ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「リトル・ボーイ 小さなボクと戦争」

「リトル・ボーイ 小さなボクと戦争」観ました。


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第二次世界大戦リトルボーイ

「日本人は、本当に原爆については怒ってくるよなあ。」

夏。酒を飲みながら。
当方の知る、面倒なアイデンティティーをお持ちな人物が何かの流れで言った言葉。

「そりゃあそうやろう。某の『原爆投下によって戦争を終わらせたじゃないか』という考え方には虫酸が走る。だって大量に人間を殺し、環境を破壊し、生態系に影響を与える兵器なんて…。(どちらにしても、もう日本は負ける所やったのに。呈のいい実験やないか…。)」

そこからは侃々諤々ではなく、喧々ごうごうになる流れ…にはならず、互いに地雷を踏まぬようさらりと逃げた訳ですが。

「このタイトルの意味。」

第二次世界大戦カルフォルニア。小さな海辺の村。そこに住む8歳の少年、ペッパー。

ペッパーは村に住む同じくらいの子供達の間でもひときわ小さく、いじめっこ達からかわれていた。

「小さい少年だからリトル・ボーイ」

父親、母親、兄、ペッパーの四人家族。自動車整備の店を構え。
仲良く暮らしていたが、扁平足で入隊試験を落ちた兄に代わり、父親が出兵。

父親大好きなペッパーは、父親奪還大作戦として毎日遠くに向かって念を送っていた。

「念…?」

父親とペッパーが大好きな奇術師。(手品師)二人でよく見たそのマジックショーで。父親が居なくとも見に行った。その時。
たまたま指名され、アシスタントを務めたペッパー。「ペッパーの念の力でテーブルの上にある水入れが動いた!」という成功体験によって、すっかり自身には何らかの力があると思い込むペッパー。

「おいおい。いくら8歳とはいっても幼すぎないかペッパーの思考。」

ところで。

ペッパーの住む村には、日本人が住んでいた。

アメリカに対して忠誠があるが、時勢がら疎まれがちなその日本人、ハシモト。「ジャップ!」と叫ばれ。時には「ジャップに売る担々麺はねえ」と物を売ることを拒まれ。

ご多分に漏れず、日本人をさげずむ、兄とペッパー。

日本人宅を傷つける所を現行犯で見付かる兄弟。兄は投獄され。ペッパーは教会の司祭に呼ばれる。

ペッパーが、父親を思い念を送っていることに絡め、司祭はキリスト教に伝わる古いカードを渡す。

そこには6つの行動が記されていて。「これを全てクリアしたら、父親が戻ってくるよ」
ただし。と司祭が7つ目に追加した項目それは「ハシモトに親切を」であった。


長い。
あらすじの取っ掛かりまでが、文章にしたら長い長い。

そしてつくづく思う。
「ペッパーの純粋さ…怖いな。」何故拒まない。疑わない。

渋々ながらもハシモトの所に通い始めるペッパー。
また、ハシモトの取っつきにくさ。初めはギクシャクする二人。
(でもな~。そりゃそうやろう。只でさえ、町で浮いた扱いを受けている所に白人の少年がto do リスト片手に嫌々現れたら。何事かと警戒するよ)

しかし。徐々にはみ出し者の二人に芽生える友情。

ハシモトの助けもあって、ペッパーはリストの項目をクリアしていくが。

「ハシモト」というキャラクター。
日本で生まれた日本人。日本人の妻を持って。夫婦で渡米した。
そして長くなったアメリカでの生活。最早自分の拠点はアメリカであり、アメリカを愛している。
かといって、日本を懐かしむ気持ちもある。日本の文化や精神も受け継いでいる。

そんな人物に「日本人」だの「アメリカナイズ」だのを押し付けるナンセンス。

「でも。「ハシモト」が日本に帰国したとしても。今度は日本人が彼を異物扱いするんやろうな…。」

「聞いた事が無いから推測でしかないけれど。あの時代に、もしアメリカ人が日本の片田舎に生活していたとしたら。もっとえらい目に合わされそうやしな。」

どこに居ようが「ハシモト」として誇り高く生きてきた。何ら後ろ指指される事などしていない。なのに、会ったこともない人々から憎まれる。

「ああもう。本当に戦争の愚だよ。」

もし愛する者を。家族を。傷付け、奪われ。挙げ句殺されたら?
確かにそうした相手は憎んでも憎みきれない。

「何故人を殺してはいけないのですか?」

その最強のタブーを、踏み越える動機。正直当方はそれを理解できる。でも。

「でもそれはあくまでも個人」

「あの集団は」「あの人種は」「あの宗教は」愚かだと。
そうやって、憎しみの対象を広げて攻撃する事は、最早違う。
そして「やりやがったな!」とやられたらやりかえし。不毛な輪。ぐるぐる回る。止まらない輪。何故こんな事になったのかも分からなくなってくるけれど、回る事は止められなくて。へとへとで。疲れて。苛々して。

「結局、よりぼろぼろになったものが崩れ落ちて負けるだけなんだな。勝ったものもへとへとで。誰も満ち足りない。」

ペッパーはとある奇跡を起こした。

町の皆がそれを目撃し、一目置かれるペッパー。

そしてもう一つの奇跡。町の時計が指した時間。

「やったああ。やっと戦争が終わるぞ!」「やったなリトル・ボーイ!」

新聞片手に盛り上る村人。走り回るペッパー。

「やっぱりそういう考え方があったんだな…。」真っ暗な気持ちになる当方。

真っ暗な場所に落とされるペッパー。

この作品が、最終的にどう着地するのか全く分かりませんでしたので。

「あ。そう来るの。」という気持ちはありましたが。

「人を憎んでも仕方ないよ」「大体、何で憎んでいるの」「相手を知れ」

そういう感じのメッセージを強く感じましたし、当時のアメリカ人の感情やら、現代の倫理観やらも交えながらも「少年」というフィルターを掛けて丁寧に描いているなあと思いました。

ちょいちょい「それは何だ」というチープさとかはありましたが。まあ…諸外国からは謎の黄金の国ジパングですから。仕方無いんですかね。

後、地味に気になったんですが。ペッパー本人の回想という形で語られたこの作品。
「発達不良としてご相談」までされていた低身長はその後どうなったのか。

「可愛いペッパー君」なんてネットでは見掛けましたが。
可愛いでは済まない、ペッパーのその後をちらっと語ってほしかった。でも。

「まあ。ペッパーどう見ても子役時代のクロエ・グレース・モレッツに激似やからな。でっかくむちむちになるやろう。」

リトル・ボーイなんて呼ばせるな。
ペッパー大きくなあれ。