映画部活動報告「探偵はBARにいる 3」
「探偵はBARにいる 3」観ました。
舞台は北海道。探偵(大泉洋)と、その相棒兼用心棒高田(松田龍平)。
どこかだらしなくて。ススキノは庭。水商売の者は皆顔なじみ。人情味があって、時代遅れ。そんな愛すべき探偵と、飄々としていながらいざという時には頼りになる。そんな高田とのお馴染みバディシリーズ。
今回は、高田の後輩の「音信不通になってしまった、女子大生の彼女を探して欲しい」という依頼を皮切りに。
「こんなのすぐ終わる簡単な仕事だ」とたかをくくっていたけれど。
彼女がモデルクラブという名の高給デリヘルでバイトしていた事。そこからバックに付く危ない元締めにまでたどり着いてしまって…。
何だかんだ言って、前2作も映画館で観たのですが。いやあもうこのシリーズの安定感。東映だけに『相棒シリーズ』みたいな一定数の顧客が離れない雰囲気。
「結構年配の人が多いんやな…」実は公開翌日には観に行っていたのですが。大き目のスクリーンでお客さんが一杯。でも若者というよりは中高年+年配の客層が目立った感じがしました。
「そりゃあそうだ。だってこれ、全身の力を抜いて観れる作品やもん」(あくまで褒めています)
特に凝った仕掛けや謎解きがある訳でない。エロも気まずくなるような程ではない。
主人公はとぼけた愛嬌のある探偵。そこに厄介な依頼を持ち込む、どこか影のある美女。大層に騒ぎながら、愉快な仲間達と事件の真相に近づいていくけれど…。哀愁を帯びて。苦い気持ちを噛みしめながら迎えるエンディング…。
全くこのセオリーに則った流れで。今回も進んでいました。
今回。前2作から監督が交代したという事でしたが。主役二人のキャラクターも関係性も大きな変更はなく。と言うか、やっぱり大泉洋という役者の力量なんですかね。あの『探偵』というキャラクターにイキイキと血を通わせる、手練れの成せる技。
(それでも1作目と比べたら大分三枚目キャラクターになっているな~とは思いますが)
大根役者スレスレの松田龍平も高田というキャラクターにしっかり嵌っている。
そして。オネエ役の篠井英介。ゲイの新聞記者田口トモロヲ。過剰に迫ってくる喫茶店のメイド安藤玉枝。知り合いのヤクザ松重豊。
これらお馴染みのメンバーも心地よい。安心して全身の力を抜くことが出来る。
今回。高田の後輩の失踪した彼女、麗子(前田敦子)を探すというスタートから。
麗子がバイトしていたモデル事務所にたどり着いて。下手に突っついたばかりに痛い目にあわされる、探偵と高田。でもそれをきっかけに知り合った、モデル事務所の女社長マリ。
「あれ…知ってる…」かつてススキノの風俗街で。どん底にまで落ちていたマリを記憶していた探偵。
そのモデル事務所のバックに付く札幌経済界のホープ北條(リリー・フランキー)。絶対に関わりたくないのに。飛び込んで行く羽目になっていく探偵と高田。
一つの小さな事件が。次第に複合的な案件と絡み合っていく。そんな流れ。
すっかりカメレオン役者のリリーフランキーの真骨頂、ヤクザ!というのはもう置いておいて。
「北川景子が意外と良かった」
失礼ながら…北川景子には何故か危なっかしい演技をする印象があったんですが。
今回のマリという役は非常に合っていたと思いました。
昔辛い目に遭った。もう生きている意味なんて無い。そんな時探偵に言われた「命を燃やすものはあるか?」
時は流れ。ヤクザの元でデリヘルあっせん業を営む自分。けれど。見つけた。「命を燃やせるもの」
薄幸美人。どこか影があって。線も細くて儚げ。非常に雰囲気が合っている…合っている。けれど!!
「何それ」
マリの背景。それには全然納得がいかなかった当方。それを出したらアカン!日本映画で切り札として病気と記憶障害とタイムスリップと動物は出したらアカン!
「一気に動機が安っぽくなるんよな~」
それに輪を掛けて眉をしかめてしまった、「命を燃やせるもの」。
「それは。普通そんな『モノ』を有難く受け取れる訳ないで。」冷たい当方。だって!あんな不気味な『モノ』を渡されたら…当方なら即警察に通報しますよ。
そのマリの行動に説得力を持たせるなら…もっと序盤からマリのエピソードを散りばめないと。ちょっと取って付けた感が否めない。
「まあまあ。そんなやいやい言わんと。皆楽しく観てるやないの」
映画館で。食い入るようにスクリーンの世界に引き込まれて。あちこちから聞こえた鼻水をすする音に、己を抑え込む当方。力むなと。
結局またほろりと苦い気持ちにさせて。でもしっかりと最後は笑わせる。そんなお見事な終わり方。
「THE 邦画」
なのに。エンドロールはちゃんと最後まで観ないと後悔する、というMARVELの手法をしっかり取り入れて。…心憎いばかりです。