ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「サイモン&タダタカシ」

「サイモン&タダタカシ」観ました。
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高校生最後の夏休み。同級生。報われない、秘めた恋。

二人で向かった『好きな人の好きな人を探す旅』。

 

「去年の米アカデミー賞作品賞『ムーンライト』の主人公に教えてあげたい」

公開直前にそんな書き込みも見かけて。「あの…見た目とハートのギャップが凄まじかったあの人に?」引っかかった当方。

そして何より、映画館で見た予告編に「ああこれ。絶対好きなやつ」とピンときて。

 

男だらけの工業高校。そこに通う三年生、サイモンとタダタカシ(タダちゃん)。

どちらかと言うと大人しいサイモン。入学当初。ニキビ面と馬鹿ばっかりの工業高校に幻滅したサイモンの前に現れたタダちゃん。白馬に乗った王子様さながら。その姿はケンタウロス。一目ぼれ。けれど。

「タダちゃんが好きだ」そんな事言えないと想いを内に秘めながら。二人は行動を共にしてきた。そうして現在三年生。

卒業後は進学予定の受験生サイモンと、卒業後実家の工場を手伝う事になるタダちゃん。

「俺、このままだったら誰とも出会わずに童貞のまま死んでしまう!!」焦るタダちゃん。学年に5人居る女子生徒に片っ端から告白するけれど。遂に最後の一人にまで玉砕してしまった。

公園で。落ち込んだり騒いだりと忙しいタダちゃんに、寄り添うサイモン。しかし直後、公園の公衆トイレで『エロい!やれる女マイコ(言い回しうろ覚え)/電話番号』の落書きを見つけるタダちゃん。さっきまでの落ち込みはどこへやら。早速電話。繋がって。

有頂天。そして暫く経って。すっかり惚れ込んで「マイコさんに会いに行く」と言い出すタダちゃん。気が気じゃなくて勉強なんか手に付かないサイモン。

そして。遂に訪れたXデー。マイコさんに会いに行くべく長距離バスに乗り込もうとするタダちゃんの前に現れたサイモン。そして「タダちゃんの恋、見届けるから」と付いて行くサイモン。

高校最後の夏。二人の旅。一体どうなっていくのか。

 

せつない片想い。あなたは気づかない(小泉今日子/木枯らしに抱かれて/作詞作曲高見沢俊彦

何故か…この歌が頭の中をぐるぐる。だって余りにもサイモンの心中を想うと切なくて。

見た目だって『クラスで目立つグループには属していないけれど実はカッコいい』感じ。男だらけの工業高校(ところで、何でサイモンは工業高校を選択したんですか?)ではぱっとしなくても。共学の大学に行けば、間違いなく女子が黙っちゃいない。でも。そんなサイモンはタダちゃんが大好き。けれどそれは絶対に誰にも言えない。

(どういう好きなのか。10代の女子が一時疑似的に同性に恋をしてしまう、そういう類なのか。性愛を含むものなのか。サイモンの今後の恋愛対象にまで影響していくものなのか。それは全く追及されないし…ってしてしまったらこの作品のテイストは全く違ってしまいますので。そこは回避)

万が一タダちゃんにこの想いを知られてしまったら?そうすれば、今の関係は間違いなく破たんする。だから絶対に知られてはいけない。

 

またねえ。タダちゃんが…本当に愛すべき馬鹿なんですよ(全力で褒めています)。

 

実家の家内工場を継ぐ人生。それが俺の人生だと思っている。別に不満にも思わない。それよりも‼

高校生活最後の夏‼大学進学するサイモンはまだまだ出会いのチャンスがある。けれど‼俺には一体何処でそんなチャンスがある?どこで恋に出会う?

恋がしたい恋がしたい恋がしたい。と言うか正直やりたい。やりたくてやりたくて。

だから女子に片っ端から告白したのに。振られて。でも。そんな時に見つけた『マイコさん』すぐさま飛びついて。

「そういう人なんじゃないの」サイモンはマイコさんをビッチみたいに言うけれど。俺には分かる。マイコさんは素敵な人だって。

 

告白する時。「貴方を想って曲を作りました」ギター片手に。そんな純度の高い馬鹿なタダちゃんと、その横でハーモニカ伴奏させられる、純度の高い想い人サイモン。

二人を見て。切な過ぎて…胸が締められ過ぎて苦しくなってくる当方。

(またねえ。芸歴20年のベテラン須賀健太が天真爛漫なタダちゃんを達者に演じているのに対して、どこかぎこちなさもあった映画初出演+初主演という坂本一樹。彼のぎこちなさが逆にサイモンという役に合っていた。絶妙な配役。そしてバランス)

 

けれど。終始そういう胸キュンテイストでお話は進まない。

 

「何やねんこの漫画に切り替える感じ」「そして終盤のジオラマ!あれ確かに実写でやったら時間食う上に滑りそうやけれど…もうチープさが却って清々しいな!!」「先生の応援するってこういう事か⁈」

 

あ、あほや…全身の力が抜けんばかりのおふざけ演出満載。加えて出てくる脇の面々も癖のある者ばかり。

 

男子高校生二人のひと夏のロードムービー…そんな淡い話には落とし込まない。

長距離バスから二人が降り立った、超田舎の町。そんな超田舎あるあるの暴走族カップル。そしてマイコさんの正体。まさかの未確認飛行物体。

(当方が好きなのはタダちゃんのお父さんです)

 

「何それ」そう思うけれど。意外とそれらは最後にはしっかりお話を完成させるピースとなっている。

 

そして。始めはただ底抜けに明るいおバカに見えたタダちゃんが。だんだん「サイモンが好きやと思うのも分からんくは無いな」と思えてくる。

 

「一緒に居て楽しい」「相手が好きだ」という二人の気持ち。その意味合いの相違。

 

いつも一緒に居て。大切だと思っていた親友の本当の想い。

最後。マイコさんに告白するタダちゃんの姿に。そして一緒にハーモニカを吹くサイモンに。涙もろい当方は案の定泣いて。

 

「タダちゃんの出した答え。態度。ベストアンサー。」

 

親友の想いに戸惑うけれど。自分が受け入れられない事は正直に伝える。けれど。決して距離を取ったり突き放したりしない。

 

これが「『ムーンライト』のあの人に教えたいってやつやな」そう思う当方。(去年繋がりでは当方はどちらかと言えば『ハートストーン』を連想しました)

 

二人がこれからどうなって行くのか分からない。けれど。今はこれがベストアンサー。

 

「好きな人が、絶対に自分を好きになってくれなかったらどうする?」

そうやってもがいた日々を。大人になってからサイモンはどう見るのだろうかと。そう思うと甘酸っぱくて。

 

予告編からの第一印象に外れ無し。非常に好きなタイプの作品でした。