ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「消された女」

 

消された女」観ました。
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精神保健法第24条:保護者2人の同意と精神科専門医1人の診断があれば、患者本人の同意なしに『保護入院』という名の強制入院を実行できる】

 

韓国。精神保健法を悪用し、主に富裕層が。財産や個人の利益を目当てに身内を精神科病院に入院させている実態が明るみになって。そんな実際の事件をモチーフに作られた作品。

2016年に国内公開。世論を動かし。韓国の憲法裁で「精神疾患患者の強制入院は、本人の同意が無いと違憲だ」という判決が下った。そんな社会派エンターテイメント作品。

 

いつだってやりすぎ韓国映画。当方は、歯が浮く様なラブコメモノはこっぱずかっしくて観られないけれど。でも。バイオレンスやエロでは「ほんまか??これ」と。本気度が群を抜く韓国映画。それらは目が離せなくて。ちょいちょいチェックしてしまう。

そして。韓国の実在事件にまつわる社会派作品群。当方の記憶では『トガニ 幼き瞳の告発』が記憶に新しいのですが。

 

ドキュメンタリーテレビ番組のプロデューサー、ナムス。時代の寵児だともてはやされていたのもつかの間、番組のやらせ問題を指摘されてあっという間に干されてしまう。

時が経って。テレビ局のお情けで貰った小さな仕事。とある元精神科病院での火災事故を追跡していたナムスの元に得体の知れないメモ帳が届く。何の気なしにめくったその手記の内容に思わずのめりこんでいくナムス。その手記の持ち主は件の火災事故で唯一の生存者で、現在は殺人事件の容疑者として収監されているカン・スア。

元々は普通の若い女性。そんな彼女に一体何が起きたのか。

 

やりすぎ韓国映画案件。どこまでが実在の事件に沿っているのかが不明なので…何とも歯切れが悪くなってしまうのですが。

 

「精神科疾患患者とその家族。そうして法律の問題は…非常に繊細かつアンタッチャブルな問題やからなあ…」

 

冒頭の韓国【精神保健法】の強制入院について。

当方がこの作品を観た土曜日の昼下がり…は『韓流大好きおば様』が沢山一緒の回に居られたんですね。そして観終わった後、ぞろぞろと皆が映画館の出口に吐き出される中で。

「おっかないわあ~あんな法律。怖いわあ~」という声をマスク顔(冬場の風邪対策)で右から左に聞き流し。その脳内で真顔で延々語り続けた当方。

 

「日本の【精神保健福祉法29条(自傷他害の恐れのある精神障害者を強制入院させる:措置入院)】という法律はご存知か?自覚の無い精神疾患患者で、放っておけば自傷他害の恐れのある場合は都道府県知事の権限と責任で精神科に入院させることができるという法律を」

 

精神科疾患のある患者が精神科病院に受診、入院に至るには様々な形態がある。勿論能動的に動くケースだって沢山あるのだろうけれど。(『任意入院』『医療保護入院』『応急入院』『措置入院』『緊急措置入院』入院形態は余りにも多岐に渡る上に長文化、そしてまともに説明する力を当方は持ちませんので。それ以上は語りませんが)

 

例えば。追い詰められ、いつか目を離せば自殺してしまいそうな心配な家族を。昼下がりののどかな道で、突然見知らぬ歩行者にナイフを振りかざす輩を。

そういう、本人は全く自覚のない『危険人物/患者』を。精神科に強制的に入院させる法律が日本にはある。

これは決して悪法では無い。本来は誰よりも本人を守る法律で。

 

冒頭の韓国の【精神保健法第24条】だって。恐らく考え方は同じ。けれど。

 

「信頼と何とか」で構成されるはずの医療が。心無い者に悪用されると…もうどうしようもない。

この作品で言うと、社会的地位のある者と医療者(精神科専門医)がグルになってとある指定した人物を「精神疾患を有する患者。しかも早急に保護が必要」と隔離と言う名で精神科病院に拉致してしまっては。確かに手出しは出来ない。

 

ある日突然。何者かに依って拉致。そして気が付いたら精神科病院

「元々の事件がよく分からないけれど。よくそこから帰ってこれたものよ」そう思う当方。ですが。

 

「やりすぎなんですよ…」苦々しくマスクの下で顔を歪める当方。

 

この作品の狙いが『社会派エンターテイメント』であったのなら。確かに『エンターテイメント』としては盛りに盛っていた。

ある日。昼間の街中で突然男達に車に乗せられ、意識を消失。そして目が覚めたらそこは…お化け屋敷。まさにそこは『お化け屋敷‼!』

 

当方がこの作品に対して思う事。「精神科病院の描写がひどすぎる!!」

 

勧善懲悪。悪い奴はとことん悪。これまでもそういった韓国映画の傾向を何となく感じてはいましたが…そしてこの作品に於いては『医療モラル。倫理の欠落』がテーマの一つではあるんでしょうけれども。それでもあの精神科病院はあんまりにも酷すぎる。

(だって。一見近代的な普通の精神科病院で。まともな医療の提供とまともなスタッフ…の中に何故か放り込まれた方が混乱をきたしませんか?「もしかしたら自分は…?」ってなる様に思いますけれど)

 

「本来病める人を救う法律を悪用しやがって‼」今作公開に依って韓国の世論を動かしたと。そういう触れ込みでしたが。…あくまでもたらればですがもし日本で同じ流れが起きたとしたら…それよりも精神科学会が総立ちでクレームつけてきそうですよ。「精神科のイメージが悪すぎる!!」「精神科はお化け屋敷か‼」そりゃあ怒るわ。

 

個人病院。とは言え。最早コメディーの域の医院長。そして患者たち。なんだこの茶番は。

 

「いよいよ『ゲット・アウト』みたいな事態になってきました!!」終盤。溜息を付き過ぎて酸欠状態の当方。(後あれな!いくら何でも医院長だって医療者の端くれならあの処置に『素手』って事は無いで!己の身を守る為にな‼あんなの素手でやるのは『冷たい熱帯魚』の夫婦の風呂場作業レベルやで‼)

 

サスペンスとしても「⁈」という出来栄え。これ、何とでもこじつけられるやないの。そして韓国って要人であっても自宅付近に防犯カメラとか無いの。後、戸籍とかどうなってるの。

寧ろ最後すんなり終わっておけば…そしてこれ主要な人物が一人見事に「消されて」しまっているやないの。(唐突に『やないの星人』化する当方)おかしいやないの。

 

何だかなあ~。期待しすぎていたばっかりに『どうしてもやりすぎてしまう韓国映画の性』があだになってしまった印象。

 

「そして。【強制入院に本人の同意が必要】という改訂は、まともに取り合えば救える者も救えなくなるし。そしてこういう案件の同意書なんてどうにでもなるし」

 

この作品の元となった事件と、公開された後改訂された法律。一体今韓国の精神科患者強制入院の実態はどうなったのか。それが気になる当方です。