ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「バーニング・オーシャン」

バーニング・オーシャン」観ました。

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2010年。アメリカ史上最大規模の。メキシコ湾原油流出事故の映画化。

「ディープウォーター・ホライズン」という海底石油掘削施設にて、掘削パイプが折れた事から原油流出が発生。

126人の作業員の内17名が負傷。11名が命を落とした。

ピーター・バーグ監督。マーク・ウォールバーグ主演。

「これは…リスク分野に携わる者は必ず観なければいけない作品なのでは…」

昨年の「ハドソン川の軌跡」しかり。「リスク関連ジャンル」が確立しつつある、近年の映画界。

大型連休目前。浮かれた作品や大金つぎ込んだ作品が大挙して押し寄せる中で。如何せん地味な印象。埋もれてしまった感のある今作。

「いや。結構しっかり作られている。あくまでも史実に則るので、ヒーローモノでもミラクルも起きないけれど…(主役二人の展開はミラクルですけれども)ちゃんとオーシャンがバーニングしていたよ」

海底油田の掘削施設。そこの陣頭指揮を執るべく集まったメンバー達。しかしそこで見たものは。

バックに付く会社、BPのもと。ないがしろにしてはいけない「安全性」が守れていない現状。

必ずしなければいけないテストの省略。危険アラームの誤作動。(しかもそれは常態化しており「また鳴ってるよ」と切られる不始末)兎に角会社としては作業の効率化を優先。ただでさえ納期が遅れている。とっとと石油を掘れと作業員たちを追い立てる。

そんな会社に腹を立てながらも。準備不足、腑に落ちないテスト結果を無理やりにこじつけて、遂に掘削作業開始のボタンは押されてしまう。

そして案の定。最悪のドミノ倒しが始まる。

「怖い。ここまで全てが駄目な方向に進むなんて…」

パイプ破損による石油流出。止められる栓となるものは最早存在せず。そして機材の火花が引火。瞬く間に掘削施設(船)は炎に包まれる。
逃げ惑う作業員たちの中で。現場指揮を執っていた、一部作業員の勇気ある最後。対する、作業員を押しのけてまで救命ボートに乗ろうとするBP社員。

「こういう有事では本当の自分が試されるな…」

勿論助かりたい。自宅に帰りたい。でも。ここは何処?ここは職場。己の職場で起きた…しかも人的災害。

「それは。やれることはやらんと」

当方は管理職でも何でもない。ただの古株平社員ですがね。多分そう思いますよ。

だからこそ、あの「クレーンが火の中に倒れるぞ!」と必死で操作した作業員の姿にはいたく共感しました。

(だからと言って、何もかも投げ出して逃げた人を悪くは言いません。あんな有事…仕方ない。多分こんな事を言うのは、今の当方には(両親と妹は居ますが)守るべき愛する人が居ないからだとも思いますから。

きっかけからして、度重なる準備不足と見切り発車なのに。危険アラームの早期発見を逃し。SOSの発信を、挙句この事態を収束出来そうなボタンを押すことも「お前にはその権利が無い」と実行させない。アホすぎる。

「あの時。あの掘削開始ボタンを押すシーンで、船長が同席していたら」「そもそもセメント試験がきちんとなされていたら」「危険アラームを修理していたら」「BPのあいつが居なかったら」
たらればたられば。

「何かが起きた後のたらればの無意味さ」

後からなら何とでも言える。

リスク業界で言われる「ハインリッヒの法則」つまりは「一つの大きな事故は29の小さな事故、失敗。300のヒヤリハットからなる」という氷山の一角理論。正にその通りの事案。

「まあ大丈夫」「いつもこれでいけてるよ」「またか」「つまんない事言うなよ」「そんな事でビクビクするな」「まあいいか」「早い事仕上げようぜ」

「せーの」

一体自分の取り扱っているものは何なのか。まあ…彼らに関しては特に危険物な訳やし。「危険手当」は伊達ではありませんよ。命に掛かっているし…環境も破壊するし。そこの重大性を見失ってしまったら…そりゃあとんでもない事が起きてしまいますわ。


「確かに迫力の大爆発の連続。パニック映画としても秀作なんやけれども」

如何せん。史実ベース故に。生真面目な気持ちになって。険しい表情で劇場を後にした当方。