になってもいいのか」「バッキンガム宮殿やこの国会議事堂に鍵十字の旗がはためいてもいいのか」

「我々はファシズムには負けない」

「私が一瞬でも交渉や降伏を考え出した時は。私をこの席から引きずり下ろせ」

 

「そうか。戦争ってそういう事やな」ぽつりとつぶやいた当方。

 

各国。各々の状況も思想も国民性も違う。違った。けれど。何となくそう感じた当方。

 

戦争が始まれば、命は沢山奪われる。それは十分承知。けれど。それを引き換えにしても譲れない思想。信念。曲げられないプライド。

「戦争で負けるより。戦わずに自己の信念を曲げた方が取返しが付かない(言い回しうろ覚え)」

 

その考え方に賛否があるのは当然。後からは何とでも言える。結局、5年もの歳月を経てナチスに勝利したという結果ありきかもしれない。でもそれは。たらればでしかない。これが実際に起きた『ダンケルク・スピリット』。

 

「間違った事をしたくない」「黙って飲み込みたくない」「だから絶対に諦めない」

 

その正義のバロメーターは個人差があるけれど。例え負けたとして「俺は正しい事をした」それだけで。胸を張って生きられる。

 

「ただ。当方はイギリス人ではありませんので」

 

考え方は理解できる。けれど。果たして現代でこうした事が起きた時。どうすれは血を見ない解決が出来るのか。

『戦争=悪』の思想を持つ当方は、ああでもないこうでもないと考えては、溜息を付くばかりです。