ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「アズミ・ハルコは行方不明」

「アズミ・ハルコは行方不明」観ました。

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山内マリコの同名小説の映画化。

5月のある夜に失踪した28歳OLの安曇春子。
ふらふらと男に依存する20歳の木南愛菜。
男だけを襲う、女子高生のギャング集団。
交わるんだか交わらないんだか。そんな三者の生き様を描いた作品。

何かこれ、予告が凄く面白そうだったんですよね。それで、観に行ってきました。

「このパターン…当方は知っている…『渇き』案件だ」
「渇き」役所広司の顔面アップなど大スクリーンでは迫力のありすぎた、あの大爆発映画…劇場が明るくなった後皆が無言になった。あの。


「ちょっと…思っていたんと違う…。」

それは当方がうら若き女性では無いからだと思います。
当方は老いた、ロッキングチェアに座って、文句を言いながら延々とゆすっているだけのおいちゃんですから。

「もう若くない」と言われ始める27歳。(27歳は若いですよ)ぱっとしない毎日。小さな会社で、明らかに働いていない無能上司からの「女ってのは」という偏見パワハラを受け続ける日々。実家は辛気臭く、どこに居ても居心地が悪い。そんな地元生活。

20歳。何も考えていなくて。水商売とアクセサリーショップ店員。一見誰とでも仲良く騒いでいるようで。女友達なんて居なくて。男とはすぐに寝てしまう。

少女とかいうファンタジー生物ではもう無い。でも、一足飛びに大人にはならない。女子高生は無敵。
女子高生たちは群れを成し。男を襲う。それは「男であるというだけで、問答無用にぼこぼこにする」という理不尽なもの。

28歳になった春子の失踪するまでの日々と。春子が失踪した後、町の掲示板に貼られた「安曇春子尋ね人ポスター」をグラフティーアートとして拡散しまくった二人の男とつるんでいた愛菜。そしてずっと活動し続けている、女子高生ギャング集団。

この三者の時系列がもう。ずっとシャッフルし続けるんですね。

「しかし、蒼井優。「オーバー・フェンス」と続いたからか。この「地方都市に住む、妙齢の不安定女子」の既視感。板に付いているな~」

そしてよくトイレットペーパーが切れる家だなあと。当方も長く実家に生息していましたが。当方の宅だけだったんでしょうか?母親っていうのは「何かが安い日」という時にこの手の日常消耗品を買う傾向があるので、トイレットペーパーのみが夜に切れるなんて無かったですね。なんて、それはさておいて。

家族に頼まれて。トイレットペーパーを買いにドラッグストアに行って。そこで再会する幼馴染み。

特に甘く盛り上がる訳でも無く。でも何となく距離は縮まって。セックスし。互いの孤独を満たしていって。穏やかで。満たされていく心…のはずが。


成人式で再会した同級生。そこから一気に加速して「付き合っている感じ」の20歳カップル。

「というか!高畑充希のはっちゃけ感よ!」

役柄的にも鬱々としがちな蒼井優とは全く正反対。もう「居る居る。こういう頭悪そうな空っぽギャル」全開。下品な言葉使い。緩すぎる頭と貞操観念。結局は男に依存して鬱陶しい。(顔が可愛いからアリ)リアル過ぎて…NHK朝ドラ女優なんて肩書きを叩き割っているその姿に、好感度が急上昇しまくった当方。完全に主役を食う勢い。

言ってる事もコロコロ変わって。彼氏とその新しい友達は「男同士の遊び」に夢中で。そうするとすぐに二人に便乗。(何故かすぐにストリート系ファッションに完全切り替え)散々騒いで。でも男たちはちょっと怒られたら止めてしまい。ついでに自分も二人に捨てられて。


「春子が失踪するまで」の経過。「愛菜が一人で疾走するまで」の経過。
男達の勝手や態度があるあるで。その積み重ねが結構なストレスになってくる。

「お互いに心を寄せていたと思っていたけれど。ただ相手が弱っている時に都合よく慰めていただけの存在だった」
「男二人で仲良くなって。途端に自分は切り捨てられた」「男だけでつるむ」
「女は30になると終わりという言葉の暴力」「女は能力が低い、だから給料も安いという管理職の考え方」
「本命が現れたら、ポイ捨てされる」「無かった事にされる」「キレられる」「無視される」「あの睦まじい日々は何だったのか」

「そもそも、自分は本気で愛されていない」

何も疑う事の無かった子供の頃。少女のままで。そのままだと思っていた。まさか。自分がこんな人生を送る事になるとは。

誰からも愛し、愛されて…とはいかなくても。少なくとも誰かには愛されて。そう思っていたのに。何故自分を愛してくれない。認めてくれない。


散々黙って受け止め続けた、男たちの「無邪気な暴力」を。最大のダメージを与える形で返した先人。でも、彼女の様な手段はレアケースでしかない。

その、たまりにたまったフラストレーションの爆発。を暗喩するものが「女子高生ギャング集団」であったのかなあと思う当方。

男たちに反撃など与えさせない。いきなりの先手。男でありながら弱い相手にやられるという屈辱。それは…形は違えど、長きに渡って男たちから受け続けた暴力に対する反撃。


「そんな風に考えるしか無いなあ~」ロッキングチェアーを前後に揺らしながらぼやく当方。

ちょっと時系列がちゃかちゃか動きすぎかと。登場人物の会話とかはリアルそのものなんですが…如何せんとっ散らかってしまって、下手したら「一体何を言いたかったのか」と思われかねないかなあと思う当方。

結局、あの女子高生ギャング集団の存在がふわふわし過ぎていて…。


結論も含め。何だかしまらんなあ~多分当方が老いたからやろうなあ~とともやもやしながら。劇場を後にしました。