ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「陽だまりハウスでマラソンを」

「陽だまりハウスでマラソンを」観ました。

f:id:watanabeseijin:20150328135013j:plain

ドイツ映画。
かつてのオリンピックマラソン選手の主人公。伝説のランナーで、知らない者の居なかった彼は、現在は妻と二人でのんびり暮らしていた。
妻の病気をきっかけに、二人で老健施設に入居。
しかし、元気な主人公は老健施設に馴染めず。
一念発起、ベルリンマラソンに大会に出場すると言い出し…。

観るまでは明るい陽気な印象ではありましたが、どっしり重たいしっかりした映画です。
「人生はマラソンだ」もそうやったなあ。年配の方が市民マラソン(と言っても、フルマラソン)に参加するって、もうドラマチックに成らざるを得ないんでしょうね。

この映画が多方面からスポットを当てまくっているのは「老い」。

両親と同居出来ない娘。でもそれは決して両親が嫌いなのでは無くて、自分にも生活があるから。
高齢者の、配偶者を失う事で崩れる心。孤独。

老健施設は、始め嫌な感じに描かれますが。
幼稚な工作や音楽の時間。(でも、手を動かす事とかは大切な事なんやけれどもなあ。)
拘束や鎮静。
でも時々垣間見える、人手不足問題や、入居者を思うが故の過剰さ。

結局、悪い人間は出てこないんですね。
視点を変えてみたら、皆苦しんでいて。

老健施設のスタッフが「毎日、皆を見ていたら怖くなる。(意訳)」と老いが怖いと主人公に話すシーン。
「歳を取るって事は、上がって、下がって、上がって、下がって…最後はずっと上がる事だ。」
手で飛行機のジェスチャーをしながら優しい表情で言った言葉は…余りにも素敵で、スタッフと同じ顔をしてしまいました。

何度も、繰り返し誰かしら言っていた「ここは終の棲家なんだ」。

老健施設で暮らす、癖のある人物達。彼等も初めは、どこか諦めながら大人しく暮らしていた。でも、破天荒な主人公が現れて。別に彼等は何かが終わった訳では無いし、彼等一人一人にも壮大な人生がある。終の棲家とは、ただひっそりと死ぬ場所では無い。

どっしり重たい映画ではありますが、チャーミングな映画でもあります。
老健施設での人間関係の移り変わりは、ほっとしますし。
結構、部屋の感じとかから観てもお洒落なマンション風。お金掛かっていそうな老健施設。ただ…ちょっと入居者全体が元気な感じはしますけれどね。
絶対、そんな訳ないですからね…。

家族を失う辛さ。あの、恐らく何度も繰り返し見たはずの食事のシーンで、両親は終始笑顔やのに、堪えられずに泣いている娘の姿は、今思い出しても涙が出ます。

確か始め「大会まで8週間しかないぞ!」とか言っていた事を思うと、随分と短期間に物事が動いたなあ~。とか思いますが。

後…肝心のマラソン大会。良いんやけれど…。何故スタジアムは…。という最大の突っ込み。本当にあの一点に於いてはどうしたんだとしか言いようが無いです。

多分、この家族にとってのベストなラスト。

何だか沢山書いてしまいましたが、是非とも観て、笑って泣いて、笑って泣いて。最後に笑って欲しいです。