ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ガール・オン・ザ・トレイン」

「ガール・オン・ザ・トレイン」観ました。

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電車に乗る主人公の女性。どうやらこの電車は彼女にとっての通勤電車らしい。車窓からの景色を眺める彼女。
彼女が必ずチェックする一軒家。そこに住む若い夫婦。二人の生活を想像する彼女。

これだけなら、電車通勤あるあるなんですが。

「この一軒家は、かつて彼女が別れた夫と住んでいた家。夫は今でもその家に住んで。新しい家庭を築いている。その夫婦の様子を毎日車窓から眺める主人公」

おっかねえええ。それだけでもアンタッチャブルな案件ですが。

結婚生活中から。アルコールに溺れていった彼女。悲しかな、現在は立派なアルコール依存症

己をセーブ出来ず。酔っては元夫に連絡するという、悲しいストーキング行為。周囲の目も冷たく。

ある日。血だらけで目を覚ます彼女。そして、元夫の家の隣家の女が行方不明になったという報道を目にする。すぐさま彼女の元に現れる警察。
その隣家の女が行方不明になる前、現場近くで目撃された彼女。でも酔って記憶の無い彼女には何も説明が出来ず。

一体あの日。何があったのか?元夫恋しさ故、憎い現在の妻と間違えて隣家の女に危害を加えたのか?まさか…殺したのか?

彼女自身が説明できない中、どんどん容疑者としてマークされていって…。


「酒飲みにキツい映画…」涙目の当方。


「飲んで~飲んで~飲まれて~飲んで~飲んで~飲み潰れて眠るまで~飲んで~」そんな酔いどれ当方にとって。身を切るような厳しいあれこれで一杯。息もだえだえになる作品。


「て言うかな。記憶無くすまで飲むなよ」

夕日の差し込む取り調べ室で。下戸ポリスの声が聞こえる。震える当方の声。「分かっていますよ」「いや、分かっていない。そんなになるまで酔っぱらうって事のみっともなさ。自覚しなさいよ」「分かってる。でもな…どうしても酔わなやってやれん事があるんや。しんどい気持ちをぶつけられるんは…酒だけなんや…。」「噓泣きは止めて貰えますか。大体、生きていてしんどいのは貴方だけじゃないでしょうが。そんなのは弱虫の戯言ですよ」「…うわあああああああ。殺せ!当方を殺してくれえええ!!殺してえええ!!!」

辛い…酒飲みと下戸の間にある溝の深さ。決して交わる事の無い、真っ黒な奈落。


すっかりアルコール依存性で廃人寸前の主人公と。新しく妻の座に収まった元愛人。その子供のベビーシッターで、行方不明になった元夫の隣家の女。

その3人の女の視点。時系列を前後しながら。物語は進んでいく。

子供が欲しかった。でも出来なかった事からアルコールに溺れだした主人公。この夫婦の家を仲介した不動産業者であった元愛人。いわくありげな少女時代を送った隣家の女。

そして、話のキーとなる、カウンセラー。隣家の夫。そして元夫。3人の男達。

「元夫…。どうして主人公はそんなに依存するのか?どういう魅力が?マイホームを買う為に知り合った不動産屋の女と出来て、挙句結婚ていうのもアレやけれど。普通、そのマイホームに新しい女と住むかね?それとも、この国ではそれはよくある事なのかね?」おかしくないか?その神経。「そしてそんな危ない元妻からの連絡は拾わないように出来るやろう。着信拒否設定とかさ。警察に言うとかさ」一応言い訳はしていましたが…納得しかねる。

「面倒臭えええ。という隣家の女のメンヘラサクセスストーリーを延々聞かされるという(いや、そういう大変なお仕事なんだとは理解しています。…お疲れ様です)カウンセラー。ちょいちょい仕掛けられるハニートラップ。という名の、とんだ地雷。一筋縄ではいかない隣家の女。そしてその夫。DVスレスレ。


「犯人はこの中に居る!」

当方の中の、蝶ネクタイをした眼鏡少年や金田一家のご子息はそう言ってるし、そういう話でしたが。

「これ…なんだかんだ言って、この主人公の彼女やったら悲しすぎるけれど…サイコな感じも出せるな」なんて思っていた当方。

流石に「犯人はさあ~」なんて続けませんので、話の先はこれ以上は書きませんけれども。

「うん。そうやろうな」(真顔)映画館で頷いた当方。結構凡庸な展開。現実世界では穏やかに受け入れた最後。ですが…。



「酒飲みを馬鹿にするなああああああああああ!」

もうすっかり夜のとばりが落ちた取り調べ室で。他の下戸ポリスに取り押さえられながらも、椅子を蹴り倒し、机をひっくり返そうとする当方。大暴れ。

酒を飲む奴は愚かだと。善悪の判断もつかない、誰からも信用されない。

「いい加減にしろよ」「俺に抱かれようと思ったんだろ?誰がお前みたいな酒飲みのクズと!!」作中の彼女への発言のひどさ。膝を折って泣きたい言われ様。

(まあ。確かに彼女の飲み方は怖かったですけれどね。でっかいマイボトルにリキュール詰め替えて、ストローで飲むって。当方の父親は「酒をストローで飲むな」とよく言ってましたし…あれ、凄い酔うんですよ。大体、人目を気にして入れ物を移し替えて酒を飲むという行為自体が依存症。流石に当方も新幹線とか長距離移動で遊びに行く時以外には社内で酒は飲みませんし。後、そんな彼女の凄い所は二日酔いになっていなかったという事。流石にあんな飲み方をずっと続けたら胃も肝臓もやられますけれども)


そこまでドン底やった彼女が。浮き上がれる場所を見つけた。光が差し込んだ。


「彼女にとって、それが新しい朝でありますように…」

未だ暗闇の取り調べ室から。酒飲み当方はひっそりとエールを送りたい。そんな作品でした。