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ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ホームレス ニューヨークと寝た男」

「ホームレス ニューヨークと寝た男」観ました。

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ニューヨーク。マンハッタンの街並みを見下ろすビルの屋上に住むマーク。

現在50代。元モデルのマーク。端正な顔立ち。ジムに通い、体型も維持。シュッとしたスーツ、高そうな靴。スタイリッシュな出で立ち。
ファッションフォトグラファーという華々しい職業。日々ファッションショー通い。その他街角でもモデルやスタイルの良い女性を見かけては写真撮影。
毎日街を闊歩し。写真を撮って。カフェをハシゴして編集し。ジムに通い。夜は仲間内のパーティーに参加。時々映画のエキストラに出たりして小銭を稼いで。

楽しそうな生活を送るマーク。そんな彼の唯一の秘密。「マンハッタンの街並みを見下ろすビルの屋上に住んでいる」=「ホームレス」だという事。

旅行に行くからと、友人から自宅の鍵を預かった。その時勝手に合鍵を作り。その鍵を使って勝手に毎夜そのビルに侵入。屋上まで上がり。そして隣のビルに渡って。屋上の隙間に隠れて暮らすマーク。

なかなか興味深いドキュメンタリー映画が出たなと。予告を見て気になったので観に行ってきました。しかも当方の住む地方での公開初日に。

「人生に於いて『成功する』とは」『豊かさ』とは『家』『自由』とは」そんな事を追及した人の姿から何かを得たいと思って…いたのですが。


「何か思っていたんと違う…」もやもやと劇場を後にし。その後も脳内で反芻を繰り返し…やっぱりそう思う当方。


「恐らく当方は『つまんない大人』になったからだ」だからこういう見方になってしまう。
そんな「つまんねえ話」をお酒片手に語らせて頂きますが。

ドキュメンタリー映画を今年になってから幾つか観ていて思った事。それは「純粋なドキュメンタリー映画というものは存在しないんじゃないか」という事。
乱暴な決めつけですが。
「一つの対象」に対してどこをどう切り取るか。どう見せるつもりなのか。作り手の思惑というものは絶対に存在する。そうでないと、ただのホームビデオだから。(奇跡的なホームビデオという奴もあるのかもしれませんが…例えば長年に於いて追い続ける「テレビのドキュメンタリー」というジャンルはまた違うのかもしれません。大家族モノとか)

つまりは映画でドキュメンタリーとして何かを撮るとき。恐らく作り手は「こういう題材の対象に対して、こうなるんじゃないか」なんて思いながらカメラを向けている。
でも「対象」もまた、ただ撮らせている訳ではない。
その「対象」はどう演じてくるのか。

カメラの前で100%ナチュラルな人間なんて居ない。どこか意識して。カメラ越しの相手に分かりやすいメッセージを送ろうとする。折角の機会なんだからと。ここぞと語られる主義主張。分かりやすい画を見せようとする。でも。

「結局そこには台本も筋書きも無い」

そんな中で。いつまでも自分を取り繕って良いように見せるのは限界が出てくる。そうなるとどんどん素が出ていって。そこで初めて現れる「リアル」
「対象」がそれを見せてくるのを待っているんじゃないかと。だとしたら、まあなんて意地悪なジャンルだと。

「何て分かりにくい話をしてしまったんだ…」持って回った話はもうやめますが。

当方がこの作品に期待していた「マークの主張」それが余りにも不透明で、不安定。

先程までの分かりにくい前振りの。その呈を成さない。何を見せたいのか分からない。そしてマークも言いたい事が初めから定まらない。ただヨタバナシが続く。

イケイケな生活を散々見せた後の「俺の住処」かつての華々しい生活。それを懐かしく噛みしめながらも、今のこの生活に対してのポリシーは余り語られない。(語っていたのかもしれませんが)

「なんて張りぼてなんだ…」つまんない大人当方はそっと眉を顰めるばかり。

見た目を取り繕って。昔見た華やかな世界にしがみつきたくて。ただ楽しい時間を伸ばしたい。それだけ。
見栄を張って、でも現実はぞっとする位惨め。落ちぶれたなんて言いたくない。だから見たくない。

男前でダンディな外見とは裏腹に、マシンガントークでひたすら語り続けるマーク。その内容は自慢。そして自嘲。その虚無感。薄っぺらい。

「僕は彼らとは違うから」「僕は上品なものが好きなんだ」
他の、いかにもなホームレス連中と自分は違うと言い切り。でもどう違うのか当方には分からず。

「でも時々涙が止まらなくなるんだ」不安定すぎる。でもそれ以上は語られず。

「確かにそんな生活は不安でしょうがね」当方の中の、一升瓶片手に持ったおいちゃん当方(イメージ菅原文太)がのっそり語りだしますが。

「どう考えても、あんた甘いわ。いい年して。そうやってキリギリスみたいな生活を続けて…でも実は今でも誰かが見出してくれて、全てが好転すると思っているやろう。俺はこんなはずじゃないと。俺のスペックを見ろよと。巷に溢れるつまんない奴らとは違うんやと」
止まらないおいちゃん当方。

「つまんない奴が。どれだけ頑張ってつまらない人生を送っていると思っている?誰もがつまらない奴が真面目に作った食べ物を食べて、真面目に作ったものに囲まれて生活しているのに。つまらない奴は死んでいるのか?夢が無いとでも?毎日真面目に働いて、大切にするものを守って、へとへとになって眠りに付く姿はつまんないのか?」

カメラを通して見たマークの姿は、恐らく一面的なのでしょうから。言い過ぎなんでしょうが。

マークの葛藤とやらをもっと見たかったと。そう思う当方。

(後、単純な疑問なんですが。この「勝手に合鍵を作られた友人」とはこの映画公開後どうなったんでしょう?他にもう一人勝手に合鍵を作って堂々と家に上がり込んで寛いでいましたけれど。あれ…通報ものやし。どうなったんですか?そして彼の周りの人達との関係性は?)

当方が観た日は公開初日でしたので。マーク本人が登場。挨拶がありました。



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(相変わらずの当方のシャッターセンスの無さよ…)

「この作品を初めてきちんと商業ベースに乗せて、評価してくれたのは日本だから。日本で働けないかという活動をしている」この発言に、先程のおいちゃん当方が過敏に反応。甘やかすなよと。

そして「後で山崎に連れて行ってくれるとの事で、楽しみにしている」とはしゃぐマークにもやもやする当方。
(京都大山崎にあるサントリーウイスキー山崎工場。当方も行った事がありますが、非常に上質な時間を送れる素敵な場所です)

「なんの為にこの都市に来たんだ!日本屈指のスラム街『西成』に連れて行けよ!」

したたか。
まあマークは結局どこででも生きていけるのでしょうけれど。ただ、当方は万が一マークを見かけても声を掛けたくはありません。だって。カメラ越しに言ってきていた。

「次は君の家に泊まりに行くよ!」

絶対に嫌だ。それだけは嫌ですから。