映画部活動報告「駆け込み女と駆け出し男」
「駆け込み女と駆け出し男」観ました。
「近年のチャチい時代劇を思うと…。大丈夫か?」と、不安になりながらの鑑賞。ところが。
「ああ…。久しぶりにまともな時代劇を観た。松竹、本気出したな…。」
江戸時代。実在した幕府公認の縁切り寺「東慶寺」の様々な女模様を描いた小説を、かなり盛りだくさんに盛り込んで映画化。
東慶寺の御用宿「柏屋」。そこの主人の甥っ子が、大泉洋。
たまたま同時に駆け込む事になってしまった、鉄屋の戸田恵梨香と金持ちの問屋の妾の満島ひかり。
この三人を軸として、東慶寺での暮らしと、そこに駆け込む事になった女達。
江戸時代も最早末期。江戸では倹約故に粋とされた文化達も追いやられていって…。
まず、当方が打たれたのは映像の美しさ。
最近の時代劇って、セット感がありありとしていて。画質が上がったのもあいまったのか、「明らかに嘘な家。街。」に見えるんですね。
今回、東慶寺としてロケした書写山圓教寺の佇まい。馬琴先生の御自宅。
そして、自然。
雨に打たれる庭。雨垂れでへこむ苔むした庭。
雪柳。秋の、冬の寒そうな景色。山が。川が。
「日本の美しい自然と日本の家。集落。」
問屋や宿も。撮り方なんですかね。全体的に暗いトーンが多かったのもあって、自然。
そして、役者達。
ドンピシャな配役やったんですね。確かに主人公は大泉洋しか考えられない。ああいう、飄々としたキャラクターは彼の真骨頂。
戸田恵梨香がまだああいう役をやれるのか…。という発見。
そして満島ひかり。化けていってるなあ~。と。江戸の姉さん言葉が板に付いていました。
この二人を逆転させたら、やっぱり成立しないなあと思う当方。
ただ。どちらも出来そうな女優さんは当方には一人該当していて。
池脇千鶴。
まあ、余談ですけれど。
脇のキャストも硬く固めまくっていましたね。
樹木希林。山崎努の重鎮。堤真一の男気。
陽月華の毅然とした強さ。キムラ緑子の茶目っ気。
その他のキャストも濃いこと。
時代劇に限らず、日本映画って淡々としていてだれる傾向を感じるのですが。この映画の盛り沢山なこと。
全然笑えない悲しい話が殆どなんですけれども。でも、何故か全体はからっとしていてしめっぽくはならず。
東慶寺に駆け込んで、二年修行すれば、簡単に言えば「殆どが離婚成立」。
配偶者から逃げ。でもそれは、憎しみばかりではなくて。愛しているからであったり、己の信念の為でもあったり。
また、隔離された二年という月日は、人を緩やかで穏やかなものにしてくれて…。
主人公達だけでなく。あの人は?あの人は?
この映画に出ていた、いろんな女の人の人生を思いつつ。
余韻の残る。
非常に良質な時代劇を観る事が出来ました。