ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「ちはやふる 上の句」

ちはやふる上の句」観ました。


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同名少女漫画の映画化。
小倉百人一首。競技カルタ部に青春を掛ける高校生達を描く。

少女漫画…読まない。アイドル映画…観ない。
汚れちまった当方の、全く「観たい映画リスト」に乗っていなかった映画。なのに。

「余りにも評判が良すぎる…中年男性に…あれか?『耳をすませば』案件か?」

制作側のターゲット層として狙っているのであろう女子中高生と、当方は当然ながら交流はありませんので。彼女らのリアクションは存じ上げませんが。

何故だか、疲れ切った男達の胸をキュンキュンさせ、下手したらその頬を涙が伝う…それが『耳をすませば

それと同じリアクション。

「あの澄み切った青春」「最早アクション映画」「ピュア」「甘くて苦い…マーマレード」

後。映画好きあるある。「映画を一日に複数本観たい!でも時間の組み合わせ的にこう組むしか…」という事情もありまして。

まあ、正直冷やかしで行った訳ですよ。

そして「何故だ!何故平日の昼間にこんなに若い女性が沢山(そしてそれはそれで疑問を呈する、数名のサラリーマン戦士も)居る!」という居心地の悪さに囲まれ鑑賞した当方は?
当方の汚れちまった心は?
何かしらの変化が?


溢れ出る、スポ根+少女漫画の世界。

汚れちまった当方は、諸手を挙げて賛同、称賛の声は上げられませんでした。

いや、文句ではありませんよ。何だか…眩しくて。

「高校生って、こんなにまっすぐなのか?そうだったか?」「そして…特に男子達のいじらしさよ!」もう目がくらむほど。

千早。太一。新。子供の時、女子1人に男子2人という旧ドリカムスタイルでつるんでいた3人。3人を強く結びつけていたのは「カルタ」
新が家族の事情で引っ越し。そのまま疎遠になった3人。
でも、千早はずっとカルタを続けていた。

そして高校生になって。再会する千早と太一。「いつまでもカルタなんてやってられない」という太一をねじ伏せ「競技カルタ部」を提案する千早。
「部活として活動するなら5人は必要」という教務に対し、行内を奔走し仲間を見つけ、設立された「競技カルタ部」。
実力も気持ちもばらついていた彼らが、練習、合宿、試合などを経て「仲間」になっていく…。

といった感じの「上の句」でしたが。(もう「下の句」公開直前ですし、ばんばんネタバレ)

「競技カルタ」たまにテレビで見たことありましたがね。あの昼前とかのニュース時間の時に。着物着て、華やかないでたちなのに…凄い取り方するなあ~と思っていました。
当方の競技カルタの認識はそれのみ。まして団体戦なんて、今回初めて知りました。

競技人口が少なそうだから?だから?「こんな設立すぐのチームが東京大会優勝とかするものなのか?」
…漫画の力?

まあ、結局は上手く話しを動かさないといけませんから。ご都合主義だなあとも思いましたが。

そして当方が諸手を挙げなかった所。太一キャラクターのブレブレ感。そして王道の少女漫画世界。

始め「げっ。あいつだ!」と千早から逃げようとした太一。「俺はサッカー部に入るんだ」とカルタ部入部を渋った太一。
千早の、カルタに対する熱意と努力の変わらなさに押され、入部…したはずの流れ。なのに。

合宿時、千早の居ない所で「お前千早が行くからあの高校入ったんだろう?やったな!」と昔馴染みにばらされる太一。キュンキュンする女子部員。
そしてどんどんかぶせる「子供の時から千早が好き」「でも千早は…」「好きだからこその卑怯」というエピソード。

千早にはツンデレ太一からの「気づいたら…いつもそばに居た」という態度で経過したらいい。でも!映画を観ている観客にもそうみせたら…太一のキャラクターがぶれるやろう!

もうそうなると太一のセンチメンタルは止まらず。「俺は千早が好き」手に入らないと悲壮感一杯。
ちょっとまてちょっとまて。

そして、この「上の句」には殆ど登場しなかった新。

福井県に引っ越した新。カルタ名人の孫で「鬼強」かった新。

はっきりと明言されないけれど千早は新がずっと好き。新たに会いたい気持ちは、千早がカルタに向かう力になった。そしてそんな千早の気持ちを知っていて苦しむ太一。離れた場所にいる新。

「会~えな~い時間が~愛~育~てるのさ。目をつぶれば~君が居る~」鼻に掛かりすぎたあの声が脳内に流れる当方。

「しゃらくさいな!!!」
そこで汚れちまった当方が吠える訳で…

胸がキュンキュンして涙する中年男性達と違う所ですよ。

無邪気で一生懸命。ある意味無神経な主人公を、何があっても好きでいてくれるハイスペック男子。でもそんな男子にはおいそれとは手に入らない主人公。主人公の見ているのはまた別の男子。そして皆でぐるぐる回る片思いの輪。主人公を巡る、男達の恋のさや当て。

「THE少女漫画の世界!!」

いや。いいんですがね。そもそも少女漫画原作なんですから。

でも。そんな主人公たちには乗り切れない当方の心を。キュンキュンどころか、鷲掴みにしてぐしゃぐしゃにした人物。「机くん」


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ガリ勉で。でも学力は2番目。しかも学年トップは太一。

明らかに他者とコミュニケーションが取れないタイプ。教室でも浮いている。というか、およそ誰とも心が通わない。
「部活としての人数合わせ」「学校からの、必ず部活に属することという規定」互いの利害関係が一致しての入部。

でも。一緒に活動し。初めて誰かに必要とされたと泣き。不器用な彼が、少しずつ心を開き、居場所を見つける、その姿。

そしてまた挫折。

もうカルタは出来ない。苦しいと叫ぶ机くん。勉強でも2番であった彼。声を掛けたのは1番の太一。
「俺だって辛い。怖い。でもやってるんだ。」
そして、無言でそっと机くんの体に手を添える仲間たち。

机くんは、もう一人ではない。

思わず嗚咽が出そうになって、タオルを口に押し当てる当方。危ない。危なすぎる。

「当方は大好きだよ!机くん!」


いやあ。冷やかしで行った割には十分な映画でした。

どちらにしても、二部作品をどちらかで終わらせる訳にはいきませんので。

少し落ち着いたら、ひっそりと「下の句」行きたいと思います。