ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「はらはらなのか。」

「はらはらなのか。」観ました。
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原ナノカ。12歳。もうすぐ13歳。芸能事務所に所属する子役だけれど。最近は伸び悩み。オーディションも不合格ばかり。

産まれた時にお母さんと生き別れ、お父さんと二人暮らし。最近お父さんの地元に引っ越してきた。

お母さんは女優だった。そんなお母さんに憧れて初めた子役の世界だったけれど。12歳は段々子役では無くなってくる。かと言って下手にこなれていても嫌われるし。

「透明な友達」私の分身は私の友達。多分もうすぐ消えてしまう、私だけの友達。

いつも動画で観ていたお母さんの舞台。お母さんの所属していた、この町の劇団。

たまたま。お母さんの演じていた演目の再演を知って。応募。そして選ばれた。

 

私は、お母さんと同じ舞台に立つ。

 

25歳。酒井麻衣監督作品。

主要メンバーの殆どが役名=芸名。チャランポランタン。不思議なミュージカル。前評判を聞いて。何だか気になって。観に行ってきました。

 

12歳。夢と現実。どちらも見ていていい年頃にみえるけれど…大人になる為には捨てなければならない世界がある。

「誰とも違う、特別な私」になりたい気持ち。12歳なのに歳を取ってしまった感。

出遅れたと焦るのに、足元をじっくり固めようと出来ない「急がば回れ

見たことのない「お母さん」を思い浮かべて。焦って。兎に角追いつきたいし何か触れたくて。

「兎に角。兎に角」

 

「焦らなくてもいいよ」

当方は歳を取りましたのでね。

この作品がそういうメッセージをはらんでいたのかは分かりませんが…当方は「ナノカのお父さん(=川瀬陽太さん。直人)」の目線でばかり見てしまいました。

 

12歳。停滞して。『売れない子役』というポジションにイライラする娘。でも。

 

12歳なんて。今すぐどうにかしないといけない事なんて何もない。寧ろ今は「普通の中学生生活とか」「部活とか」「友情とか」「恋愛とか」そういう事を体験して欲しい。だから自分の生まれ育った田舎に引っ越してきた。なのに。

「結局『芸能界』『役者』という事にしがみついてくる。見つけてくる。しかも。田舎に越してきた事に依って、それは都会で芸能事務所に所属していた時よりも悪い条件で」

「しかも、愛していた無き妻の所属していた劇団。そのいわくつきの演目に」

これは心配しますよ。しない訳がないですよ。

 

「ワタナベアカデミー賞助演男優賞。の川瀬陽太さん。宇野祥平さん」彼らが好きすぎて。だからこの作品も観た。そういう贔屓目があるのは、はっきり告白しますが。

「もうこんなおいちゃんの歳になったら、そりゃあファンタジーな12歳よりはその父親に気持ち入れちゃいますよ」もうナノカの父親パートにウルウルする当方。

 

心配でしかない一人娘。芸能事務所を契約期限でフェイドアウト出来ると思ったら、アングラ系地元劇団に鞍替え。心配して怒ったら家出され。行先は知っている相手ではあったけれど結局は劇団繋がり。娘には連絡も取れないし…。

「辛い。辛すぎる」一体お父さんが何したって言うんだ。なのに。

 

同じ学校(というか分校レベルの田舎)のきらきらした先輩に憧れ。先輩に一刻も早く追いつきたくて。認めて欲しくて。危なすぎる橋を渡ろうとするナノカ。

「そんな事より。折角騒いで獲得した役なら、そこに集中しろよ」

なのに。正直当方目線では…集中して、没頭している様には見えないんですよ。

先輩の歌のレベルは規格外。対して自分は児童ポルノスレスレの危ない案件に巻き込まれて。泊めてくれているメイド喫茶のお姉さんも気になるし。兎に角全方位に気を散らしすぎ。なのに。

 

「結局、演技って嘘じゃないですか」突然行き詰って。舞台稽古の休憩中にぶちまけるナノカ。結構唐突。そうなる下り、ありましたかね。当方は戸惑いましたが。

 

見たことは無い、女優のお母さん。自分以外には見えない「透明な友達」。

 

でも知ってる人も居る。お母さんの事を知っている、劇団の人たち。透明の友達は誰にも見えないけれど、いつも自分を支えてくれた。

 

けれど。彼らはやっぱり『見えないモノ』で。「透明な友達」も言っていた。「だんだん見えなくなってきているんじゃないの。そういうものよ」そういうもの。

 

お母さん。お母さんが居ない事は現実で。でも自分には「お父さん」が居た。

 

「お母さんのご飯が食べたいって言ったらね。朝。ご飯が置いてあったんだ」もうそのナノカが語りだしたエピソードで。そこまでちまちました文句を言っていた当方の目に涙が…だってあんなの…卑怯すぎる。

そこからは完全に川瀬陽太さんのターン。当方完敗。

 

自分の前に置かれた現実。それだって全然悪くない。

でも、夢を見ていた。それは甘くて。いつかは別れなければいけない夢。けれど。

 

「それは全くの夢ではない。誰かはその夢のかけらを知っているし、現実とも繋がっている。別れても。もういつも寄り添ってくれるものではなくても…完全に消えたりはしない」

 

お話し事体も危なっかしくて。本当にはらはらした「はらはらなのか。」

 

見事に幕を閉じた途端、彼女たちは直ぐに「次の世界」に行ってしまいました。
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