ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「SING/シング」

「SING/シング」(字幕版)観ました。


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3Dアニメーションもここまで来たのか。完全に舐めていた当方を。ボロボロに泣かせた作品。

とある動物たちの国で。幼少時劇場の魅力に魅せられた事から、現在その劇場支配人に収まっているバスター(コアラ)
でも今の劇場は閑古鳥。設備も古く、集客の見込める演目が組めない。結果借金取りに追われ。倒産寸前。

従業員は200歳のミス・クローリー(イグアナ)。バスターの親友、パトロンのはずの金持ちのボンクラ息子エディ(羊)ももう劇場なんて辞めてしまえと乗り気では無い。でも辞めたくは無い。だって劇場は最高のエンターテイメントだから。

窮地に追い込まれたバスターは「歌のオーディション」を思い付く。対象者は街の皆。懸賞金を付けた歌のオーディション…しかし、ミス・クローリーの些細で重大なミスによって「優勝者には10万ドル」という破格のチラシをバラまいてしまう。

そして集まった、個性的な動物たち。そして引くに引けなくなった劇場メンバー。

一体このオーディションはどうなってしまうのか?そして、出演者と劇場の運命は?

という予告であったと、当方は記憶しているのですが。

まあ、他の作品の予告編で観ても…あんまり気にはしていませんでしたね。

それが。公開後あちこちからの「これはあかん」「良すぎる」「最高だ」絶賛の声。それを受けて…重たい腰をえっちらおっちらと上げた当方。そして冒頭に戻るのですが。

春休み期間。案の定映画館内に数多にフォーメーションされた若人達。彼らは映画館館内が暗転しても喋り続け。椅子を蹴り。「きゃりーぱみゅぱみゅ」の楽曲が流れた際には拍手する等。非常に当方の神経を逆なでし続けた…等の弊害もあったのですが。

「周りがどうだったのかは知りませんがね。当方は…当方は涙が止まりませんでしたよ」

歳を取って。もう誰も手放しには褒めてくれなくなる昨今。結婚して家族を作るでもない当方。「当方は一族の末裔です」とでも言おうものなら親はブチ切れ。職場でもすっかり古参の当方は、下を「褒めて伸ばす」事を意識しながらも。自身は何も報われない日々。でもそれはもう仕方ないと諦めている。

…というくたびれ系中年の特性か。単純に元から涙脆いのが助長しているのか。

「一生懸命やっていれば、誰かが見てくれる」「努力は報われる」「夢はきっと叶う」

そういうストレートなメッセージに。赤子の手を捻るがごとく、打たれてしまうんですよ。

オーディションに集ったメンバー。(一応断りますが…以降『匹』『頭』とかが正式表記なんでしょうが。ヒトではありませんが『人』で統一させて頂きます)
パンクロッカーのアッシュ(ヤマアラシ)彼氏とペアで来たけれど、通過したのは自分だけ。そして次第に離れていく二人の間。音楽性の違い。彼氏の浮気。
ギャング一家の息子ジョニー(ゴリラ)自分が進みたい道は音楽。分かってもらいたくて。でも父親には言い出せなくて。そして自分のせいで父親は捕まってしまう。
歌は最高にムーディーやけれど…当方が唯一好きじゃなかったマイク(ネズミ)
シャイすぎて。自身の果てしない才能を埋もれさせてしまうミーナ(象)

どいつもこいつも。キャラが立ちすぎて。(ネズミ以外)愛すべきキャラクター。ですが。

「当方が一番泣いたのは『豚のお母さん:ロジータ(豚)』」

くたびれた夫と25人もの子供を持ち。思い切ってオーディションに参加。抜群の歌唱力を持つけれど「華が無い」と同じ豚のグンターと組まされる。そいつがまた、やたらノリノリの陽気なダンス上手。

とんだDIY精神で自身の家事をシステム化。でも上手くいかない。グンターみたいに踊れない。若くも無いし。そして家事、育児と両立出来ない。もう無理。自分は主婦に戻るしかない…でも。

才能がある。歌も上手い。でも諦めていた。だって自分はお母さんだから。やるべきことは「お母さん」で。求められているのも「お母さん」でも。

「お母さん」は自分のやりたい事は出来ないの?歳を取ったら無理なの?認めてもらえないの?

でも。そうやってもがいて。頑張った彼女を。誰も悪くなんて言う訳がない。(そして彼女、滅茶苦茶努力家ですからね)

圧倒的なパフォーマンスを見せた豚の二人。(当方はグンター嫌いじゃないぜ)観客への掴みは完璧。そして「お母さん」に飛びついていく25人の子供達。そして夫。
あの夫はただ疲れているだけで…全然悪い人じゃない。そりゃあ扶養家族が26人も居ると疲れるやろうし…。決してロジータにあれこれ文句を言ったりしない。「いつもありがとう」と言葉も掛けられる。ただ…彼女を「家を回してくれているパートナー」と認めているだけで。そんな彼が。完全にロジータに惚れ直す瞬間。

当方はお母さんではありませんがね。涙が止まりませんでしたよ。

結局は、鑑賞する側の年齢や背景に依って、感情移入するキャラクターも変わってくるのでしょうが。

途中から完全にツボを押された当方は全方位に渡って泣き続け。勿論ゴリラのギャングパパとの下りも「お父さんは分かってくれるよ」と泣いて。
シャイすぎるミーナに関しては「うじうじしてはどうしようもないぜ!」とやきもき。そしてアッシュに対しても「もっとちゃんとした彼氏出来るから!忘れな!」と声を掛け。マイクですか?「お前は排水溝に流されたら良かったんだよ」と冷たい当方。

また、劇場支配人バスターのキャラクター。
勝手で強引やけれど、その行動原理は「劇場には夢がある。それを守りたい」というロマン。そしてそれを支える愛すべきミス・クローリーと親友のエディ。

終盤。バスターとエディが洗車する姿に。笑いながらも涙がまた止まらなかった当方。馬鹿馬鹿しくて…何て大切な友達やろう。

笑って泣いて。正にバスターの語っていた「劇場には夢がある」を体現したこの作品。

3Dアニメだから。動物キャラクターだから。何だか軽そうだから。もう今後はそういう先入観では図れない。でないととんでもない良作を見逃してしまう。

「こういうジャンルにもアンテナ伸ばしていかないとな…」
映画鑑賞後の夜。何回も何回も豚二人のパフォーマンスを動画で見直して。また泣いた当方。

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