ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「デトロイト」

デトロイト」観ました。
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「1967年。アメリカミシガン州デトロイト。黒人たちの憤懣が爆発した『デトロイト暴動』の中、白人警官3人が起こした『アルジューズ・モーテル事件』」

デトロイト』というタイトルではあるけれど。主には『アルジューズ・モーテル事件』に焦点を合わせて。

ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティー』のキャスリン・ビグロー監督作品。

 

アメリカの都市デトロイト。かつては自動車産業が栄え。アメリカンドリームを夢見て集まった人たち。けれどその夢は次第に衰退。賃金は安いけれど職にはあぶれない。そう期待してついてきた黒人たち。しかし街全体が落ちぶれていく中。金を持っていた白人たちはすぐさま郊外に脱出。街に残るのは黒人の低取得者ばかりとなった。

黒人差別は悪。差別は悪。そういった世論も国内では整えられては来たけれど。如何せん貧しい街で。

治安は悪化。街には取り残された貧しい黒人があぶれ。そして街を取り仕切る警察官は95%が白人だった。

 

「いつ何が起きてもおかしくない」「時間の問題だった」

 

とある違法酒場の摘発。黒人が経営していた酒場に、デトロイト市警が強引な介入をしたことで市民の不満感情が爆発。暴動へと発展した。

 

それがまた。デモとかの理性的な内容ではなく。商店への放火。強奪。死傷者が溢れる惨事。事態は黒人VS白人警官たち(デトロイト市警)との戦いへと様相は変化してしまい。そして。

 

デトロイトにある『アルジャーズ・モーテル』。たまたま居合わせた若者たち。

 

初めて会った彼ら。その中の一人が『スターターピストル(陸上競技用ピストル)』を警官たちに向けてふざけて撃った事から起きた悲劇。最悪な夜。

 

50年前。実際に起きたその事件。

 

「いやあ…まあ…胸が悪かったですね…」この気持ちの落としどころが見つけられなくて。険しい表情をしてしまった当方。

 

この作品を一概に「人種差別って最悪やな!」で切ってしまってはいけない…最悪ではあるけれど「95%の白人警官」の意味はどこだ。果たしてその当時の黒人たちは完全な被害者なのか。街に対し破壊行為を起こした事態はどう集結させたのか。そして。

「アメリカって一体どういう国なんだ」

 

その答えは出ない。アメリカ国民ですら出せないアンサーを、当方が涼しい顔で出せる訳が無い。ただ。

 

「おそらく今でも人間の根底にある差別意識」その問題提起をした作品なのだと思いました。

 

2018年2月2日。NHKで『デトロイト暴動 真実を求めて』というドキュメントがありました。

各位ご意見はあると思いますが。当方はNHKのドキュメンタリーには一目置くスタンスでやっておりますので。そちらも見てから感想を書こうと思っていました。

(50年前の事件。それをリポートした記者の孫が、事件に関わった人たちを訪ねて行く内容でした。)

 

この映画作品について。どうしても『40分に渡る、白人警官3人に依る暴行シーン』そのインパクトが強くて。

 

白人警官の中で。一番若くて。けれどリーダー格であった警官。

「『なんちゃって家族』の‼あの誰からも愛された童貞が‼」
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『なんちゃって家族』は巨大海洋生物恐怖症の当方も思わずDVD購入に至った作品。あの愛すべきあいつが…。「『メイズランナー』でも嫌な奴をやってましたがね!」なんて思わず叫んでしまう、ウィル・ポールター。
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「あいつ…なんて事を…」物語の初め。タバコを吸っている姿だけで「けしからん!お前!」とわなわな震えてしまったおいちゃん当方が。話が進むにつれ本当に震えた後で。しみじみしてしまう。「あいつ…この役。しんどかったやろうな」

 

40分の長尺。ひたすら黒人少年と白人少女の数名を壁に手を付いて立たせ。かわるがわる恫喝。暴行。脅迫。

効果的な音楽が流れる訳でも無い。ただただ『みていられない不快な時間』その間を持たせる緊迫感。流石ビグロー監督と言うべきなのか。でも。その一手を担ったあいつ。

 

「その時あいつに流れた感情は何んやろう…?」何に対する怒り?憎しみ?『差別主義者』そう言ってあいつを切ってしまうのは容易いけれど。ただただ黒人が憎い?何故?

 

自分の任された街の荒廃。何故この街は治安が悪い。何故平和で穏やかな街にならない。いつまでも貧しくて。犯罪が跋扈して。それは一体誰のせい?

とは言え流石に「だから何をしても良い」という思考には当方も結び付きませんが。

 

リスクマネージメント業界(そんなものがあるのかは不明)で有名な『ハインリッヒの法則

「1件の重大な事故・災害の背後には、29件の軽微な事故・災害があり、その背景には300件の異常がある」

 

あの作品の中で。やはり圧倒的に悪者に落とされたあいつ。けれど。事件はあの日あの時たまたま起きた。ある意味『デトロイト暴動』と同じ。多くの背景から成り立つ事件。

 

『いつ起きてもおかしくなかった』

 

NHKのドキュメント。映画では実名を伏せた『あいつ』。現在75歳。

郊外でひっそり。孫に囲まれて暮らしている。

 

そして。暴動と事件から50年。改めてデトロイトの人たちが「どういう事件だったのか。そしてその真意とは」を語り合う姿。

 

時に映画は娯楽には収まらない。ずっしりとした課題を投げかけて。

 

当方もすっきりとした回答なんて出なくて。ぐるぐる回るばかり。けれど。

 

重たいんですけれどね…ビグロー監督作品、当方は嫌いでは無いです。