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ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「七人の侍」

午前十時の映画祭「七人の侍」観ました。

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「1954年公開。黒澤明監督作品。三船敏郎志村喬主演。言わずと知れた日本映画の超名作を。4Kで再現!あの名作を!まさかのスクリーンで!」

おそらく、今回の午前十時の映画祭の目玉作品を。

有難くも、しっかりと映画館で鑑賞させて頂きました。

実は…お恥ずかしい話ですが。黒澤明作品には全く明るくない当方。(きちんと観ているのは「生きる」くらいですか)というのも。


「当方の幼少期に於ける、二大トラウマ映画作品」に黒澤明の「夢」があるからですよ。

一つ。某みかん県にある、最大哺乳類博物館。その他水族館系で見た巨大海洋生物。正直グロ。
それと同じ時期にテレビのロードショーで観た「巨大イカの逆襲」
歳を重ねた現在にも渡る、当方の「巨大海洋生物恐怖症」の一因となった作品。(最近公開となり。非常に高評価の「レッドタートル」も、何が映るかと思うとスルーせざるを得なかった当方。

そして。黒澤明監督作品「夢」
今回。この感想文を書くに当たって、この作品も少し調べようとしましたがね…。やっぱり駄目。あの「顔の青い日本兵」「狐の嫁入り」「お雛様」の画像に、震えて画面を閉じた当方。(気になる方は、お手持ちのデバイスでお調べ下さい)当方の幼少期、よく何曜日かのロードショーでやっていたんですがね。あれは年端もいかない子供が見たら怯えてしまう代物ですよ。

後もう一つ。当方がそう思う理由。

当方の住む、田舎の田園都市。その秋祭り。祭り事体は何の変哲もない代物なんですが。

「祭りの日。日付が変わったばかりから丑三つ時。神社の周辺地域を、独特のリズムを奏でながら回って来る。今日は祭りだと知らせる太鼓囃子。ふれ太鼓」

真夜中ですよ。本当に。真夜中の3時とかに、法被を着た男たちが提灯片手に。太鼓叩いて。笛を吹いて。何かお囃子を立てながら家の前を通過。これは怖い。正直、悪夢としか思えない。(結構な騒ぎなんで寝ていても目が覚めます…実は今年もありました)

このふれ太鼓集団が。黒澤明の「夢」のワンシーンを観ていると、そのシンクロ加減に震えが止まらなくなるんです。


というのもあって。
そして単純に黒澤明監督作品は現在では映画館で上映していないのもあって。
触れてこなかったのですが。

「それで映画部を自称するな!」という自戒も込めて。満を持しての鑑賞と相成りました。

1586年。戦国時代。
皆が苦しかった時代。秋の収穫が終わったら、この村を襲撃しようと相談していた野武士の会話を聞いてしまった百姓。このままでは村を焼かれると、侍を雇うことに。「この規模の村を守るには7人は侍がいるぞ」という言葉どおり、何とか7人の侍をかき集め。
侍と百姓との交流。そして野武士の襲撃。その数何と40人。
果たして7人の侍は?百姓たちは?己たちの村を守る事が出来るのか?

という超シンプルなストーリー基盤。

そこに付随する、黒澤明監督論も、役者論も。その他数多の蘊蓄も。当方はそれを語るには余りにも浅瀬の人間なんで。

「知らない事を知ったような顔をして語るのは恥ずかしい」という持論もありますので。知ったかぶりはしません。

単純に。単純に「この作品を初めて観ました感想」を散文的にただ書かせて頂きます。
(去年の「マッドマックス 怒りのデスロード」方式)

☆上映時間
「207分て。インド映画か」約3時間半。当方の観た映画館では休憩を10分挟んでの上映。「午前十時の~」なんで、終了したら14時前でした。
まあ。実際にはそんなに長時間だとは体感しませんでしたね。前半の話はほぼ「侍探し」に費やしていましたが。「無駄やなあ」と思うシーンはほぼ皆無。

10分休憩終了、場内が暗くなる頃に、足の悪い年配の方が少し遅れて席に付かれた姿が気になりましたが…「でも、劇場には入れている!スクリーンは観れているはず!そしてこのお年なら、何度もこの映画を観ているはず!」己に言い聞かせる当方。

☆4K
1954年版。白黒なのはいいとして。随分画像が荒くなっている事。音声の聞き取りが若干難ありとは聞いていましたが。
当方の観た映画館は4K対応ではありませんでしたが。画像はクリアに魅せていました。音声については…確かに初めは「聞き取りにくいかなあ」と感じましたが。結局はヒアリングってフィーリングでまあまあカバーもされるんですよね。

そんなに苦しいと思うこともなく。少なくともお話の内容が追えなくなるなんて事はありませんでした。

☆衣装
4Kのクリア画像問題に付随するのか。気になる「三船敏郎の露出過多」

何?この時代って「裸に鎧」なの?守るのは頭と胴体だけなの?
困惑するほどのぷりぷりお尻のオンパレード。三船敏郎だけじゃないですけれどね。画面にちらほら映る「裸に鎧」ファッション。
森や林や田畑を掛け抜けるには、余りにも無防備な…もしかして。もしかして「ワイルドだろう~」ってやつなんですか?うえ~。

