映画部活動報告「グレイテスト・ショーマン」
「グレイテスト・ショーマン」観ました。
19世紀。アメリカ。伝説の興行師、P・T・バーナム。
実在した人を。ヒュー・ジャックマンが演じた、ミュージカル映画。
「ラ・ラ・ランドの音楽スタッフが集結!」予告でそう煽って。
ヒュー・ジャックマンと言えば『レ・ミゼラブル』でのジャン・バルジャンの記憶もまだ新しい。「歌って踊れる」事はお墨付き。
アメリカ。貧しい仕立て屋の息子だったバーナム少年。出入りしていたお屋敷の令嬢チャリティとの恋。身分違いに彼女の父親は激怒したけれど。彼らは長らく愛を育み。
成人し、きちんとした職に就いて。結婚。娘二人にも恵まれ。貧しくも幸せな日々。そんな時。会社からの唐突な解雇宣告。落ち込むけれど。
夜の自宅アパート。屋上で。回るランプの光に、瞳をキラキラさせる妻と幼い娘達。「そうだ。俺のしたいことはこれだ」
「皆を驚かせ。そして笑顔にさせる。嫌な事なんてその瞬間はすっかり忘れていて。思いっきり笑う。そういう顔を見たい。ワクワクする事をしたい」
詐欺まがいの手段を使って銀行から融資を受け。そうして誕生した『バーナム博物館』。初めは奇妙な置物なんかを陳列していたけれど。閑古鳥。
娘からの「生きているものの方が面白い」という発言を受け。
小人症の男。ひげもじゃの女性。巨人。結合双生児。デブ。全身入れ墨男。曲芸師。エトセトラエトセトラ。
自ら出向いてスカウト。そして募集して。片っ端から採用。過剰広告を打って。『バーナム博物館』はサーカスへと生まれ変わった。
初めは珍しいもの見たさ。けれど。そこで繰り広げられたエンターテイメントに観客は夢中。驚き。笑い。ドキドキして。拍手して。
予告で見た「シルクハット被ったヒュー・ジャックマンが歌い出して~からの‼」という圧巻のサーカスシーン。それが物語の幕開け。「早‼」仰け反る当方。
職場でも、あの人やたら映画観てるらしいなと思われている当方。時々「最近どんな映画観たの?」「面白いのやってる?」なんて挨拶のついでに聞かれる事もあって。
「『グレイテスト・ショーマン』観た?」「はい」
「あれどうやった?俺なあ~近年で一番感動したわ~」
「そうですか…何だかダイジェスト感が半端なかったと思いましたけれど…」
「そうかあ~めっちゃ分かりやすかったやん。ああいうんでええんや」
「…」
この文章を打っている今。正に。映画部部長から「『グレイスト・ショーマン』内容は薄いけれど、歌は良い。内容は薄いけれど」という活動報告を受け。思わず頷く当方。
「105分で纏める内容じゃないよ!!これ3時間位掛けてやらないと。」
主役のヒュー・ジャックマンのポテンシャルの高さ。生き生きと歌って踊って。
そして「流石ハリウッド俳優たちはレベルが違う」というエンターテイメント性の高さ。
出てくる誰もが歌って踊れて。「え?貴方歌える人だったの?」例えば昨年『マンチェスター・バイ・ザ・シー』で主人公の元妻を演じたミシェル・ウイリアムズ。
曲芸師を演じたセンデイア。彼女がスタントマン無しで自分で演じていたという驚き。
ひげもじゃの彼女も。オペラ歌手、ジェニー・リンドの彼女も。歌声の力強さよ。
作中何度も訪れるミュージカルシーン。そのクオリティにただただ押さえ付けられ。
「何かもう…凄いな」ぐったりして。けれど。
冷静な当方の声。「話が雑過ぎる」「ダイジェストか」
見も蓋も無い言い方をすれば。『見世物小屋』を作る事で一躍時の人となったバーナムとその仲間達。毎日がお祭り騒ぎ。
そんな彼らに水を差す、サーカス団に反対する一部の近隣住民。建物の前での小競り合いは日常茶飯事。
所詮フリークス集団の成り上がりだと揶揄される中で。箔をつけたくて劇作家フィリップ(ザック・エフロン)に声を掛けるバーナム。
あのバーでの。バーナムとフィリップのウイスキーダンス。華やかなサーカスのシーン達を抑えて当方が一番好きなシーン。
「あんなに動きがバシッと決まって。気持ちいいシーンでした」
「まあ。映画やし何回も撮ってええ風に繋げるんやろう。それにヒュー・ジャックマンて元体育教師やったんやろう?」
「体育教師が皆あんなに動けるって事は無いでしょうよ…」
職場で繰り広げられたおバカな会話。
フィリップの加入。そして彼のコネに依って、ビクトリア女王に謁見する事が出来たバーナムと仲間達。そこで欧州一と言われるオペラ歌手、ジェニー・リンドと出会い。
彼女の歌声にすっかり魅せられ。サーカスはそっちのけ。ジェニーと契約し、大々的なツアーに出かけるバーナム。取り残されたサーカスの面々。
ただただ話を追ってもあれですので。ここいらでふんわり着地させていきますが。
「どうしてサーカスに反対する人たちが居るのか」プラカードや火のついたたいまつを持ってまでして。暴力的にサーカス団に嫌悪を剥き出しにする人達。
当方の推測ですが。(上手く言える気がしませんけれど)所謂『見世物小屋』という…障害やマイノリティな部分を持つ人達がそれを寧ろ売りにするという、それでお金を取るという事への嫌悪なのかと。
「見たくない、考えたくない。だから引っ込んでいろ。お前は隠れていろ。私たちはそう言われてきた。そうやって生きていくんだと思っていた。でも。貴方はそのままで良いと言ってくれた。これは個性だと。何も恥ずかしくないんだと。」
バーナムに見出された。救われた。だから私たちはずっと貴方についていく。
そういう感じの事を確かに言っていましたが。これ、もっと丁寧にやらないと。
「お前たちは表に出てくるな!」なのか「見世物小屋の露悪さ」に怒りを覚えているのか。それとも単純に「うるさい!」なのか。(近所に一日中煩い音を出す場所があるって、地味に腹が立ちますからね)
障害やマイノリティな部分を持つ人達と、周りの人達の受け止め方。時代背景なんかも含め。これをしっかりやっていたら…。
「後、劇作家フィリップは一体何をしたんですか?」彼が加入された事で演目や演出はどう変わったんですか?高尚さは加味されたんですか?
「結局バーナムはただのお調子者って事ですか?」「ひげもじゃで毛深い彼女は、まめにカミソリで剃ったらいいんじゃないですか?」手を挙げだしたら止まらなくなる当方。あかんあかん。
本国アメリカで2017年公開。前年に『ラ・ラ・ランド』と『SING/シング』というミュージカル映画が出た中でこれは…分が悪いなあ~。思わず溜息。
見せたい所だけをしっかり押さえて。一切の無駄を無くした結果。薄っぺらくなってしまった。そぎ落としすぎた。けれど。
「ヒュー・ジャックマンって、変なB級コスプレアクション映画に出ていたイメージやったからさあ~。」
「え。それってまさかウルヴァリンの事ですか?」
あんなに生き生きとしたヒュー・ジャックマンを見せられたら。何だか「もういいです」と言ってしまう。体育会系な力業に終始押されて。ねじ伏せられる。そんな作品。
ところでこれ。サントラは実に良いです。(そりゃあ当然)