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ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「淵に立つ」

「淵に立つ」観ました。

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深田晃司監督作品。
昨年年末の「さようなら」は、正直当方はいまいちでしたが。

町工場を営む夫婦と、その一人娘。
ギクシャクしながらも、かろうじて家族という形態を保っていた三人。
そこに現れた、一人の男。
夫の古い知り合いだというその男は。家族にとんでもない爪痕を残し。

そして8年後。

「ああこれは。当方の大好きな奴です。不穏な。」

不穏な作品。

一見、怪しいのは浅野忠信

お久しぶりに現れた腐れ縁。犯罪を犯し。罪を償い、出所したばかり。どこかで働くつてはあるみたいだけれど。「それまでの間、働かせてもらえないか?」断れない主人公。何故?何故断れないのか?

また…それが聞けない、壊れた夫婦。

「何でいきなりこの人を雇う事になってんの?」「誰?」

それが聞けない。冷めた夫婦。

不穏で、怪しくて、壊れそうなのはこの夫婦。

いきなり見知らぬ男が。夫が「俺の古い知り合いだから。住み込みでよろしく」と言って、それが成立する家庭。

夫婦は余所余所しく敬語で会話し。同じ職場でありながら必要最低限しか話さない。夫婦を繋ぐのは一人の娘だけ。正に「子はかすがい」

思いがけなく、家族に潜り込んだ男は家族を侵食し。そして壊していく。


「本当に、彼が家族を壊したんだろうか」

8年後。かろうじて家族の形態を保っていた、その家族。その「絆」の実態。

かつて。二人の間に交わされたのであろう愛情。実際に、愛故にセックスして産まれたはずの娘。でも二人の間に最早愛情は無い。

子はかすがい。冷めきった二人を、かろうじて繋げたのであろう幼い娘。

とある不幸な事件をきっかけに、ある意味「永遠に幼い娘」になってしまった娘。


「もしかしたら。彼は壊したのでは無く。家族を再生したのではないか」


恐らく一生。誰かの世話になるしかない娘。今時分は、自分たちが。というか自分が世話をするしかない娘。

「病は何かの罰ですか」という系統の考え方に触れた事は。当方は何回もありますが。

「所謂、かつての成人病のように、生活習慣故になる病気も数多あるけれども。例えば先天性は、例えば癌と言われる悪性疾患は。それに罹患する人は、何かの得を積まなかった人だと言えるのですか?」

「私は。癌になった」「ダウン症だ」「白血病だ」「精神を病んだ」「糖尿病だ」「膠原病だ」「腎臓病だ」「心臓が止まった」「胃に」「腸に」「穴が開いた」「失明した」「突然難聴になった」「何もかも怖くなった」「花粉症になった」「水虫になった」まだまだある。まだまだある、数多の病気は。何かの罰ですか?

当方ははっきり言える。「病は何かの罰ではない」絶対に無い。絶対に無い。そう言ってきた。


でも。誰かがきちんと「管理」しなければ。死んでしまう病もある。

それを。恐らくこんな御託をこねる暇など無く。人から見たらいくらでも突っ込まれながら、それでも頑張ってきた母が居る。

「俺たちはこういう状態を経て夫婦になった」

何らかの病を間にして。そうして成立したのだと。
どんなに死んだ夫婦間であろうと、絶対に言われたくない言葉。

加えて知りたくもなかった過去。こんな奴とは一緒の空気も吸いたくない。なのに。

結局は同じ目的には向かわざるを得ない…だって腹立たしいけれども「家族」だったから。


「淵に立つ」という題名がそのまままの意味合いであるのならば、確かにどこかの崖ぷっちに立ちっぱなしであったこの家族。

家族という形態から。

夫婦という形態から。

愛し合う二人という形態から。

そして。誰も他人がジャッジ出来ない「家族」という形態から。


同じ目標に対して走るのは。最早何の答え合わせなのか。


最後に。当方からのしょうもないチャチャ。

「本当の潔癖性は、固形石鹸を使わないぜ」おそらく。


夫の古館寛治がねえ。大好きなんですよ。「受難」も凄く良くて。でも筒井真理子が。凄い良かったですね。

「あのむしゃぶりつきたくなるビジュアルから。しっかりおばちゃんのお尻に仕上げた、そのリアリティー」

馬鹿言ってんじゃないの。ふざけんなと思いながら。どこかで不安になる、己の罪。そのせいだと言われたら怖くて。そしてその甘さも忘れられなくて。

キリスト教徒だとか。プロテスタントだとか。その詳細は当方は全く分かりませんが。

「この事態が己の罪」と思う事と、夫がぬけぬけとそれを言った事と。これから抜け出せない永遠と。突き詰めたい原因と。

「恐らくこのままなら幸せ」

8年前と比較して。全く様相の変わった、そのビジュアルに。

多分誰も目を覚まさなければ幸せなのにと、切なくなった当方…。