そんなおふざけはいいとして。

これがカラーなら粗が出たのかは分かりませんが。他の侍や。百姓や。野武士なども。いい感じに「リアルに汚れた出で立ちをしているなあ」と思った当方。
衣装に限りませんが。昨今の時代劇の「全てが小奇麗」という非リアリティーさにやるせなさを感じることを思えば。
リアルに汚い百姓たち。掘っ建て小屋。戦いに寄ってボロボロになっていく侍たちと皆。
「時代劇はそうこないと」頷く当方。

☆7人の侍
「あの侍達の中で、誰が一番好きですか?」

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恐らく。もう無限に交わされたこのテーマで。「菊千代…重要な狂言回しである事は認識しているけれど…やっぱりちょっと鬱陶しい」と思う事も正直ありましたが。

「でも…!皆好き!誰も嫌いになんてなれないよ!」とぶりっ子当方は言いますが。

「島田勘兵衛か久蔵か…悩むな。」

皆を纏める求心力。そして采配。皆を率いるリーダー。その厳格過ぎない、どこかチャーミングでもある。だけどやっぱり自分はリーダーであると自覚している。そんな勘兵衛か。

「侍とは」「男とは」を。寡黙に。ただ黙って背中で魅せてくる「久蔵」その渋さに。

「駄目!どっちを好きかなんて!あたい決められない!」もじもじする田舎娘当方。

7人の侍。侍メンバーは本当に誰もが魅力的で。憎めなくて。

百姓の利吉も好きですよ。秘めたる苦悩。その爆発する様。爺様の一筋縄でいかなそうなブラック爺ぶりも。

あ。唯一嫌いな人物が居ました。「侍が来たら娘をたぶらかされる」と異常に心配し、暴挙に出た万蔵。
あいつに関しては一ミリも好ましく思える要素がありませんでした。

☆野武士との戦い
40人の野武士との戦い。途中で端折る事も無く。手を変え品を変え。戦の数日を描ききる。

悲しいかな、やっぱり無傷では済まなくて。相手も決死の覚悟で向かってくる。これは遊びではなくて。生きるか死ぬかの戦さで。
奪われる仲間。

「でも。野武士(野伏し)にまで落ちた彼らは…一体何故こんな事になったのか。その悲哀は…」なんてことを、今日日のテレビドラマや前後編映画では描いてしましそうですが。これはこれで作品に深みを与えるかとっ散らかるかは表裏一体。

この作品では「野武士=圧倒的な悪」として扱われていましたので。彼らが命を落とそうともただ人数が減ったとカウントされるだけ。

これはあくまでも「百姓と侍VS野武士」で「百姓と侍」目線ですが。

「結局、こうやって食料を奪ったり、奪われたりする時代の悲しさよ…」しみじみする当方。恐らく現代ならば。そういう時代背景を踏まえそうですが。
「そうやって流浪しながら人々から生活を奪う輩」「傷付き、逃げ惑う人々」「生まれる憎しみ。やるせない怒り」

「いやいや。あくまでもそこはエンターテイメントに仕上げてあるから。だからカラッとしているようで、ぐんと重みを持つシーンが生まれるんだよ」そんな声もありそうですが。

「この赤ん坊は…俺だ!」

狂犬振りを見せていた菊千代の、その叫び。

☆侍と百姓
「俺たちは勝ったんじゃない。勝ったのは…百姓だ」

百姓たちは決して、愚鈍で、純粋で、弱弱しい人間ではない。
己らが生き延びる為には。侍という用心棒を雇い、そいつらに村を守らせる。

守って貰う為に弱いふりをし、貧しいふりをする。徒党を組む。…そして、自分達より弱い相手には容赦しない。

そして、一番大切なのは、村の暮らし。

代表的な案件だと当方が思ったのは「村の娘。志乃」

侍の一人と恋に落ち。一世一代の恋愛は村中に露呈(悪夢)

でも。結局、彼女は戦が終わると村に戻ってしまう。

戦によって傷付いたのは皆同じ。百姓だって、侍だって。失った命はもう戻らない。でも。

そこにセンチメンタルになるのは侍。強く立ち上がるのが百姓。

多くの血が流れた。色んなものを失った。でも、自分たちはまた春が来たら新しい苗を植える。その生き物が生まれるサイクルを知っている。
人数は減った。でもまた。少しずつ仲間は増える。
心の傷は消えないけれど。いつか時間が癒してくれる。だから感情にしがみつかない。
終わったことは終わったこと。戦は。非日常は終わった。またいつもの日々を重ねていく。そして「村」というコミュニティーは生き続けていく。

一時交わった、侍と百姓の気持ち。でもそれは永遠ではない

☆終わりに
何てことをつらつら感じたり、思ったりしていたのですが。
かなりまとまらないまま、長文になってしまっているので。もうこの辺りで止めますが。

「兎に角!兎に角!映画館でやっているこんなチャンスなんやから!これは絶対にスクリーンで観るべき作品!(午前十時の映画祭なら1100円やしな!)」

どんな感想を持とうとも、当方のように高尚じゃなくても。そんなの個人の自由なんやから!

声を大にしてお薦めしたい作品でした。


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