映画部活動報告「パーフェクト・レボリューション」
「パーフェクト・レボリューション」観ました。
「あなたと私みたいなのが幸せになれたら。それって凄い事じゃない?」
「それを世界に証明するの!!」
脳性麻痺にて重度の運動障害があり、車椅子生活の主人公『クマ』をリリー・フランキーが。人格障害(パーソナリティ障害)を持つ『ミツ』を清野菜名が演じた。
障害者の性の理解について、活動されている熊篠慶彦氏のほぼ実体験に基づいているという作品。
「まあ。押しかけ女房ならぬ、押しかけ彼女案件。しかも相当エキセントリックな」
とある講演会場で。『障害者の性について』を語っていた熊篠氏(以降クマと表記)。まだ質問タイムでもないのに手を上げ勝手に発言した女性、ミツ。「セックスを語っていますが。愛についてはどう思いますか?(言い回しうろ覚え)
ざわつく会場。ミツを止めようとするスタッフを制し。「愛はよく分からない。俺が立って動くのと同じくらい無理な事だと思っている」と答えたクマ。
講演を終えて。会場を後にしようとしているクマに駆け寄るミツ。
「私。あなたの本も読んだ。あなたが大好き!」
それ以来。何かとクマの周りをうろつくミツ。「クマピー」と呼び「彼女にして」と迫り。
始めこそ戸惑い、警戒していたクマだったが。次第に彼女に惹かれていって。
何しろ「ほとんど実話です。プライバシーの切り売りです」と熊篠氏が語っている以上、何がどうとかは言い辛いのですが…。
「何かバランスがおかしいなあ~」しっくりこない当方。
この作品はあくまでもクマ目線なので。そりゃあ視野が偏るのは仕方無い。そう言い聞かせるのですが。
確かに。クマの思う事、感じている事は丁寧に描けていた。「障害者だってセックスしたい」そう語る彼をメディアが撮る時。麻痺のある手をアップで撮らせてくれと言われる「なんだかな…」という表情。
何より居心地が悪かった、クマの実家での法事。あの身内のやり取りの中で。特に当方の印象に残った弟の妻。(でも。リアルな反応だとは思いました)
障害者ドキュメンタリーを撮るテレビマン達の、「全然ドキュメンタリーじゃ無いな、それ」というお涙頂戴ストーリーを演出しようとする下り。等々。…ですが。
「ミツの描き方。もうちょっと丁寧にしてやっても良かったんじゃないの?」
人格障害(現在はパーソナリティー障害と名称変更されていますが。作中の表記を使用します)を持つミツ。
いや。当方だってこの疾患について何も精通していません。ですが。
ミツの行動そのものは『パーソナリティ障害B群』(周りを盛大に巻き込む系)なのかなあと無知な当方はぼんやり思いましたが。
そもそも何でミツはクマを好きだと思ったのか。
「障害のある者同士でも幸せになれる。それを証明する」その目標からクマに近づいたんですか?あの出会った講演でのやり取りでそれが出来ると確信したんですか?そして追い回す内にクマを好きになったんですか?…う~ん。
そしてクマが手に入った(言い方が悪いですね)ら、「失ったらどうしよう」と不安になる余り、心のバランスが崩れていったんですか?…う~ん。
まあ。こうやって文章にしてみたら「なるほど」と思わなくもないんですが。どうにもこうにも観ている間はしっくりこなくて。
「身体障害者についてはある程度サポートする者も描かれている。でも、今現在病状が不安定な状態にある精神障害者についての理解やサポートがあんまり…に見えたからかなあ」たどたどしく語る当方。
「で。結局あんたミツの何なの?」という、謎の後継人、余貴美子。
「ミツはねえ」と彼女の哀しい生い立ちを語り。恵まれなかった家庭環境から件の病に掛かったと。
「ところで。病名を言うって事は、前に病院に掛かって診断されたって事ですよね?」「ちゃんと通院出来ているんですか?お薬。ちゃんと飲んでいるんですか?」険しい顔をする当方。「何か…描かれてないだけかもしれないけれど…出来ていなさそうな感じがする」
ここまで感情の起伏が乱高下して。こんなの、周りも疲れるけれど、本人が一番しんどそう。きちんと然るべき病院に掛かって、治療を受けた方が良い。何故誰もそういう風に動かないのか。
自身の身体障害について理解した上で愛してくれている彼女。でもその彼女の持つ精神障害をクマはどう理解していたのか?どう受け止めていたのか。
例えば。「俺はどんなミツだって愛しているよ」そう言うとしたら。
愛しているは結構。でも。それなら尚更、ミツがどうすれば苦しまないのか。考えてあげないと。そう思って止まない当方。
ミツの周りの人々は、ミツの障害をどう思っていたのか。
「精神障害は、絶対に完治はしない。」「ましてや自然には」かつてそう学んだ当方。「一生付き合っていくものだから。その症状を緩和するために様々な治療がある。」
「いや。色々あったんだよ!ここでは描いていないだけで!」「じゃあ描けよ!プライベートを切り売りしたんなら!」こんなやり取り、勿論ありませんが。もしそう言われたとしたら、間髪入れずにそう答えるだろうなと思う当方。
「じゃないと。ただただエキセントリックな押しかけ彼女とのラブストーリーになってしまう。薄っぺらくなってしまうよ…」
この作品の中の常識人。クマの介護職員恵理さんこと小池栄子。非常に好感を持ちながら観ていた当方。でしたが。
「はっきり言う。この作品のラストの下り。あかん」
ラブストーリーとしてのエンディング。蛇足。今までのまともな人たちの崩壊。止めてくれ。止めてくれ。叫ぶ当方。
「何かなあ~。しっくりこないんよなあ~」
題材から。観たいものを勝手に脳内で組み立て過ぎたんでしょうかね。
う~んと言いながら。今でもちょっと首をかしげてしまう。そんな作品でした。