映画部活動報告「獣は月夜に夢を見る」
「獣は月夜に夢を見る」観ました。
「『ぼくのエリ 200歳の少女』を彷彿とさせる、ノルディック・ミステリー」何とも惹かれるうたい文句。
「ぼくのエリ」を出されてはな…。もう観るしかない。
純粋で凶暴な吸血鬼。美しい獣。
見た目はただの少女と、魅せられた事で何もかもを捨てるしかない少年。
冷たさしかない雪。それが象徴する閉鎖的な環境。
弱々しい主人公。救ってくれた、無機質で強大なS。下手したら感情があるのか無いのか分からない。でも、自分だけが繋がる孤独な少女。
恋した者の弱さ。愚かさ。…甘美な酔い。結局は自分が居ないと生きていけない癖に。という弱者の強み。
そして前に見た、愚かな老人と同じ経過を辿るのであろう自分。
正直、ヒロインの女子よりも主人公の男子の方が可愛かった…。
同じ題材でやっていた「モールス」
クロエ・グレース・モレッツ主演。映画館では暗闇の中、右斜め後方の終始はあはあという息遣いに集中出来なかった当方。
「何か…何か呼吸が正常に出来ていない方が近くに居る。心不全。呼吸不全。よからぬ妄想…からの自主練習。」
モールスCGが雑なんだよ!という点からも、ノルディックミステリーびいきの当方。
もう一つ回り道しますが。この「同じ題材で比較する」と言えば「エコール」と「ミネハハ」が回避出来ない当方。
「究極のロリコン映画」と評価されたエコール。あの甘美なイメージビデオ。白い制服。揺れるリボン。具体的表現の一切無い。子供の笑い声。
成人男子の部屋から出てきたら…非常事態宣言。でも。
でも、当方は大好きなんですよ!エコールが。
…何の話を熱くしているんだか。
兎も角「映画部員として、得意分野は変態系映画であります」と名乗ってきた(リアルに名乗った事はありませんが)当方の本領発揮作品だった訳です。
「ぼくのエリを引き合いの出した所を見ると…もし座れなかったらどうしよう。」
緊張して向かった映画館。初日2回目。昼間の回上映20分前のチケット購入。そのチケットに表記された「9(人目)」の数字。安定の変態映画。
興行的にどうなのかは当方は知りませんがね。でも…知る人ぞ知る、立派な気持ち悪い、変態映画でしたよ。
(賛辞)
閉塞的な田舎町。そこに住む主人公一家。車いす生活を送る、美しく一切を語らぬ母親。その呆けた姿。母親を溺愛する父親。
街の人たちは何かを知っている。自分には何も言ってこない。でも、明らかに排他的な敵意。疎外感。
また、主人公女子の中性的な体つき。なのに医者の何だかエロい、乳回りメインの診察から始まる冒頭。
はっきりネタバレで申し訳ないんですが。まあ…女系獣家族なんですね。
母親は昔、獣と化し大暴れ。現在は薬物投与で廃人状態。その過去を知る町の人達の恐怖と疑い、憎しみの目。
町で孤立する家族…て言うか、何でずっと同じ町に住み続けるんでしょうね?
「人外は出ていけ!」そんな意味ではありません。ただ単純に…居づらいし、新天地でひっそり暮らしてはいけなかったんですかね?理解ある医者の存在?投薬コントロールの成功?だから?…うーん。
あの町の産業は漁業しか無いのか?そして水産加工しか?
魚の加工工場に就職した主人公。
またね…。この工場のギスギスした人間関係。
黙々と作業をする職員。笑えない通過儀礼。目をつけられたら終わりな陰湿なグループ。
「おたくら!曲がりなりにも魚を扱ってんだろうが!何?その魚を使った嫌がらせ!」
巨大海洋生物恐怖症の当方ではありますが。
実は動物性の食べ物(変な言い方)としてはぶっちぎりで魚好き。鳥も豚も牛も…その他の食べられる動物も、魚には及ばない。
なので、単純に魚を無駄にしたりする陰湿なグループにはムカムカしました。
体毛がやたら濃くなっている。時に押し寄せる感情の爆発。
それは獣への進化。理解ある父親と、医者の恐れた展開。そして全てを知った主人公。
狭いコミュニティで。壊れるカウントダウンと平行する恋。(恐らくは初めての実体を伴った)恋。
この手の変態映画は、最悪の歯車しか回りませんので。磐石の急降下。そして。
「あの獣の主人公。アバターっぽいなあ」
青色アバター。当方が絶対に受け入れられないビジュアルにそっくりな主人公。
「そして彼氏よ。今でこそ、ラブの力で貴方は守られるがね。…色んな意味で命懸けやぞ。貴方の人生は」
今作はどちらかと言うと「獣と代す主人公」がメインの話でしたが。
…まあ。続編があったとしたら、あの彼氏視点に話は移動するでしょうねえ。
確かに「ぼくのエリ」を彷彿とさせる。魅せられたら終わり。今は幸せかもしれないけれど。破綻したら本当の終わり。
映画としてはつまんないかもしれないけれど。
その静かな均衡が破られる悲劇を観たいと。
変態映画部門得意とする当方は、静かに待機しています…。