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ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「DOPE/ドープ!」

「DOPE/ドープ!」観ました。


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LA。スラム街。とんだ犯罪多発地域。
90年代のヒップホップを始めとしたカルチャーオタクの主人公。
同じ趣味の仲間と計3人でつるむ日々。

オタク故に悪い奴等にいじられる主人公。
しかしそんな事にくよくよしない。だってきちんと勉強して、ハーバード大学に進学したいという夢があるから。
立派な大学を卒業して、きちんとした仕事に就いて。そういうクリーンでまっとうな人生を送りたい。
真面目に勉強にも励んだお蔭で、狙えなくはない進学への道。
でも「スラム出身の黒人が何を言ってるんだ。誰もがオバマになれる訳じゃないんだぞ」と取り合わない教師。食い下がる主人公。

そんな折。気になる女子を追いかけて。流れで参加した「ヤクの売人」の誕生日パーティー。案の定騒ぎが勃発。

何とか逃げる事に成功した主人公のリュックサックには、大量のドラッグが詰め込まれていて。

この夏。特に青春音楽モノに惹かれた当方。

あんまり素性が分からなかったこの作品。「LA版『シング・ストリート』みたいな?」という全く見当違いの感覚で観に行ってしまいました。

(余談ですが。前回の感想の「Wの悲劇」と全く同じ映画館で同日時間違いで鑑賞したこの作品。チケットを購入した際「え?『人間の証明』じゃなくて。そっち?」と思わず聞き返されてしまった当方。確かに当方の出で立ちからは全くヒップでホップなテイストは感じられませんからね。)

「客層が違う…。」キャップ率高し。若干ダボついたシャツも多い気がする…気おくれする当方。

確かに…90年代どころか、およそヒップホップに馴染まない当方。

(こいうフレーズを多方面に於いて書いている様な気がして。最近めっきり自身の浅さを思い知らされる当方。一体何のジャンルなら当方は胸を張って語れるのか…。浅瀬の生物。当方)

確かにこの作品が全編ヒップホップだのブラックソウルだのに溢れたとしたら、お手上げでした。ですが。

「何なんだよ。この『悪いやつはみんな友達』な世界」「ファーストフードに入ったら何かの抗争の流れ弾で殺される世界」「学校の入り口に防犯センサーが設けられている。(結構ザル)」「ヤクの売人て」

命の危険と終始隣り合わせ。学校でも簡単に靴を巻き上げられる。
でも何だかからっとしていて。あっけらかんと語られる主人公の世界。

「スラム街」

当方の住むたこ焼き府にも、ある意味そんなスラム街の存在が囁かれていますがね。

「冬。暖を取る為にどこからかタイヤを持って来て燃やす皆さん」「燃えろよ燃えろ」「血まみれのおっちゃんが道端で寝ている日常」「暖かいからと自販機の上で寝ている人」「拾ったものを路上に並べて売る人」「夏場の路上相撲大会。優勝者にはスイカ」

当方はその目で見た訳ではありませんので。あくまでこの場では都市伝説として書きますが。

とても考えられない底辺の世界。でも。何故かそこの話をする人の声はいつも明るいトーン。あっけらかん。

「しゃあないねよなあ。ほんまあかん事ばっかり。でもな。皆悪い奴ではないねん。性根はええ奴やねん。すっきゃねん。」

とんだ掃きだめだと眉をしかめ。「いっそ焼き払えばいいのに」と思うのは横暴。

結局はそこにも存在する、人としての営み。決して馬鹿にしてはいけない、そこに暮らす人々の実態。


黒人で。スラム街出身で。これがやっぱり今でもネックとなるあの国で。

「こんな所からは出ていってやる。這い上がってやる。絶対に自分の大切に思う相手には、安全で安心出来る暮らしをさせたい。」

でも。結局「そこ」から這い上がるには手を汚すしかない事も。綺麗ごとばかりでは済まなくて。

無理やり掴まされたドラッグの塊。捨てる訳にも、ましてや警察に持っていく訳にもいかず。「全て売りさばいてこい」無茶なミッション。


そこで主人公が「オタク」「勤勉で秀才」「オタク仲間の存在とネットワーク」が生きてくる訳ですよ。

この作品をウエットに仕上げる事はいくらでも出来た。掘り下げれば問題提起出来る点は山積しているし。でもしない。あくまでもコメディー。

なおかつ。あらゆる伏線がきちんとまとめ上げられる。

主人公の進学問題とか。身の安全とか。あの彼女の件とか。落としきれるとは思いませんでしたよ。いじめっ子の件は…何だか苦い気持ちになりましたがね。


「この主人公は。この先どんな人生を歩んで行くんやろう。きっと厳しい事も多いんやろうけれども。」

若いんやから。未来が明るいものである事を。どこかで底抜けに明るい人生である事を。

そして「スラム街」の未来も明るいものでありますようにと。そう思った作品でした。