ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「午前十時の映画祭 おしゃれ泥棒」

「午前十時の映画祭 おしゃれ泥棒」観ました。
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今年の夏休み企画。午前十時の映画祭『オードリー・ヘップバーン特集』

ローマの休日』の期間以降、暫く当方には休日がありませんでしたが。何とか最終作品に滑り込む事が出来ましたので。幸い、未見であったこの作品を観に行く事が出来ました。

 

1966年。ウィリアム・ワイラー監督作品のアメリカ映画。オードリー・ヘップバーン37歳。お相手はピーター・オトゥール

 

有名美術品コレクターの父シャルルと一人娘のニコル。数多の美術品を所有する彼の持ち物は実は贋作で。シャルル自ら、その作品の時代の絵具を入手して贋作作成。それを金持ちに売り捌いたりして生計を立てていた。その事を唯一知るニコルは、いつ父親が捕まるのではないかと気が気ではない。

ある時。『チェリーニのヴィーナス像』(勿論贋作)を近くの美術館に展示出品する事となったシャルル。「絵画と違って石像はバレるって!!」と不安がるニコル。

そして。「余りにも貴重な品なので保険を掛けたい」という美術館の申し出に、何の気なしに書類にサインしてしまったシャルル。途端に「一応ヴィーナス像の価値を査定する為に権威ある者に検査してもらう」と言い出す美術館サイド。内心慌てふためく親子。

時は前後して。美術館でヴィーナス像に惚れ込んだ美術商ソルネは、美術品専門の探偵デルモットにシャルルについて調べて欲しいと依頼する。

シャルル不在の夜。こっそり屋敷に忍び込んでいたデルモットはあっさりニコルに見つかってしまう。威嚇の為ニコルが発砲した銃に依って負傷するデルモット。

「俺は泥棒だ」と嘘を付いた(いやいや。人の家に不法侵入して何かを盗む事は泥棒と言うんですがね)デルモット。いまいましいけれど。警察に届ければこちらも贋作についての腹を探られかねない。見逃すニコル。しかし。

「後数日でヴィーナス像は鑑定される。そしたら偽物だとバレてしまう…その前に盗まれてしまえばいいじゃないの」

デルモットにヴィーナス像の強奪を依頼するニコル。

そして。ついにその日がやってきた。


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(全体的に由美かおるっぽいんですよね)

可愛い可愛い。エレガントでチャーミング。そんなオードリー・ヘップバーンが。どちらかと言うとコミカルな演技全開でやっていた今作。

 

まあ。何をどうしようが結局「貴方の父親も貴方も小悪党だから」という設定。

あっけらかんとした父シャルルは勿論。「パパ!」とキャンキャン騒ぐニコルだって、愛するパパを通報する事は一切無く。その金で贅沢して。寧ろ「捕まって…私達終わりよ!!」と悲観。あらあら。

 

なんて大らかな時代。そもそも贋作がここまで世間にはびこる事は現代ではあり得無い。そして美術館泥棒なんて最早不可能犯罪。人間以上の叡智を駆使してのセキュリティー。(全く詳しくありませんが)ですが。それを言っては野暮。

「だってこれ。普通に面白い」

 

ちょっと見ただけで。そして、忍び込んだ時に入手したサンプルで贋作だという事は分かっていたデルモット。でも「どうしてヴィーナスを?(持ち主が盗むの)」とカマを掛け続け。言い出せないニコル。この下りだけで高まる当方のS気質。

結構そのやり取りにも時間を掛けて。

 

お決まりではありますが。この作品には「ラブコメ」の要素も勿論入っていますので。

「何なのかしら。泥棒の癖に図々しい。逃げられないから車でホテルまで送れってなんなの。しかも…お別れのキスって」

「いつも行く先々に現れるあの人。いつだって強引で…」

「何なのかしら。思わせぶりな態度。私には婚約者だっているのに。(ニコルの奴。もの凄くライトな感じで美術商ソルネと婚約とかするんですよ)貴方とは仕事のパートナーよ」

だけど・気になる・昨日よりも・ずっと(アニメ:ママレード・ボーイより)

何だかんだ気持ちは高まって。だってあいつは甘くて苦い。気になるママレード・ボーイだから。(我ながら寒い…ギブミー・ブランケット)

 

この作品での一番の見どころは、やっぱり『決行の日』

1966年。今から51年前!の作品とはいえ。順を追って全てネタバレしていいとは思いませんので。ふんわりさせますが。これが面白かったです。古びない。

「磁石のネタ」「警報機の音量と人間心理」「ビール瓶」そして「物置小屋での出来事」

 

「神様。明日で世界が終わるなら、こういうシチュエーションを当方に下さい」

 

憎からず思う相手と二人。閉じ込められた狭い物置小屋。たまに警備員が扉を開けに来るなんていう絶対絶命もお約束。外から掛けられた鍵をどうやって開けるのか。そして吊り橋効果も相まって。急速に縮まる二人の距離。確かめ合う互いの気持ち。そしてキス。もう次のシーンからはラブラブな二人。その余白を想像して悶える当方。

(ただ…置き換えてみても。残念なまでに膀胱の許容量が無い当方は「だんだんトイレに行きたくなってきた…」という悲しい告白をする展開しか想像出来なくて…切ないです)

 

「そしてお姫様は王子様と仲良く末永く暮らしました。」とさ。

そういう展開になるしかない、何の不安も感じさせない幸せ物語。

 

「でも。逆にそういう物語って、今は作れないよな…。どんなにハチャメチャな世界観に見えたとしても、それを納得させる整合性は必要やし」

 

そう思うと貴重。貴重なオードリー・ヘップバーンの夢物語。

何だかほんわかした気持ちになる。午前十時の映画祭夏休み企画でした。