ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ネオン・デーモン」

「ネオン・デーモン」観ました。

f:id:watanabeseijin:20170117164957j:plain

N.W.レフン監督。

モデルを目指してロサンゼルスにやって来た15歳の少女。有力なカメラマンやデザイナーに見出だされ。トントン拍子にスターへの階段を登りだそうとする彼女を。引きずり下ろそうとする女たち。けれど。
彼女もまた、ただ者では無かった。
彼女の魅力であった純粋さが。次第に邪悪なモノへと変わっていって。

エル・ファニング主演。

「これは…好き嫌いがはっきりしそうな…」映画鑑賞後。歯切れが悪くなる当方。「予告は凄い良かったんやけれど」

当方ですか…嫌いではないけれど…「昔はこういうの、よく見掛けたなあ~。単館マニアック枠で」という…おいちゃんになった当方にはマッチしない感じというか。

目の前の作品をどうこう言う時に、他の作品を持ち出してくるのは…お行儀の良い事ではありませんが…当方の中での蜷川実花映画的な作品。

「センセーショナルな題材で。極彩色でインパクトを付けて。絵的にも音楽もノリノリなんやけれど。薄っぺらい」

エル・ファニング(長いので勝手ながら以降エルと省略させて頂きます)起用が意外と諸刃の刃なのか。

確かに可愛いし、段々擦れていくいくのも様にはなっていたんですけれど。絵的には。
ちょっと、年齢制限なのか彼女サイドの意向なのか…守られすぎていて、説得力が無い。

「彼女は逸材だ」エルを見た、所謂「えらい大人たち」は軒並みそう言うんですがね。「うん。だってエルやからな」としか言いようがない当方。

あくまでも商品を引き立てる為。マネキン的な要素が第一条件で。個性は邪魔でしかない。そうして画一的になっていくモデルたち。それを目にし過ぎて飽きている「えらい大人たち」そこに現れた、モデル体型のファニーフェイス。いかにも純粋そうな子供。

その実力を見せろと。

あの。「新人なんて撮らない」と言われていたカメラマンとの、最高の撮影体験。「服を脱げ。全部脱げ」(あ~ベタやなあ。そうくると思ったよ)ペイントされ、撮影が開始。と思ったら暗転。「最高だったわ!」頬を上気させてはしゃぎながらスタジオを後にするエル。ちょっと待てと。

勿論、当方はエルの裸なんざ見たくありませんよ。ただ。その「最高だった」撮影現場はどうやったんやと。その気難しいけれど天才なカメラマンは。一体彼女の何を見て、どんな可能性を感じてどう表現したんだと。それをはっきり見せないと。観客には彼女の魅力は伝わらんやろう。

話が前後するんですが。序盤に「恐らくSMショー的なモノを、目を輝かせて見る女たち」みたいなシーンもありましたが。あれも実際のショーに関しては初めに縄で縛られた人が映るだけで。あとはただひたすら顔を見合わせて笑ったり喜ぶ女たちが流れたんですが。あの時から当方の中にもやもやがくすぶり出しましたね。「そのショーの全貌は見せなくて良いけれど。そのショーの凄さは全く伝わってきていないよ!」大体、日本の縄師の方とかはどう思うか…実際見た事無いですけれど。ショーレベルとか、芸術的らしいですし。

つまりは、所謂日本映画でアイドルを使う時にありがちな「朝チュン」(ベットシーンなどでそう匂わせて、だんだんぼやけて暗転。朝になっていて鳥の声で目覚める二人。事後っぽい雰囲気)的な演出が多かったように思ったんですね。

観ている方にはいまいち分からん、イノセントな魅力によって「えらい大人」に気に入られて。モデル界の入り口に立ったエル。これからの驀進していくのであろう、彼女のこれから。

成功体験が。エルの中にあった邪悪な心を引き出していく。

「うん。というか調子乗っちゃったんやね」
「私は知っていた。自分が美しいという事を。これで生きていけると」浅はかだな~。若さって恐ろしい。思っていても言ってはいけないで、それ。聞いてる人によっては癇に障るし。

出る杭は打たれる。

案の定。モデルたちが。そしてあの人が。エルを引きずり下ろそうと、牙を剥いて襲ってくる。そりゃそうやろう。彼女たちはある意味、あの山猫なんやから。

この作品の少女に関しては、邪悪というか…性格の悪さが引き出されていったんやなあとしか見えなかった当方。「純粋な少女が無意識に持つ邪悪とか禍々しいとか。それを表現できていたのは『害虫』『好きだ』時代の宮崎あおいぐらいだよ!」

そこからはもう、どんどんアートで禍々しい絵面の連続。まあ、元々がそういう「美しい映像を眺める」作品だと当方は早めに判断したので。中身がなくともそんなもんだと。あれこれ考えず。

理詰めでストーリーを詰めていったら、この作品のビジュアルが崩れる。だからどちらのバランスを取ったのかという結果で。

まあ。あれですわ。当方の言う『オサレなバーで無音で流れていそうな映像映画』オサレバージャンルの最新作。

ただ。映画が終わった後、若いカップルを目にしてしまい。

「どっちが誘ったんだ。そして今日これから、二人は大丈夫か」思わず心配してしまった当方。

f:id:watanabeseijin:20170118002408j:plain