ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「勝手にふるえてろ」

勝手にふるえてろ」観ました。


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綿矢りさの同名小説の映画化。大九明子監督作品。

 

「俺たちの松岡茉優が‼満を持しての主演作!!」周囲の鼻息も荒く。

とは言え特に当方は彼女押しではありませんが。(未だに『桐島、部活やめるってよ』のあのいけ好かない女子の印象が拭えない当方…根に持ってます)

 

な~んか面白そうやなあ~と。特に予備知識無く観に行ってきました。

 

24歳のOLヨシカ。中学時代から10年に渡って同級生の『イチ』に片思い。とは言え卒業以来音信不通…という事は最早リアルな相手では無くて。絶賛脳内恋愛中。

そんなヨシカの前に現れた『二』。同じ会社の営業に勤める二から唐突に告白されるヨシカ。舞い上がるけれど、どうしてもイチの事も忘れられなくて…。

 

「おいおいこういうの…観た覚えがあるぞ…って『スウィート17モンスター』やろ!」

 

watanabeseijin.hatenablog.com

 「げに恐ろしき『自意識の壁』よ。」

 

まあ、端的に言うと『こじらせ系女子』の話。現実とは距離を置いて。サブカルにどっぷり浸かって。俗っぽい周囲を見下して。周りには私なんか理解できるはずがないといきがって。その実とても臆病で。

 

自分は劣っているんじゃないかと。馬鹿にされるんじゃないかと。そう思うと怖くて。どんどん周りとの間に壁を作っていく。そうしていつしか『自意識の壁』の中に一人残される。己で積み重ねた壁の高さは、最早自分からも他人からも視界を奪って…。

 

「そうやって孤独の世界に閉じ込められる前に現れる。彼女達を見つけ出してくれる王子様の存在」

 

「現実にはそんな奴いねえよ!!」急に荒ぶった声を上げるチンピラ当方ですが…まあ。お話ですから。(「そんなの!松岡茉優のビジュアルスペック故だ!!」背後でまだまだ騒ぐチンピラ当方)

 

14歳から24歳まで。(流石にそこまで恋を脳内で温められるのかは疑問ですが)最早周囲には実在するのかすらも疑われていたであろう、イチ。

彼への想いを噛みしめて生きていたヨシカ。そうやって自身が傷付かない世界で夢を見ていたのに。

存在は知っていたけれど。何とも思っていなかった営業の同期、二。

暑苦しいし強引な二からの唐突な告白。誰かから好意を寄せられた!初めて告白された‼その時は舞い上がったけれど…気持ちは全然追いつかない。だって…今でもヨシカの心にはイチがいるから。

 

「ああもう!もどかしい!」

 

自意識の壁に囚われ続けた当方としては…身に覚えがありすぎるけれど。

そしてこの壁が想像以上に手ごわい事も、壊すのが長期戦だという事も身をもって知っているけれど。どうしても他人事となるとヤキモキしてしまう。

 

「だって。だって誰かに好かれるって。奇跡なんやで‼」

 

勿論、誰かを好きだと。愛していると思う事は素敵な事で。でも、今の自分を好きだと言ってくれる人の存在って…肯定してくれる人って。望んだ時に都合よく現れるモノじゃないんやから。

 

イチが好き。とは言え、やっぱり好いてくれる二も気になる。

とある事件(本当にあれはやったらあかん事故です‼)をきっかけに。「イチにきちんとぶつかろう!!」と一念発起。

確かに頑張ったな~という流れからの。あの夜。

 

ヨシカと街の人たちとの関わり。まあ、そういう事だろうなあ~とは思っていましたが。かと言って「そんなに泣かんでも」とそっと背中に手をやりたくなった当方。

 

誰しもが自分の世界を持っていて。

それと現実世界との折り合いを付けて生きている。

100%思っている事を晒す必要なんて無いし、会う人全てと語り合う事なんて出来ない。

不特定多数の人に、何て事無い事を発信する事も自由だし、身近な誰かにだけそっと思いを伝えたって良い。

そのウエイトや匙加減はあくまでも自分が決めればいい事で。

まずは自分が苦しくないように。そして人を不必要に傷付けないように。

 

その他者とのコミュニケーションをどう取って良いのか分からなくて。思っている事を

何処まで晒して良いのか。引かれるんじゃないかと。だから脳内で都合の良い世界を作り上げた。

 

「そんなあんたを好きやって言ってくれるんやから。大切にしなさいよ」

おばちゃん当方の大声。あんたこれ逃したらバチが当たるで。

 

当方はねえ…年老いた当方にはねえ。二(渡辺大知)が可愛くて可愛くて仕方ありませんでしたよ。(何故かちょっと涙声)

 

「なんであんたこんなめんどくさい子が好きなん。」

おばちゃん当方はズイズイ突っ込みますが。だからこそ、最終キュン死。壮絶な爆死。

(あの最終までを持って行く下り…いくらなんでも急転直下な思考でしたけれど。あれ、本当に辞めるしかないし。当方なら恥ずかしくて復職出来ませんな)

 

イチの美しい思い出は。箱にしまって封をして胸にしまったらよろし。目の前の現実を見なよ‼どれほど輝いているか‼(しかもヨシカ24歳!若い!)

 

「ヨシカ目を覚ませ!!」ずっとそう言い続けた117分。そして。

 

「そしてまた一人、仲間が居なくなった」ふっと自意識の壁の中で空を見上げる当方。

(まあ…「こじらせ女子を救うのは、いつも恋する王子様だけかね?」と思ったりもしますが)

 

ところで。大九明子監督って『でーれーガールズ』の方なんですね!

そう知って俄然士気が上がった当方。(『でーれーガールズ』は岡山が舞台の名作。何気なく観た映画館でタオルを顔に押し当てて泣いて。そしてパンフレットを作っていない事に憤った。そんな作品)

 

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 「女子のみっともない所、大人になったら恥ずかしくなるような…でもその時は精一杯だった。そんな女子作品を撮れる監督」だと当方は思っています。

 

主役を始めメインの役者達は勿論。周りを固めるベテラン曲者俳優達の演技も。テンポの良い展開も。非常に観やすくて楽しい作品で。

 

2017年映画部活動は納めさせて頂きたいと思います。