ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「友罪」

友罪」観ました。
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薬丸岳の同名小説を。『64 ロクヨン』の瀬々敬久監督で映画化。

 

ジャーナリストの夢を諦め、とある町工場で見習いとして働き始めた益田(生田斗真)。同じ日から働きだした鈴木(瑛太)。

街工場の持つ寮に揃って入寮。隣同士の部屋になったけれど。誰とも関わろうとはしない鈴木。

毎日皆が寝静まった頃帰ってきて、そして毎夜うなされている。

何を考えているのか分からない。一体鈴木は何者なのか。

前後して。工場の近くで、小学生男子の滅多刺しにされた死体が発見される。

 

益田と鈴木を主軸として。次第に鈴木と恋仲になっていく美代子(夏帆)。益田の元彼女で雑誌記者を山本美月。そして鈴木がかつて在籍した医療少年院の先生を富田靖子

タクシードライバー佐藤浩市が演じた。

 

「いや…これ。話詰め込み過ぎなんちゃうの。」

 

いきなり結論を出してしまいますが。どうしても言わざるを得ない。散漫だと。

 

「益田と鈴木の主軸のみで十分やろう。富田靖子佐藤浩市のパート、ばっさり切っていいんちゃうの。」

 

~一体鈴木は何者なのか。って。予告と宣伝から既に『鈴木が17年前に14歳で殺人事件を犯した元少年だった』と公表しているので。

「猟奇殺人を犯した人間の今」「加害者とその家族の一生涯抱えていかなければいけない罪」「一家離散」「人は犯罪者に対してどういう印象を持つのか」「大人は助けてくれない」そういう…聞いた事あるなあ~という内容のオンパレード。

 

なので。「かつて罪を犯した人間は幸せになってはいけないの」「人様の家族を壊したお前が家族を作ろうとするな」「あんた。謝る事に慣れてるんだよ」お決まりのセリフ山積。

 

文句ばかりが先行しましたが。一応話の流れとして。

工場付近で起きた児童殺傷事件。犯人不明の中、ふとネットで沸き上がった『元少年の仕業じゃないの』『あいつ、最近まで働いていた工場辞めて行方分からねえぞ』という無責任な発言。それを知った雑誌記者が元彼の益田に相談(何で?あんたの仕事守秘義務とか無いの?コンプライアンスは??)。

慣れない生活で疲労しながらも、益田も何となく調べたら(しかもウィキペディアレベル)元少年はまさかのお隣さん、鈴木であったと。

鈴木という人物。確かに得体は知れないし、初めは不気味だった。けれど。

一緒に働いて。暮らしていくうちに、次第に打ち解けてくれる部分もあって。優しい一面や笑う顔も見た。俺たちは友達。なのに。

 

「ていう所メインでええやないかあああ~」

 

「少女漫画ですか?『天使なんかじゃない』??」ベタ中のベタ、捨て猫云々からの(いやいや、そういやDVストーカー男からやった)鈴木と美代子の恋。

美代子に関しては「警察に相談しろ。そいつのやっている事は犯罪だ」と真顔で言うしかない当方。

まあ。アダルトチルドレン鈴木と、美代子と、「その引きずり方は夏目漱石の『こころ』の先生っぽ過ぎる。Kしかり、その親友しかり、なんて当てつけがましい死に方をするんだ」中学生時代の罪に悩まされ続ける益田。その3人の心情を丁寧に掘り下げていけばよかったんですよ。

 

医療少年院の先生。彼らと関わって。彼らには闇もあるけれど甘えたい所もある。そういう視点でのみ描けばいいのに。先生と娘の話は何処か他所でやってくれ。

そして何より蛇足だったタクシードライバー。『加害者家族』って、てっきり鈴木の父親かと思うじゃないですか。それが全然違うって。

 

「またねえ。これ、役者は軒並み良い演技をしているんですよ」(何様)

 

佐藤浩市富田靖子は当然。益田の中学時代の親友の母親、坂井真紀とか。脇役も渡辺真紀子。光石研宇野祥平等、早々たるメンバーが全力投球。

 

