映画部活動報告「メイド・イン・ホンコン/香港製造」
「メイド・イン・ホンコン/香港製造」観ました。
1997年公開の名作香港映画。中国返還20周年の去年「4Kレストア・デジタルリマスター版」にて蘇った。
「ああ。1997年て。こういう感じやった」
90年代後半。この作品の登場人物達と正に同じ年代であった当方。観ていて…お国は違えど、しみじみ押し寄せたノスタルジア感。
(この雰囲気でこの時代に『リバーズ・エッジ』が作られていたら…名作だったと思います。余談ですが)
1997年。香港。中学を中退し、借金取りを手伝う主人公チャウ。母親と二人暮らし。知的障害のある、街で何かといじめられる姿を見かけるロンを弟分とし、街の底辺をブイブイ言わせながら暮らしていた。
ある日。いつもの通り借金返済の催促の為に訪れた家で、チャウとロンはベリーショートの少女ペンと出会う。
惹かれ合うチャウとペン。けれどペンは重度の腎臓病を患っていて。
時を同じくして。飛び降り自殺をした女子高生の遺書をたまたま手にしてしまったロン。
家族を捨てた父親。親の造った借金。いじめ。嵌りこんでいく闇組織。限りある若さ。
非常に荒削りな作品。おかしな所も沢山あって。観ていて気恥ずかしくて…堪らない。
THE90年代野島伸司的ティーンエイジャー。
勢いで突っ走る主人公と、過剰な刹那。全世界中に流れた90年代という世紀末背景。
ましてや中国返還期というごたまぜの香港。気取られない、恰好を付けられない。街だって全然綺麗じゃない。こういう今にも崩れそうな、危うさが魅力な街だった。
当方はまだまだ子供だったし、映像でしか見られなかったけれど。この変換間際の香港の危うさと不衛生さと猥雑さ…ぞくぞくするほど魅力的に見えた。
主人公チャウ。父親は外に家庭を作り。母親と二人暮らし。THE貧乏で学業も振るわず中学を中退。街のゴロツキとして現在に至る…けれど。
知的障害があって。はっきり言ってどんくさいロン。そこいらの学生たちに絡まれ、いじめられていたロンを舎弟にし、結構きちんと面倒を見る律義な性格。
「何だかんだ底辺に身を置いているようで、(あくまでも個人的な)正義感に満ちた性格の持ち主。面倒見も良いし…所謂ええ奴」なんですね。
ビジュアルも…「ああ。こういう腰履きあったわ~」「このぴったぴたの古着シャツスタイリング。当方もしておりました」悶える当方。
…ところで。ビジュアル問題ついでに一気に語って良いですかね?
「ペン。厚底シューズ!懐かしい~」「ロンのロン毛とスタイリング。THE90年代男子」「主人公チャウのいしだ壱成感」(主人公チャウ役のサム・リー。『ピン★ポン』のチャイナやんか‼高まる当方)
いしだ壱成。何だか昨今おかしな事になっていますが。1997年の頃のいしだ壱成の勢い。当方は忘れませんよ。いしだ壱成、武田真治の二大カッコいい巨頭。そして奥菜恵の美少女感。ともさかりえのどこにでもでてくる感じ。広末涼子はもう少しだけ後。内田有紀はちょっと前。そんな時代。甘酸っぱい。
閑話休題。
自身にくすぶる正義感も持ち合わせながら。けれど俺は所詮街のゴロツキだと、チャラチャラ過ごす日々。そして。ある取り立て相手の家で見かけた少女ペン。
「前髪だけ染めるベリーショートって。池乃めだか師匠しかおらんがな」と突っ込んでしまう当方はさておいて。段々可愛く見えてくるペン。
「借金をチャラにするついでに私とセックスして」「処女なんだから」まさかのチャウの家に単身訪れるペン。戸惑うけれど。満更でも無くて。
また…ペンの家もチャウの家のも「同じ団地か?」と錯覚してしまう位似たような小汚い老朽化の進んだ団地。セックスするも何も、色んな生活音が溢れすぎて…出来る訳なんて無い。結局、作中に見せている範囲に置いては清らかで互いの想いは通じている関係で進んでいく…。最早汚れちまった当方には考えられない純愛。
また、「ペンは重度の腎臓病」という唐突な設定。腹膜透析をしているがコントロール不良で、腎臓移植しか根治出来る見込みはないと。
「いやいやいや~。流石に1990年代後半と言えども~」とツッコミそうになるのをぐっと押さえて。終末期へまっしぐらなペン。そして沈むチャウ。そこからの転落は止まらず。
どうしてこうなった?どうして誰もがこんなに刹那に散っていく。どんどん畳みかけていく、怒涛の大風呂敷折り畳み展開。ただただ溜息の当方。
この作品内最後に流れる毛沢東のスピーチ。
「世界は君たちのもの。そして私たちのもの。しかし最終的には君たちのものだ。」「君たち若者は気力旺盛で活気に満ち溢れている」「まるで朝8時の太陽の様だ。」「私たちの希望を君たちに託したい」
何という空虚な…。
この作品のもう一つのストーリー。飛び降り自殺した女子高生。彼女の残した遺書を片手に。彼女が宛てた相手に会いに行くチャウ。ペン。ロン。
正直「そこ、もうちょっと深めても…」と思わなくは無かったですけれど。
亡くなった彼女が眠るとされる、広大な墓地で。彼女を探す3人。印象的なシーン。
そして。最後。結局誰も守れなかったチャウが、約束とは違うけれど穏やかに生を終える。
「どうして若者が自由に満ち溢れていると決めつける」「どうして彼等に明るい未来しか無いと言い切れる」「時代に取り残され。乗り越えられずに散っていった。そういうものがいる」
「けれど。彼らは永久に美しい」
『メイド・イン・ホンコン/香港製造』秀逸なタイトル。
ノスタルジア系アジア映画に外れなし。これからも漏れなく観ていきたい所存です。