読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「星ガ丘ワンダーランド」

「星ガ丘ワンダーランド」観ました。


f:id:watanabeseijin:20160308204244j:plain

優しさ溢れる片田舎。そこにずっと住む主人公たち。
幼い日。ある雪の日に、自分たち家族を捨てた母親。
そして現在。立派に働く主人公たち家族の元に届く、母親の訃報。しかもこの街での自殺。

母親の死から、新たに見えてくる自分たち家族の姿。そして母親の現在の家族。

離れていった気持ちと、見つめ直す家族。見えなかった愛情。

みたいな事をやっておられました。

当方は主演の中村倫也氏についても、柳沢翔監督についても無知でして。「あ。新井浩文氏の新作」とふらっと観に行っただけで。まあ、後は邦画を観たかったという。

確かに「THE 邦画」
「悪いやつなんて居ねえな!この世界には!」という圧倒的性善説

片田舎の駅員の主人公。拾得物係がメイン業務。因みに駅に住み込み。
届けられた忘れ物、または駅員が習得した忘れ物を管理する。それも、何故か「この持ち主はこんな人かなあ~」という主人公のオリジナル脳内プロファイリングにて描かれた似顔絵のタグ付きにて。
その似顔絵がですね。「暇なのか?」というまっとうな社会人のツッコミは置いておいて。胴体から描いていくんですよ。

「当方も似顔絵で食べている訳では無いし、プロでは無いが。…しかし、顔は〇で胴体から描いていく似顔絵って異質やぞ!」ただモノでは無い主人公。

冒頭からのほのぼのエピソードの積み重ね。余りにも純朴な主人公に、猜疑心の強い当方は「サイコパスか?」とあらぬ心配をする始末。

でもね…。駅の拾得物係の温かさは、当方も十二分に知っていますよ。

まだ世の中がガラケー大多数だった時代。酔っ払い、帰宅電車で入眠。下車予定駅よりずっと先で起床した当方。
勿論終電だった為、折り返しも効かず。だらだらとタクシー乗り場まで歩き始め。そして気づく、あるべきモノの不在。

「お弁当袋が無い!!」

その小さな袋には、飲み会に遅れた仲間に電話し、そのままつい入れてしまった携帯電話が入っていた。一気に酔いが覚める当方。

終電が行った駅はもう閉まっている。少し歩いた先にある派出所に向かう当方。(まだ小難しいパスワードロックは無かった時代。携帯電話を心の荒んだ人物に回収されたらアドレス内流出があるのではという懸念)終電で終点間際の駅近くというド田舎の派出所で、明らかに当方に起こされた警察官二人。

「で。それ何が入っているの。」という低いトーンの警察官に、必死で中身を説明するアルコールフレグランスの当方。

「はい。で。お弁当と…。」と、当方の申告した内容を復唱する若い警察官に、突然「弁当に『お』は付けんでいい!」と吠えた年配の警察官。ビクつく若い警察官と当方。(以降、当方は弁当には『お』は付けないようにしています)

「紛失で機種変更する時、この紙がいるからね」と具体的な用紙を渡され、帰らされる当方。

それでどうなったと思いますかね?

酔いが覚めた当方は、帰宅後寝ないでネット検索。「GPSで携帯を探し出す」という検索方法の情報を入手。(繰り返しますが。ガラケー時代ですよ)そしてヒットした、その電車沿線の某駅。(トイレに行きたくなって途中下車していた)

翌朝。明らかに朝の忙しい時間にも関わらず、当方の必死の電話に気持ちよく対応。取りに行った際、笑顔で手渡してくれた、その背後にあった標語。「相手の立場に立った対応を」神。睡魔に倒れ掛けていたのもあって、打ちのめされる当方。

…長くなってしまいました。

つまりは、駅の拾得物係って見つけてもらえた者にとっては神なんですよ。

そこで誠実に仕事をしていた主人公。でも。そんな彼の抱える、悲しい過去。雪の日の別れ。

そして20年。自分たち家族を捨てた母親の死。久しぶりに再会する兄弟。
「この二人が兄弟か…。似ても似つかないなあ。」

f:id:watanabeseijin:20160308232727j:plain

そして向かった遺体安置室で見た、母親の現在の家族。

「ところで、何で皆さまこの町にずっと住んでいるんでしょうか?」

かつて仲良く暮らしていた家族を捨て。他の男に走った母親。そして新しく形成された家族。どちらも町に店を構えている自営業とはいえ、普通は居づらくなると思うんやけれども。
そして息子娘もずっと地元に暮らしている。勿論悪くは無いけれど…なかなか現実では無いかなあと。

そして。正直、当事者たちである親たちは作中で何一つ語る訳でも無いんで。
思い出しか無い。でもそれに十分に傷つけられ、もがいた子供たち。不憫。

「美しい思い出として繰り返しているけどさ…木村佳乃、あかんやろう。」お母さん、貴方駄目ですよ。

当方は、ごく普通の両親に愛されて育てて頂いたので。こういうご家族の事情をどうこう言えないのかもしれませんが。

たまにテレビでも見る。「かつて自分を捨てた親に会いたい」特集。
そこに対し「自分を捨てた人間には金輪際会わなくてよい」と思ってしまう当方。
勿論、当事者の方の気持ちや色んなご意見があると思いますので、勝手な持論を押し切りません。ただ、当方はそう思う。それだけで。

かつてあった優しい記憶。それはそのまま持っておけばいい。
でも。当方なら、今の自分を作ってくれた人達を大切にしたい。

皆で思い出を共有して。
でも、優しさだけで逝った者を包まなくていい。

だって。この映画に於いては、このお母さんや、大人に。子供たちが傷つけられたのは事実なんやから。

この作品は、何故かの豪華キャストで。ちょっとそれが逆に見るべきポイントが散漫になった気もしますが。

…正直、この主人公はあまりにも無表情すぎると思う当方。
そこで際立つ、市原隼人新井浩文。そして菅田将暉が。安定のあかんたれな一生懸命弟。
あの喧嘩のシーンなんて。流石ですよ。

まあ。拾得物担当だった彼が、今やっと、自分と、自分を取り囲むものの本質を見つけたのだと。

そうしてこれからは心からの表情を浮かべる事が出来る。そういう表情だったのだと考えれば。

f:id:watanabeseijin:20160308232820j:plain


あの世界にもやっと暖かな春が来るのだと思いました。