ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「モヒカン故郷に帰る」

「モヒカン故郷に帰る」観ました。


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松田龍平主演。脇を前田敦子柄本明もたいまさこ千葉雄大が固め。

うだつの上がらない、バンドマンの主人公。(実質ヒモ)彼女の妊娠を機に結婚を決心。久方振りに帰った故郷。
広島の離島に住む両親と、親元に何度も帰ってくる弟。
さらっと結婚の挨拶を済ませたら東京に戻るはずだった二人。なのに…突然家族を襲った「父親の大病」

どこかとぼけた、ほのぼのとした空気を纏いながら。新しく生まれる家族の形と、家族を見送る姿を描いた。

やたらと皆様の評判の宜しい「横道世之介」沖田修一監督の最新作。(横道世之介。当方も嫌いではありませんよ。ただ…当方は専門学校卒業なんで。「大学生活が懐かしい」という共感は無いんですな)

下手したら、とんだ大根役者にとられかねない松田龍平。淡々とした佇まい。決して動かない、表情。声。今回もそんな感じ。

対して柄本明。今回も暑苦しく、泥臭く、力強く「人は良いんやけれど鬱陶しい元気なおっちゃん」を演じておられました。

(…本当にね。この二人。足して2で割ったら良いのに。)

いつもの二人がいつもの演技でぶつかる中、ぐっと引き立つ脇のメンバー。

前田敦子演じる彼女。その「タマ子!」感。「もらとりあむタマ子」AKBなど全く疎くて分からない当方が「あっちゃん良いな」と思った作品。
だらだらと親に寄生して。友達は居なくて。内弁慶。どうしようもないタマ子…を彷彿とさせるキャラクター。
きっと悪い子じゃない。ただ馬鹿っぽいだけで。素直で人懐っこいし、彼氏や年長者を立てる技量もある。

突然の父親終末期告知。動揺し、隠せない家族。すぐに父親にもばれて。

慌てる弟。そして母親。

これまでも、恐らくは振り回されてきたのであろう、夫との日々。子供達も手を離れ、夫婦でにぎやかに暮らしていた。その矢先。

もたいまさこは良いなあ~本当に。(後ねえ。確かにめんつゆって万能なんですよ。)


下手したら終始しんみりとしたお涙頂戴映画になった。いくらでもその要素はあった。でも、どこかあっけらかんとした所もあって。だから安心して観ていたら、突然ぐっと胸を掴まれる。

あの吹奏楽部。中学生達。病室で友達の医者との将棋。ピザ。

「親ってさあ。死ぬんだね」

松田龍平の飄々とした佇まいこそが、主人公の心情を表す説得力。あのおにぎりはさぞしょっぱかっただろう。泣く当方。


まあ、お話を強引に進め過ぎていたかなあ~。とか。病状の進行のリアルティ―の無さとか。気になりましたけれどね…。(肺癌で末期で、酸素は少なくとも投与されるやろうし。ターミナルで在宅とはいえ痛みに対しては対処されるやろうし。何より、柄本明が元気過ぎる…)

モヒカンの主人公。ロックの象徴。アイデンティティーだと、結局最後まで主人公はモヒカンを切る事はありませんでしたが。

話が進むにつれて「切ってはいないけれどもふんわりねせる」髪型であったことも多かった主人公。

モヒカンはただ髪型の一つでしか無い。それはそうなんですが。

ふわふわと生きてきた主人公が。彼女の妊娠という「強制的に親にならざるを得ない」という事態に於いても、何だか実感が沸かないまま気持ちが彷徨っていた。そして父親の泥臭い生き様。死に様を見て。

そして親になる。

いつかモヒカンも切って。あんな日々もあったなと。どこかあの父親に似た親父に。そして両親に似た夫婦になりそうやけれども。

彼らの門出を清々しく見送る。そんな作品でした。