映画部活動報告「お盆の弟」
「お盆の弟」観ました。
40歳を目前に。売れない映画監督の主人公。一人娘とはラブラブな関係なのに、妻には三下り半を突きつけられ。
大腸癌で手術を受けた兄の面倒を見ろと、ていよく別居を言い渡され。
術後人工肛門を余儀なくされた兄。
何とか社会復帰も果たしたが、居座る弟に苛立ちを抑えられず。
弟視点からのもやもやした日々を描く。
渋川清彦。
(この画像はこの映画とは関係ありません。)
「来世生まれ変わったとしたらなりたい:男性編」に、高田純次と同じく間違いなくノミネートする彼。理由?「半端無い色気。」そりゃあ、モテたいもの。
「生まれ変わって男性ならば、ヒモになって女性に食べさせて貰いたい。」
かつて飲み会でそう発言し、余多の女性を引かせた当方。…勿論、ヒモの彼等も計り知れない努力をされているんでしょうがね。知りませんがね。
兎も角「光石研と渋川清彦が兄弟って…。誰得だよ。(当方だよ‼)」というキャスティング。田中要次。そして、別れを切り出している妻に渡辺真紀子。主人公といい感じになる女性に河井青葉という胸をかきむしらんばかりのナイス面子。
そして、忘れてはいけない。親友役の岡田浩暉。
年代的に、当方はミュージシャンとして活動されていた彼も、「ナースのお仕事」等で役者活動を始めた頃も知っていますよ。そんな彼の「ああ…。すっかり良い役者さんだわ」という仕事ぶり。しみじみ。
早くのしみじみはいいとして。
もう、全編がくたびれて萎びていた当方の心にぐんぐん沁みていくんですね。
仕事が上手くいかない。後輩に抜かれていく。自分の才能は疑わしいのか。焦りつつも、リミットを定めなければいけないのか。でも、認めたくはなくて。
一方的な鬼嫁の離婚宣言。どうにか言いくるめられないかと。仕事で良い所が見せられれば、全てが好転するのではないかと。
しかし、どうにも相手の態度は強靭で。
兄も何だか上手くいっていない。
兄弟の四面楚歌な状況。
また、兄弟ならではの「身も蓋もないストレートな言葉を使って、傷口に踏み込んで来る感じ」「でも、自分の事は素直に言わない感じ」「自分が上向きな時に、相手のテンションが下がっていたら、無理矢理に(食べ物等で)上げようとする感じ」「そして、無神経にはしゃぐ感じ」
あるある。分かる。痛いくらいに分かる。
何十年来の友達だって、最早兄弟と同じ。
「何でこんなどん底の時に、息の根を止めるような正論で殺しに掛かってくるんだよ。…黙って肩を抱いて、背中をさすってくれよ‼」
(ところで。40年で初めての彼女ったって、そのままゴールインであの感じやったら…。夢の逆転ホームランやんかああ。)
まわりに何だか強く出来なくて。傷つけない様にいい人ぶって。馬鹿らしい嘘にも付き合って。…なのに、自分に吹くのは冷たい追い風ばかり。
「渋川清彦版寅さん。」
まわりは皆、幸せになって。
その橋渡しを実はしているのに報われなくて。
何て苦しい役回りなのか。
鬼嫁裕子役の渡辺真紀子。でも彼女の強さは、最近ぐずついていた当方にも、主人公と同じく前に向かせる力がありました。
て言うかね。ふわふわとやり過ごそうとしている時に、立ち止まって、目をがっちり合わせながら「聞いて貰っていいかな。あのね。」から始まるぐうの音も出ない正論。
これ言われたら「分かりました。」って、背筋伸ばすしか無いし。こういう感じで切り出されたら互いの道を進まざるを得ないと思いますよ。
覚悟を決めて(こちらとしては勝手であっても)ステップ踏んだ女性は、如何なる力も後ろに向かせる事は出来ませんよ。
でも。だから、彼女が好きだったんだろうなと。フェアで、感情的では無いし。冷静で理解している。いい女ですよ。…だからこそ、修復出来ないんですよ。
一見ほのぼのと。でも回りが皆前進した中で、何故か一人もがく事が確定した主人公。
でも。寅さんポジションって、一人にはなりませんから。
あ。二つだけ文句があるんですがね。
「人工肛門って、不随意に便が出るから、絶対ストマパウチをしているんですよ。あからさまに目立つ訳ではないけれど。ちょっと光石研のシャツ。タイト過ぎ(お腹回りが膨らんでいない)かと。そして、再建出来るかは術式によるから、全てが適応はされませんし、出来るタイプなら手術の前後で本人に説明されると思いますよ。」
「高校受験の時に、願書で教わりましたがね。(ふりがな)ってひらがなで書いていたら、ひらがなで書くんですよ。わたなべさん‼(映画作中で重要な書類にワタナベと書いていて、突っ込む当方)」
真面目に、真面目に誠実にしていたら。いつかは。いつかは幸せに。
すっかり秋の今。過ぎ去った夏を思いながら。
いつかは幸せに。