映画部活動報告「セブン・シスターズ」
「セブン・シスターズ」観ました。
2073年。紆余曲折あってヨーロッパ連合となったそこで。
深刻な人口爆発と飢饉に依る食料難の中。打開するべく取られた遺伝子組み換え食品による食糧難対策。
一旦は多くの民を救ったけれど。結果生じた『多胎児出生多発問題』。
どうにもならないと、政府の打ち出した『一人っ子政策』。
一つの家庭に子供は第一子のみ。不正の無いよう徹底的に管理される社会。第一子以降の子供たちは『児童分配局』に依って連れて行かれ。「現在の有事が過ぎ去った後には解凍される」との文言の元、冷凍保存される。
そんなご時世に。とある家庭に一卵性7生児が誕生する。父親が不明のまま子供を産み、そしてその生を終えた母親。母親の父親(お爺ちゃん)は、医師に口をつぐんで貰い、子供らを自宅に引き取る。7つ子の女児。一週間の曜日の名前を付けられた彼女達はすくすくと成長。そして。
『カレン・セットマン』という一人の人格を。7つ子がその名の曜日の日に。日替わりで演じる事で、社会と繋がる事にしたお爺ちゃん。
~それから30年。銀行員として働いていた『カレン・セットマン』の波乱の月曜日が開ける。
「オフィシャルサイトのネタバレ全開さよ!」余談ですが。先程。細かい調べものの為、初めてあけたオフィシャルサイト。その奔放さにちょっと驚いてしまった当方。
(まあ、ある程度ネタバレしないと何も説明出来ない話ではありますが)
完全なる管理社会の中。7つ子も30歳。もうお爺ちゃんも亡き世界。
とは言え。互いに情報共有出来るデヴァイスを持って。毎夜行われる『本日の出来事報告会』
『銀行員カレン・セットマン』バリバリのキャリアウーマン。そういう基本キャラをベースに。カレンを伸ばせる頭脳戦術の持ち主も居れば、お色気要因も居る。
7人の個性は真っ向勝負で違う。とは言え個性を出したが最後、7人皆で児童分配局に捕まってしまう。各々己を殺して一つの人物になりきる、そんな日々。
そんな中。『一世一代のプレゼン』大仕事を任された月曜日。朝から吐いて。体調不良で仕事に向かった月曜が。帰宅時間になっても帰ってこない。姉妹の間に流れる、不穏な雰囲気。そして。
翌日火曜日。勇気を出して出社した火曜を襲った事態。遂に児童分配局と対峙する事になった姉妹たち。
果たして彼女達の運命は?!
~だらだら書いてしまいましたが。おおよそこういう流れの事をやっていました。
「中国って昔『一人っ子政策』ってやってたやん。あれって…第一子以降は税金上げるとかそういう事?」
「おんまり詳しくないけれど。そうやろうな」
「そうやんな…一人目以降は死ね!とかじゃないよな…」
「当たり前やろう!税金だって十分やけれど。そんな事したら世界的な倫理に引っかかるよ!」
当方と身近な社会科教師との会話。そうですよね。一人っ子政策ったって、自然な摂理に深く介入する事は不可能。でもそれをやっている映画世界の話で。
「それは一旦置いといて。あの7つ子の中で誰が一番好き?」
今年はこういう、役者の力量が試される作品がちょくちょく出るんですかね?『スプリット』のジェームズ・マカヴォイといい。7つ子の主人公を演じたノオミ・ラパラ。その演じ分けの見事さも話題な作品。
(以降日本人に分かりやすい表記にさせて頂きます)
聡明で。いつだって私はお姉さんだと自負してきた月曜。ヒッピーでハッピーな火曜。肉体改造に躍起な水曜。破天荒で規則を破ってきた木曜。頭脳派で内気な金曜。お色気満載のビッチな土曜。皆の母親的存在。包み込む日曜。
「あの幼少期の少女の可愛さ。そばかす女子にこんなに惹かれる当方という再発見」
この7つ子の幼少期を演じた少女がねえ。ピカイチに可愛いんですよ。これがまた。あの顔の女の子が7人わちゃわちゃしている姿も眼福でしたが。
「大人になった7つ子ねえ。…当方が好きなのは金曜と土曜かな」
ぶっちゃけますが。正直「7人で力を合わせて乗り越えよう!」という都合の良い展開にはならなくて。…結構な犬死をしてしまうんですね。そんな中で。主導権を握って話を進めていくのは『木曜』。幼い頃から反抗的であった彼女。
勿論当方も嫌いではないキャラクター。彼女が矢面に立つのも成程。そして、悲しいかな倒れていく姉妹たちにもそれなりに花は持たせて。
「にしても。金曜の未知数とつつましやかさ。そして土曜のビッチな振りして純情という抱きしめたくなる可愛さ」堪らん。当方的に堪らん。…ですが(小声)。
ノオミ・ラパラがいかに優れた役者であると言っても…それは認めますが…何だか厳しいキャラクターがあったのも確かで。
『肌感』スキンフェチ(気持ち悪い言い方)の当方にしたら。共通キャラクターである『カレン・セットマン』の厚化粧感。加えて口紅が赤すぎるが故に気持ち悪く、老けすぎ。そして体型的にも全くセクシーさを感じなかった(効果には個人差があります)。
だから。
演技では住み分けがきちんとなされていて。それなりに感情移入も出来るのに。何だか最終的に踏み込めない、当方の理由。「ヘアメイクが何だか変』。(大きなお世話ですね)
お話し自体は納得出来る、きちんとした作り。
そもそも人口をコントロールするという事の理不尽さ。そこに迫害された民の怒り。立ち向かう7つ子。けれど…どうしてこういう事になったのか。
…まあ。結構途中で分かっちゃうんですけれどね。
7人で一緒に産まれて。とは言え全く違う人格を持ち。
一人の女性像をシェアする事でしか生きられなかった。そういう年月だった。疑問も怒りも。限界も感じてはいたけれど。どうする事も出来なかった。そんな時。打ち破られた日常。
本当は痛みを伴いたくなかった。けれど。
知ってしまった、誰かを愛するという事。自分とその家族以外に向けられた愛。それを守りたい。優先順位が出来てしまった時…。悲しい。天秤に掛けるしかなくなって、そういう手段しか取れなくなった者の姿が。
「かと言って。この作品世界に於ける一人っ子政策だって、愚とは言い切れないんだぜ…」苦々しく呟く当方。
お話しの設定。ノオミ・ラパラの7つ子の演じ分け。気を囚われて観ていたら。思いがけず「う~ん」となってしまう。しっかりウィットに飛んだ着地。
結構上手く出来た作品なんですがねえ…如何せん、公開している映画館が少なすぎて。
今現在。話題作目白押しの中で。下手したら埋もれてそっと終わるんじゃないかと、勝手に心配している当方です。