ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」

午前十時の映画祭「 グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」観ました。


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1997年公開のアメリカ映画。

1992年。ハーバード大学在住であったマッド・デイモンがシナリオ製作の授業課題にて書いた脚本。それを親友のベン・アフレックに見せた事でこの物語は生まれ…とはいえ映像化までは随分な月日を要したけれど。

 

余りにも有名な作品。マイベストに挙げる人も多い中で。当時田舎の幼い学生であった当方は街にある映画館に行く機会は無く。

「その後、何回も『何曜日かのロードショー』でやっているんやろうけれど…あんまり覚えていない」

観たい映画に困ったら『午前十時の映画祭』今回もまた、全く期待を裏切る事の無い指折りの名作でした。

 

有名大学の数学クラス。そこのジェラルド・ランボー教授が生徒たちに提示した、超難問の数式。教室前に書き出されていたその問題を解いたのは何と…学生では無く、大学の清掃員の若者。

何回か数式を提示→見事回答。を繰り返し。遂にその若者(ウィル=マッド・デイモン)にたどり着いたランボー教授。

しかし、その天才は素行の悪い集団とつるむ街の不良で。

見つけ出した時も、下らない喧嘩をして暴行を働き、鑑別所送り寸前。

ランボー教授はウィルの身元引受人となり。保釈する代わりに、定期的に自分の研究所に学びに来ること、同じくセラピーを受けることを約束させる。

驚異的な数学の才能を開花させ、めきめきと伸びていくウィル。しかし、口の悪さ、態度の悪さは相変わらずで、何人ものセラピストが匙を投げていく…。

ランボー教授がダメ元で最後に頼んだセラピスト。それは彼の大学時代の同級生で、別の大学で教鞭を取る、ショーン・マクガイア(ロビン・ウイリアムズ)だった。

 

ロビン・ウイリアムズが…本当に大好きで…」昨年同じく午前十時の映画祭で観た『いまを生きる』も当方のやらかい所を締め付けすぎて…ボロボロに泣いてしまい。

兎に角もう…ロビン・ウイリアムズがあの困った様な、くしゃくしゃの表情で何かを発する時。もうそれだけで当方はやられてしまう…。

 

まあ。「この作品自体のメッセージ性」と「若者が書いたとは思えないクオリティー」というベースがしっかりしているのが勿論の前提ですが。

 

「しっかし。街の底辺に住む不良が。意外と本を沢山読んでいて博識というのはあっても、数学の天才ってあるのかね?だって。数学って、ある程度の基礎を教えられてから応用に行っての何段階ものステップ踏むやん」

 

昔々。思い出したくもない。数学馬鹿であった当方。

国語とかではまだまともな成績を取れたのに…数学では目を見張る程の低能ぶりを発揮。授業には全て出席しているのに、高校では数学の所為で仮進級寸前まで追い込まれ。

「分からない。どうしてこういう考え方をしなければいけないのか。何故この問題の解き方は一つの方程式しかないのか。この公式には何の意味があるのか。何故誰かが考えたやり方を、理解も出来ないのにただ覚えろというのか」

こういう、ドツボに嵌った学生はねえ…数学の世界では伸びないですよ。

実際、担任教師(数学教師)には「お前の人生に数学は要らんのやろう」と言われた学生時代。

(余談ですがね。例えば小学生の「200円を持っていたら、1本20円の鉛筆と1つ30円の消しゴムは幾つ買えるでしょう」とかいうのも「そんな買い方する奴いねえよ」と引っかかっていた当方に、数学的な未来は無いですよ)

 

下らない話をしてしまいましたが。

 

実は非凡な才能を持つウィル。でも彼には心を開ける相手が居ない。心を開くという怖さ。そしてどうすればいいのかも分からない。もうそこには触れたくない。

それ故に底辺に身を置いて。気に入らなければ直ぐに暴力沙汰。または知識で相手をねじ伏せ。

 

またどうせランボーが連れてきた無能だろうと。完全に子馬鹿にして、舐めて掛かったマクガイアに。返り討ちに合うウィル。

 

「確かに。子供の時に思っていた大人は、強くてどっしりと揺るがないものだと思っていたな」そう思う当方。でも。

「大人になった今なら分かる。大人だって精一杯で立っている時はよくある」

 

でも。子供とは圧倒的に違うもの。それは「実体験に伴う、感情の裏打ち」「経験から来る重み」それは机上の空論では絶対に太刀打ち出来ない。

 

勉強が出来て、博識で。そこに傲慢さのあるウィル。でも彼は、かつてバーで出会って論破した「お前の言葉じゃなくて、どこからかのコピーだろう」と言った輩と何ら変わりが無い。ただのかしこいだけの子供。

 

最愛の妻を失い。必死に生きてきたマクガイア。彼から語られる、彼の人生哲学。

徐々に変わっていくウィル。二人の間に生れていく信頼感。

 

同時に、ナンパして出会ったスカイラー。段々と惹かれていく中で。どう自分をさらけ出せばいいのか悩むウィル。

 

「そうやって相談出来る大人が必要だったんよな…」

 

自分で勝手に悩んで。殻に閉じこもって。自分を見せる事が怖くて。ありのままを見せたら嫌われるんじゃないか。どうせ俺なんか。それくらいならと相手を突き放してしまう。

 

「君は悪くない」

 

そういう自分を。まずは肯定してくれて。そして抱きしめてくれる相手。そういう大人。

君は悪くない。君は何も悪くない。君は君のままで大丈夫。

そういう相手をやっと見つけられた。その、心からの安心感。

 

ウィルが最終的に取った選択に「若いな~」と苦く笑う当方。でも、それでいいやと。

 

そして。ベン・アフレック演じる、底辺仲間チャッキー。彼が最後に見せた表情に、不意に涙がこぼれた当方。

 

「誰も悪い奴なんて居ないよな」

 

やっぱり。『午前十時の映画祭』に外れなし。

彼らの門出が良いものでありますようにと祈った作品でした。