ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ピンカートンに会いにいく」

「ピンカートンに会いにいく」観ました。
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10代の女の子。どこにでも居そうな。クラスの気になる女の子。そんな5人を集めたアイドルユニット『ピンカートン』。

メジャーじゃない、危なっかしいジュニアアイドル。周りでも応援しているのは僕だけ。でも。

少しずつ人気が出てきて。段々世間に彼女達の存在が知られていく。もしかして…もうすぐ彼女達は僕だけのものでは無くなってしまう?皆が彼女達を知ってしまう?

そうすれば。彼女達は…。僕は。

 

そんな心配をよそに。あっさり仲間割れして解散。日の目を見ずに終わってしまったピンカートン。伝説は知る人のみぞ知る。所詮はマニアックジュニアアイドル。そして20年の月日が流れ。

 

すっかりアラフォーとなってしまった、元ピンカートンのリーダー、優子。

普段は派遣OLとして働きながら、細々と芸能活動を続けてきたけれど。所属事務所からも戦力外通告を受けて。すっかり崖っぷち。

そんな彼女に突如掛かってきた電話。それは某レコード会社の松本という男からの『ピンカートン再結成』の誘いだった。

 

「主人公優子が内田慈‼」「主演内田慈‼」

これは絶対に観に行かなければと。勢い勇んで。観に行きました。

 

部長と当方たった二人の映画部で。大好きで大好きで。絶対に彼女(彼)が出るのならば‼押さえなければいけない!!そんな大好きな俳優の一人。内田慈さん。

(安定安心な手練れ俳優。数多の作品でいつの間にか存在している…脇役俳優さん。綺麗だけれど、どこかはすっぱな印象もある。当方の、今は遠くで暮らしている職場同期の元ヤンキーにそっくり。頭の回転が速くて。賢くて。ちゃきちゃきして、ずけずけ言って。その実とても繊細な。そんな彼女を思い出す女優さん)

 

「後。こういう痛々しくももがくやつとか、そういうの、大好きなんで」案の定。

「ちくしょう!こういうの!あかんねん!」涙もろい当方は後半タオルを顔に押し当て続け。

 

主人公優子。元売れないアイドル。けれど。そもそもアイドルも真似事でしかなかった。ちゃんと世間に認知される所まで行かなかった。そんな恰好悪い過去は封印しながらもずるずると夢は忘れられず。けれど、芸能活動からは足を洗えなくて。じゃあなりふり構わずドサ周りをすれば良いのかと言うと、それはプライドが許さなくて。

「プロデユ―スの仕方が悪い」「事務所の怠慢」そうやって所属事務所に対していきがるけれど…どこかで分かってもいる。「もう私は賞味期限」。認めたくなくて。

 

どうしてこうなった?どうしたら上手くいった?私はもう終わっている?

 

そうやって焦るけれど。それはみっともなくて。そしてみっともない自分なんて受け止められなくて。何てことないと虚勢を張るけれど。どうしていいのか分からない。

 

そんな時。掛かってきた電話。「ピンカートン再結成のお誘い」。思わずすがりついてしまったけれど。そんな必死な風には見せたくなくて。「私は嫌々なんだけど。この人(松本)が言うもんだから」

 

かつての5人仲間の内、3人は直ぐに見つかった。けれど彼女達は主婦になり。すっかりお母さんで。もう自分とは違うステージに居る。そして。

 

「何言ってんの」「今更無理」「そもそもピンカートン解散はあんたのせいでしょうが」「どの口が言ってんの」「少なくとも葵を連れてきなさいよ」「5人で話し合わないと」誰も彼もが乗り気ではない。

 

葵。ピンカートンの中で一番人気のあった美少女。けれど。20年前、優子と葵の決定的な決裂がピンカートン解散にまで至ってしまった。そしてその後葵とは誰も連絡が取れていない。

 

葵捜索は難航を極め…。そして今更葵に会ったとして、何と言って良いのか分からない優子。一体20年前彼女達に何があったのか。

 

本当にねえ。優子。素直じゃないんですよ。20年前も、今も。

20年前。各々がどういう意識で芸能事務所に所属していたのか知りませんが。結局5人で束ねられて『アイドル』という形で売り出される事になった。でも。それは『売れないアイドル』からのスタート。

「バカみたい」「(他の売れているアイドルを見て)アイドルなんて皆死んじゃえば良いのに」「あんなブス」「下積みなんていらない」二人は直ぐに意気投合。ちょっとでも輝いている奴が居たら一緒に悪口を言って。

他の3人がどう思っているのかは分からない。けれど。優子と葵はそうやって他をけなすことで、自分を守ってきた。

「じゃあ、あの子達と私はどう違うの」「どうして私は選ばれないの」考えたくない。けれど。

葵はピンカートンの中で目立っていた。可愛いから。グループ内格差。なにそれ。

葵、もしかして私達から離れるの?向こう側に行ってしまうの?置いていくの?許せない。そんなの絶対許さない。

そうして起こった悲劇。

 

そのいきさつを知るのは優子と葵だけ。だから今回の『ピンカートン再結成』の話に乗らなければ、この話は蒸し返されない。葵が音信不通ならばそこで諦めればいい。他の3人だって完全な受け身スタンスであれこれ言っているだけで。実質松本と優子で葵を探している。葵に今更何て言うの?再結成?そんなの、やめればいい。

 

「でも。やめなかった」

 

「あのねえ。この歳ではそれ、謝罪っていうんですよ!!」40手前の優子は10代の自分自身にそんなことは出来るかと息巻いて。けれど。

本当はずっとこの機会を待っていたはずだと思った当方。

結局。葵との一件にケリを付けなければ。前にも後ろにも進めない。

 

やっと会えた葵。その時。やっぱり素直になれなくて。けれど…素直になれなかったのは葵だって同じ。似た者同士だから。

そんな二人の『加湿器』トーク。涙が出て。

 

この作品に於いて。最も重要であったのは、実は松本という人物であったと思った当方。

 

20年前の少年時代。ピンカートンの大ファンだった。ピンカートンが大好きで。あの日ピンカートンに会いにコンサート会場に行った。なのに。コンサートは開かれなかった。

メンバーの急病(と言う名の仲間割れ)で急きょコンサートは中止。そのままピンカートンは解散した。

 

時が流れ。芸能に携わる仕事に就いた彼が起こした行動。

『ピンカートンに会いにいく』。

 

実際のピンカートンのメンバーは思っていた感じでは無かったかもしれない。そりゃあ人間やし。時も経っている。彼女達は一筋縄に歳を取っていない。けれど。

 

 

僕は知っている。彼女達を。彼女達をずっと待っていた。

 

あの。最後のコンサートシーンで。痛々しいと感じる人も居たのかもしれない。けれど。

唇を強く噛みながら。しきりに涙を拭いた当方。

あの会場にに来てくれた人。人数こそ少なくても。皆「会いにきてくれた」人じゃないかと。

 

20年の時を経て。いきなりわだかまりは解けなくても。時が、柔らかい目で違った角度から物事を見せてくれる事もある。

笑えなかった事も。笑えて。愛おしく思える時もある。

一足飛びに分かり合えなくても。もう…時間は沢山ある。

 

小さな規模での公開ですが…非常に大好きな感じの作品。胸が一杯になりました。

 
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