ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「オン・ザ・ミルキー・ロード」

オン・ザ・ミルキー・ロード」観ました。
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エミール・クリストリッツア監督、主演作品。ヒロインはモニカ・ベルッチ

 

とある、戦争中の国。

絶え間無い砲火。緊張感と、どこか間延びした時が交差する、小さな山間の村。

そこの牛乳配達人、コスタ(エミール・クリストリッツア)。

ロバに乗って移動する彼の肩には、いつも相棒のハヤブサが乗っている。

大きな時計が目印の牛乳屋の娘、ミレナ(スロボダ・ミチャログッチ)。明るくてエキセントリック、そして美人の彼女はコスタが大好き。いつもコスタに猛アプローチを掛けるけれど。のらりくらりとかわされるばかり。

ある時。戦争から帰ってくる兄の為、兄の花嫁を斡旋屋から調達してくるミレナ。

戦争が終わったら、コスタとミレナ、兄と花嫁のW結婚式をするとはしゃぐミレナ。なのに。

花嫁(モニカ・ベルッチ)を一目見た途端、恋に落ちてしまうコスタ。同じく満更でも無い花嫁。

そして。戦争は終わりを告げる。

 

なんとまあ。贅沢な映画だろうかと。

エミール・クリストリッツア監督9年ぶりの映画。寧ろ歳を重ねる事で魅力が上がっていくエミール・クリストリッツアとモニカ・ベルッチって。その二人の愛の逃避行って。
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戦争中。なのにどこかほのぼのしていた前半。太っちょ3人の料理番の元、牛乳を運ぶコスタ。「あいつ、変わってるよな」「仕方ない。親父が目の前で斬首されれば誰だっておかしくなるさ」そんな過去故か。浮世離れしたコスタ。

次々と爆発する最中。飄々とロバに乗って牛乳を運ぶ。そんな毎日。

でも変わってしまった。そんなふんわりした日々は。だって、花嫁に恋をしてしまったから。

 

牛乳屋の娘ミレナ。戦争に行っている兄の為に、斡旋屋に頼んで連れてきて貰った花嫁。(凄い設定やなあと。お金で花嫁を連れてくるという事も。それをすんなり受け入れる花嫁も。だって、下手したらマッドマックスの世界に発展しますよ)

いつ帰ってくるのかも分からない兄を待ちながら。牛の乳を搾り、家の事をする花嫁。

いつものように牛乳を運ぶ為、ミレナの家に行って。互いに一目ぼれする二人。

 

かと言って。花嫁は兄の花嫁。互いに抑え込む、相手を欲する気持ち。でも抑えきれなくて。

そんな時。戦争が終わりを告げる。

浮かれ、歌い、騒ぐ村の人々。そして兄の帰還。

「明日は兄と花嫁。そして私とコスタの結婚式」はしゃぐミレナ。でも。

 

美しい花嫁。実は彼女はいわくつきの花嫁。

ローマから、セルビア人の父親を捜しに来て戦争に巻き込まれた。彼女を狂信的に愛した多国籍軍の英国将校。法に触れ、投獄されていた将校がこのタイミングで釈放される。

 

皆に祝福される、その日に村にやってきた多国籍軍。一網打尽に襲われる村の住民達。

そして。コスタと花嫁の逃避行が始まる。

 

結構流れを書いてしまいました。これは自重しないと…。

 

「ああ。男のロマン。愛した人は愛してはいけない人。でも。愛し合う二人。そして彼女と手に手を取り合っての逃避行…でも。でも」

 

「当方はミレナの方が好きなんだな」

 

そりゃあモニカ・ベルッチをキャスティングすりゃあ、ああなるしか無いでしょうけれども!けれども!

 

村で指折りの美人。勝気で明るくて。サバサバして。そしてエキセントリック。
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いきなり銃をぶっ放したり。

そしてあの「戦争が終わった!」と村人総出でどんちゃん騒ぎのシーン。

あれは当方の中での今作ベストシーンですが。村人達で楽器を弾いて。その中で踊って歌いまくるミレナ。ピアノを弾くコスタの、そのピアノに寝そべって歌うミレナ。
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また酒の飲み方も頼もしい。小さなショットグラス2,3本一気に口に咥えて、ぐっと顔を上に向けて飲むという、むせないのが不思議な飲み方。

そんないかれたミレナに胸が熱くなる当方。楽しい。これは酔っていたら相当意気投合出来るタイプ。(当方は酒の前には無力な愚か者です)

そんなミレナが自分に夢中。「コスタは私と結婚するの!」

 

「してやれよ!!」心の中で叫ぶ当方。

ミレナ…何だかメンヘラっぽい予感しかしないけれど。でもいい女やぞ!コスタ!

 

なのにねえ~。結局は美しい花嫁に心が向くんよねえ~。(おばちゃん当方)

 

後半。逃避行はどうなってしまうのか。そこまではネタバレしないようにしますが。

 

「こんなに切ないエンディングを迎えるとは…」溜息を付く当方。

 

羊飼いのおっちゃんのセリフ。あの『THE 男のロマン』余りのセンチメンタルに、むせかえる当方。(分かりにくいんですが。褒めていますよ)

 

そして、ハヤブサ、蛇の涙ぐましい協力と、なんだか犬死感が否めなかったロバ。

 

技術に走って。やれ美しい映像だ。込み入った構成だ。そんな作品が増えていく昨今。そうなると観ている側もやれ整合性がどうだとか、そんな揚げ足を取ってしまう。そんな中で。

 

「ガタガタ言うな。これが俺のロマンだ」

 

そんな、無骨で。シンプルに美しくて、そして哀しい。そんな作品を久しぶりに観た感じがしました。


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