映画部活動報告「ベイビー・ドライバー」
「ベイビー・ドライバー」観ました。
「ベイビー。いつもイヤホンをしたままで。無口で寡黙な若者。その正体は犯罪組織の実行犯を車で逃がす、専属ドライバー」
彼には子供の時に遭遇した自動車事故の後遺症からひどい耳鳴りがあって。トレードマークのイヤホン。繋がる歴代iPodには莫大な量の音楽が収められており、それを聴いている間はその耳鳴りから解放される。
ベイビーの驚異的な才能。それは「車の運転」
警察も決して捕まえる事の出来ない、その逃がし屋技術。それの才能は彼の聴いている音楽とシンクロすることでどんどん加速していく。
冒頭。銀行の前で車(赤いスバル)が止まって。仲間達が強盗に入るべく車から飛び出して行って。一人…になった途端、無表情だったベイビーが突如音楽に合わせてリズムを取り始め。テンポに合わせ車の位置を微調整。そして仲間たちが車に走って戻ってきて。音楽が盛り上がるタイミングで一気に車がスタート。そこからはもう「何が起きているのか」目を疑うようなカーチェイスが始まって。これはあかん。目が離せない。
当方がベイビーに好感が持てた点。それは「決して耳鳴りの為だけにイヤホンして音楽を聴いているんじゃなくて、音楽が好きで仕方ない」所。
この作品は「カーチェイス版ララランド」という触れ込みをされていましたが。
「ララランドとははっきりと違うけれど。でも…異例のミュージカル映画ではあると思う」音楽と映像のテンポのシンクロさが全編に渡っていて気持ちいい。
話をすっ飛ばしますが。とある悪い仲間がベイビーに言っていた「分かるよ。俺も大好きでテンションの上がる曲を聴きながら車飛ばしたりしたな!(細かい言い回しうろ覚え)」そしてその曲をベイビーのiPodから拾って。二人でイヤホンを共有してその音楽を聴いて。
当方も「分かる分かる!」と何度も頷きました。
(まあ…当方は車に関しては完全なペーパードライバーなんで。学生の時に原付バイクで走りながら「田園」やら「今宵の月のように」(歳がばれるなあ)を力一杯歌っていたとかですがね)
つまりは。仕事仲間には無表情なポーカーフェイスを見せていながら、その実音楽にノリノリではしゃいでいる無邪気な若者の一面も持っているんですよ。そんな奴。嫌いになれませんよ。
何故ベイビーが犯罪組織のお抱えドライバーにどっぷり浸かっているのか。
「あいつがまだ子供だった時、俺の麻薬を運んでいたトラックを車泥棒として奪ったんだ」「俺の身分を完全に明かした上で、あいつにはその時の代償を払ってもらっている」「もうすぐその借金は完済される」
「ケヴィン・スペイシー‼」(このキャスティング、当方的にかなり好きです)
悪の親玉なんですよ。悪の組織のトップ「ドク」。警察ともつるんで。次々と強盗計画を立案。そこで動く実行部隊はいつもメンバーを入れ替え。でも「ラッキーチャームだから」とベイビーは毎回運転手に組み込んでいた。
奪った金を皆で山分け。勿論ベイビーにも同じ様な額が一旦は渡される…けれど。他のメンバーと別れて二人っきりになった時。「お前の借金を引いた分だ」と殆ど差っ引かれる。けれど。ベイビーにとってそんなお金はどうでもいい。
正義感に厚い訳じゃ無い。(結局犯罪組織に属しているんやし)でも。決して乗り気でそこに居る訳じゃ無い。寧ろ嫌々。だから家に帰ったらその金は直ぐに床下に放り込んでしまう。そんなベイビーを心配する、里親のジョゼフ。
件の事故で孤児になってしまったベイビーの里親、ジョゼフ。車いすに乗った老人で耳が聞こえないけれど、スピーカーの振動と口の動きでベイビーと一緒に音楽を楽しむ事が出来る。多くを語らないけれど。ベイビーが危ない事に加担している事には気づいていて、何とか足を洗って欲しいと願っている。
そんなベイビーが恋をした。
事故死した母親が働いていたレストラン。そこで働く「デボラ」
その金髪少女に一目ぼれ。
「何でこんなコミュニケーション下手そうなベイビーが?!」トントン拍子に良い感じに進んでいく二人の恋。
丁度その時。とある強盗の報酬に依ってベイビーの「過去の罪」が清算された事で、晴れて自由になったと思って。大人しくジョゼフに勧められた「ピザ配達」の仕事に就いて真面目に働いていたのに。
再び現れるドク。結局はベイビーを手放さない。ドクはデボラの存在も把握していて。
「お前の彼女に何が起きても知らないぞ」的な脅しに、再び犯罪組織のドライバーに戻るベイビー。
そして。新しく構成されたメンバーで計画された「郵便局強盗」
何だか不穏な雰囲気の中。その日は近づいていって。
公開されてまだ一週間も経っていませんし。何もかもをネタバレする事は無いと思いますので。もうまとめに入っていきますが。
「前半の掴みが良かっただけに、何だか整合性に欠ける展開になった」「ドクの大物感がちょっと弱いかなあ」「というか何でこいつがラスボスなんだ」
大体「お前はこれで自由だ」とか言って別れたはずのドクがあんな再会の仕方をしてくる?強引やし、もっとスマートな難癖付けてベイビーを連れ戻せば良いのに。とか。
「兎に角バッツは嫌い(当方の心の声)」疫病神もいい所。チームワークが必須の仕事なのに乱しまくり。もう何もかもが鬱陶しい。と思ったら、ああいうあっさり展開。そしてまさかの「何故あんたがラスボスなんだ」という仲間からの変わり身。しかも不死身。
そして。「最早カーチェイスじゃねえよ!」という「どこまで車を壊せるのか祭り」
また、吊り橋効果も相まって高まるベイビーとデボラの恋。無敵な二人は手を取り合って逃げるけれど…。
「まあ。まだまともな所に着地したな」と思った途端の「アメリカ司法って奴は!」というミラクル超法規的処置。
余りにも冒頭からの流れに惹かれていただけに。個人的には後半若干「ちょっと違う」「甘すぎる」なんて思って観ていましたが。
「まあ。あれだけの運転技術があれば、大抵の運送業に適応して生きていけるのだろう」
ベイビーの未来。具体的な意味で全く心配が無いなあと思いながら。
幸せにやっていけるんだろうという明るさに満ちて…一気に駆け抜けて行ってしまいました。