ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ブリムストーン」

「ブリムストーン」観ました。
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開拓時代。いわゆる西部劇の世界。小さな村で。

夫と息子、娘と慎ましく暮らす主人公のリズ。とある理由で口がきけず。手話でコミュニケーションをとりながら。村では貴重な助産師として重宝がられていた。

ある日。村に新しくやって来た牧師。その姿を見て激しく動揺するリズ。

加えて、次々起きる不幸。「兎に角牧師から逃げなければ」

リズとその家族をどこまでも追い詰めてくる牧師。

一体リズと牧師に何があったのか。

 

いやあ~。年明け早々の『胸が悪い映画作品』でした。(褒めています)

 

映画が始まってすぐ。「おっとこれ。『ウィッチ』案件か?」なんて構えてしまった当方。不幸な出来事をきっかけに、閉鎖的な村で広がる不協和音。悪いのはどいつだ。誰のせいでこんな事になっている?てっきり関わった助産師リズを「魔女だ!」と狩っていく話かと。

…まあ。そういうのじゃ無かったですね。

 

四部構成。現在のリズ一家に訪れた災い。リズの過去。そもそものきっかけ。そして結末。起承転結で言うと『転、承、起、結』の順に時系列を若干シャッフルして。一体『牧師』とは何者なのか。そしてそもそも主人公『リズ』とはどういった人物なのか。そしてその因縁の関係性を…兎に角嫌~な感じで描いていく。

 

ガイ・ピアース演じる牧師の最悪さよ」嫌悪感で震える当方。(褒めています)

 

信仰心から来る精神の歪みだとか、聖職者の性だとか…そんなの関係無い。ただただ暴力で相手をねじ伏せるしかないクズ。利己的な思考しかなく、相手に感情があるなどと思わない。そして堂々とした変態。

 

「こういう奴。大っ嫌い!!」

(注:以降、やんわりネタバレしていますのでご注意ください)

 

暴力とSMの違い。あくまでも私見ですが。

『互いにレギュレーションを理解していて。その上で行われる、あくまでもプレイ。どちらも楽しい』がSM行為だとすると。暴力というものは全く違う。天と地ほど違う。

 

「だってこれって。DV加害者と被害者の図やん」

 

一家の主からの、家族への暴力。今回は性質が悪い事に「宗教」に絡めてくるけれど。やっている事は完全にDV。どうして?どうしてそうやって暴力でねじ伏せた相手が己を受け入れてくれると思うのか。

 

「あの人は私を殴るけれど。いい人なの。私を愛してくれているの。悪いのは私なの」

 

そんな思考の持ち主も居るんでしょうが…大抵は相手を憎み、嫌悪していくだけだろうと思う当方。何かしらの事情や、精神的な束縛に依って実際には逃げだせなくとも、心は絶対に離れていくはずだと。

 

主人公リズを演じた、エミリアジョーンズ(リズの少女時代)。ダコタ・ファニング。西部劇の時代。荒々しい男達がドンパチして。女をどこか下に見ていた時代に。気高くありたいと必死で生きた姿が印象的でした。(とは言え。どこか図太い面もありました。)

 

少女時代の。チンピラヒーローとの淡い恋。売春宿時代の親友。そんな『おかしな環境の中で見つけた、まともで大切な人』…切ない。

 

ただ全体を振り返ると…「得意とするのは変態映画部門です」と公言する映画部員当方としては正直…「もっとやれたんじゃないの~」と不完全燃焼感もありました。

 

ダコタ・ファニングガイ・ピアースで。口がきけない主人公と鋼の変態牧師の設定で。148分もあったら…もっときっちり田舎の閉鎖環境と宗教とエロを盛り込んでドロドロでかつ、込み入った話に出来たんじゃないの?」「後、あの拘束具での生活。見たい」

まあ。当方の考える様な世界観にしたら劇場公開が出来ない感じになってしまいかねず。この匙加減で正解なんでしょうが。

 

あの牧師だって『何故彼がこうなったのか』みたいな背景を入れたら蛇足になるのは必須。あくまでもあいつは悪者。一点の曇りもない。だからこそ主人公リズが際立つ。

 

ああ。そういう顛末で話を終えるのか…。でも。ある意味すっきりと潔い。

 

万人にお薦め出来るタイプの話ではありませんし、「胸悪う!」となる事必須。

観た後も、もやもやと後を引く作品ですが…当方は嫌いではありませんでした。


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