映画部活動報告「アクトレス 女たちの舞台」
「アクトレス 女たちの舞台」観ました。
大女優の主人公。
昔、若かった彼女を世に送り出したとある舞台。
その作家の訃報を聞いてすぐ、彼女は再びその舞台に立たないかとオファーされる。
それは、彼女がかつて演じた若き小悪魔では無く。それに依って破滅する、中年女性であった。
「これは。日本人なら、誰がキャスティングされるかなあ~。」
当方の、現在の年令を度外視した自由な脳内キャスティング。
若くて、スキャンダラスな。でも魅力的な演技をする女優。クロエ・グレース・モレッツに。
二階堂ふみ。蒼井優。仲里依紗。前田敦子。
大女優の付き人。表向きは凜としている主人公を支える若者。
お騒がせな若い女優と同世代で。新しい視点を持ちながら、雇い主の世代の事も傷つけない様に、冷静な言葉で表現しようとする。その半面、大女優を追い込む力もある。クリスティン・スチュワートに。
池脇千鶴。
かつては追う側であった。しかし、現在はトゥの立った大女優。
…これが、全然ピンとこないんですよ。
「ある程度知名度がしっかりした大女優。でも内面は揺らいでいる。若い時の役を覚えているが故に、中年のその女を愚かだとしか思えなくて。今の自分がそれを演じられないともがく。」
鈴木京香?天海祐希?…何か違う…。夏木マリ?40台の?近いか…。
かたせ莉乃?若干オーバーにやってくれそう…。
違うんですよ。
ジュリエット・ビノシュの「悩み」が全然、この脳内キャストでは変わってしまう。
「女」とか「大女優」とかを出しすぎて。泥々と演じそうで。
この主人公は、決して「大女優だから、堕ちていく中年女性が出来ない」んじゃ無いんですよ。
「かつて演じた若者の立場でしか、中年女性を見れないから演じられない」んですよ。
まあ。似たような事を繰り返しても何ですからね。分かりやすい例えを言うと。
当方は、全く詳しく無いんですがね。
「釣りバカ日誌で、かつてハマちゃんを演じていた西田敏行が、スーさん役に?!」(リアルな事例)
西田敏行がどんな気持ちでやっておられるのか。さっぱり分かりませんよ。毎回見ている訳でも無いし。
プロやし、きちんと見れるレベルでされているんでしょうが。
ただこれ。もし「女優」で「かつて若い方を演じた」側が「若さに破れた年配の方を演じる」となれば、そりゃあすったもんだしますよ。
鬼籍に入った原作者が執筆していた、スイスの山々を見渡す家で。
付き人と、真面目に読み合わせしながらキャラ作りをしていく主人公。
「私には無理!やっぱりどう見ても主人公は若い子やし。惨めすぎる!」
「演じていた役者もあのまま落ちぶれた。どうしてもそのイメージが離れない!」
付き人にはガンガン心中を吐露。
「若い子には勢いがあるわ。でも、冷酷。中年の方には人情味があるわ。」
付き人は、騒ぐ女優に淡々と解釈を延べ。でも、その意見は大抵がはね除けられる。
でも。主人公の女優は、決して意固地でわからず屋では無いんですよ。
「歳を取ったと考えるか。重ねたと考えるか。」
若さ故の勢いも、傲慢さも。それに依って勝ち得た名声も持っている。
でも、若さ故がいつまでも続く訳では無いし、無茶を続ける事はみっともない事も知っている。
経験を重ねる事で得たものは無限大やけれど、それは勢いも、新鮮さも失って…マンネリ化も厭わない。
いつの間にか、若者をくだらないと笑っていたり。
重ねた月日を、ただアンニュイになって溜息を付くのか。どう生かすと考えるのか。
そんな事。歳を重ねた人間は、皆分かっているんですよ。
それを、なかなかスマートに処理して進められないから、どたばたするんですよ。
優雅に見せている白鳥が、水面の下でどれだけ足を動かしているか。
付き人の彼女。主人公に振り回されて。疲弊していく彼女。
でも。付き人の彼女には悪いけれど。ああやって気持ちの落とし前を付けて行ってるんですよ。
そして若い俳優は「だって彼女は惨めじゃないの。主役は私よ。」と切り捨てる。その強さこそが、かつて若かった時の主人公の姿。
そんな若者二人。でも月日を重ねたら同じラインに来る。そして…どう思うのか。
恐らく、年代、性別。歳の重ね方に依って随分と印象の変わる作品なんだろうなと思いました。