ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「おじいちゃんはデブゴン」

「おじいちゃんはデブゴン」観ました。


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「香港映画の重鎮。サモ・ハン監督が20年ぶりの復活」

これはこれは。

先日。小学生からの友人と、友人の誕生日をきっかけに久しぶりにランチに行ってきました。

非常に稀な考え方をする、純粋培養で生きてきた友人については語りだせばきりがないのですが、それは全く本編とは関係も無く、そして無駄に読んだものの心をざわつかせるだけだと思いますので割愛しますが。

「最近はどんな映画観てるん?」

そんな友人の何気無い言葉に「國村隼が韓国ではじけていたやつ」やら「スペインの鋼鉄ジーク」だのを当方が淡々と語る中「そっかー。何曜日かのロードショーでやったら観るわ~」なんて朗らかに言い放つ友人に「絶対にこれらが地上波に出る日など来ない」と返す当方。

「昔は色んな映画がテレビで観れたもんな~」「サモハンキンポ―とか、ユンピョウ、ジャッキーチェンが元気やった時。ホンマに面白かった」「後、アメリカのポリスアカデミーシリーズね」俄然盛り上がる休日のランチ。ノスタルジック中年の二人。

 

前置きが長くなりましたが。そこでまた冒頭に戻る訳ですよ。

 

「香港映画の重鎮。サモ・ハン監督が20年ぶりの復活」

これはこれは。見逃すわけにはいきませんなと。

主人公のディン。退役軍人。元要人警護。現役時代はバリバリに活躍していた。

しかし。ある日一緒に遊んでいた孫娘とはぐれてしまい。まさかのそのまま孫娘は行方不明。

怒り心頭の娘夫婦とも疎遠になってしまい。妻にも先立たれていたディンは、故郷である、ロシアとの国境に近い中国北東部でひっそりと一人暮らしをしていた。

少しずつ認知症の症状も出てきたディン。彼を気にして世話を焼いてくれる女性も居るけれど(ディンの借家の大家。そして彼女の息子は警察官)そっとしてほしくて、つれないディン。

そんなディンが唯一心を許す相手。隣家の少女チュンファ。

「髪型だけが取柄」というしがないチンピラの父親レイと二人で住むチュンファ。彼女は父親と喧嘩しては、しょっちゅうディンの家に転がり込んでくる。

学校にもあまり友達のいないチュンファはディンに懐き。そんなチュンファが可愛くて仕方ないディン。ほのぼのとした幸せな日々。

ある日。ギャンブルで散々借金を重ねていたレイは、その元締めであるマフィアのチョイからロシアマフィアから金品の入ったカバンを強奪してこいと強要される。そして、何故か成功するレイ。でもレイがその鞄を持ち逃げした事に寄って、娘のチュンファにも命の危険が迫ってくる。

 

「ここまで忠実に書いていたら…まあ、どうなるのかは分かるよなあ」

正直、話の展開自体はベタベタなストーリーやし。またそのストーリーを結構登場人物達が説明してしまったりと「いらんいらん。その説明要らん!」みたいな所、ありましたけれど…。

「これはサモ・ハンを観る映画なんやから。彼の『動けるデブ』健在っぷり。しかも結構な年齢になったはずなのにまだそんなに動けるなんて!」

まあ。そういう映画ですわ。

 

滅茶滅茶早く動く何かでは無い、でも「この重量がこんな力でのしかかってきたら…破壊力あるで」その連発。そして。

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「ああこれは。どんな固定器具使っても治せない骨折」

作中、兎に角「どうやって骨を折るか」を考えたんでしょうかね。ちょいちょい挟み込まれる『人間の可動域を越えた動き』『折れた骨のレントゲン画像みたいなのが映る』シーン。軒並み破壊的なダメージ。あれ、骨だけじゃ無くて神経とか腱とかもやられていますよ。

後で下っ端のチンピラが三角巾して現れていましたけれどね。恐らく彼のこれからの人生、一生その三角巾で腕を固定していないと。ぶらんぶらんで腕は使えないやろうし、肩がすぐ脱臼しますよ。そしていつかは切断。恐ろしい…。

 

とあるジャンル映像に於ける「その物語シーンはいいから!肝心の所を見せてくれ!」とせかしてしまう性をお持ちの皆さまを納得させる、そんなクオリティ。(唐突に当方は何を言っているのか)まあ、男子って仕方が無いですよね…アクションがお好きですから…数多のジャンルの…。(誰だ!)

 

ですが。この作品は決して「サモ・ハンのアクションを楽しむ」だけの映画では無かったと当方は思いました。

前述した『ベタベタなストーリー』その主人公が『初期の認知症と診断された老人』という哀しさ。

60代を老人と呼ぶのか問題は置いておいて。確実に見える『老い』体は無意識に動くけれど。負傷したとはいえヒョコヒョコした歩き方には哀愁が漂い。

そして何より、自分が自分で無くなっていく不安。記憶に無い、そしていつかは何も自分には分からなくなるのだろうという怖さ。

「目が凄く綺麗というか…可愛いというか…」戦っている時は険しいですが。その他の時のディンの目の表情の定まらなさ。兎に角目力は半端ないけれど、何となく虚ろで。(ただ。サモ・ハンがそこまで考えて演技していたのかは…正直分からないですけれど)

また、そんなディンとチュンファの絵に描いた様な日々。二人でアイスを食べて、魚釣りをして。遊んだ日々。

 

ディンが、かつて失った孫娘とチュンファを重ねているのは間違い無い。でも…。

 

「自身の認知症についても、孫娘についても、決してご都合主義な結末に落とし込まなかった所は、凄く評価出来る」

ベタベタなストーリーであるからこそ。だからこそ幾らでも都合の良い大円団に持ち込める。全員が幸せになれる。そうなるのかなと危惧したのもあって。この作品の結末は非常にフェアであったと思いました。

「ただ。少し寂しくなるけれど」

 

久しぶりのサモ・ハン映画。こちらも歳を取ったので…心に刺さる場所は、昔とは全然違う場所でした。