「弁当の美味しそうな奴全部乗せ状態。結局何食べてるんだか分からなくなっちゃうんよな。」

 

そして。主演の生田斗真瑛太

瑛太の演技プラン…確かに凄かったけれど…わざとらしいと言えばそうも見えてしまって…」もごもごする当方。「あの。いっそ生田斗真瑛太、逆にしてみても良かったんじゃない?」

『脳男』で心の無いキャラクターを演じていた生田斗真。意外とこういう役嵌りそうな気がするんやけれど。

 

「そして監督よ。女優を綺麗に撮る気無いやろう」

富田靖子。坂井真紀。渡辺真紀子。ベテラン手練れ女優達の「(本当にすみません)老けたなあ~」という映り方。

「しかしそこで唯一驚異的な透明感を見せた夏帆!一体今幾つだよ!何あのイノセント感‼」どんなに汚れてみせたって。絶対に汚れない。却って恐ろしい…。

 

結局。「何がジャーナリズムだ」というゲス展開に依って二人の友情は破られ。けれど俺たちはまた出会う。という終焉。

 

「うわああ。全然しっくりこない」

元少年犯罪者。ひっそりと生きていたはずの彼と俺はたまたま出会ってしまった。始めは何も知らなくて。けれど次第に打ちとけあって。「大切な事」も話せそうな信頼関係も構築されてきた。なのに。そこで知ってしまった彼の罪。けれど。「あいつは怪物じゃない」。だって彼はこの歳で出来た友達。不器用な友達。

彼だけが罪を負っているんじゃない。俺だって人には言えなかった罪がある。

 

順を追って振り返れば、そういう話であったとは理解しているんですがね。何だか平行事案が多すぎて。

 

「何か惜しい。」確かに満腹にはなりましたが。全部乗せ弁当感が半端なかったです。

 

映画部活動報告「29歳問題」

29歳問題」観ました。
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香港。2005年初演。キーレン・パン作、演出、主演(一人二役)舞台『29+1』。

その後13年に渡って再演され続けている作品を。彼女自身が脚色、監督。

キャリアウーマンのクリスティと、夢見がちなティンロ。

2005年4月3日に。同じく30歳を迎える29歳の女性の一か月を描いた。

 

2005年3月。29歳のクリスティ。美容系の会社でバリバリ仕事をこなし。長年の恋人も居て。一見充実した勝ち組キャリアウーマン。

仕事ぶりを認められ、まさかの会社を任せられるという大抜擢。舞い上がるけれど。

昇進した事での仕事量の多さと責任の重さに精神は追い詰められ。

恋人とはすれ違い。言い合いの日々。遂には「俺が2週間出張の間、互いに頭を冷やそう」と距離を取られ。

離れて暮らす両親。父親の認知症が進行している事は気にはなるけれど。忙しい最中、お構いなしに電話をしてくる父親には苛々してしまう。

そんな中。一人で暮らしていたマンションを「良い値段で買ってくれる人が見つかったから」と大家に無理やり追い出され。

途方に暮れる中。大家が「次の家が決まるまでの仮住まい」として紹介してくれたアパート。

元々の住人は現在旅行中で、空いている間ここを貸してくれると。

実際に引っ越してみて、住人が生年月日が全く同じ女性である事を知ったクリスティ。

「こんにちは。私はティンロ」

笑顔がチャーミングなティンロからのビデオメッセージ。タワレコ&雑貨屋みたいな小物で溢れた部屋と、残されたティンロの日記。

 

「29歳かあ…」

 

はっきり言って29歳はとっくに過ぎて。寧ろ『39歳問題』の方に足を突っ込みつつある当方。正直「29歳の時ってどう思っていた?」というと思い出せず。

 

「20代という年代がふわふわしすぎて。結局若造やし。いっそ早く30代になりたいと思っていた気がする。」

「20代で結婚!」「子供!」という縛りも当方に無く。それは今でもそう。ですが。

 

確かにかつて「もう30になってしまう‼」と焦っていた学生時代の友人(女性)が居ました。

「女に生まれたからには子供を産みたい」「この人とは進展しそうにないから次だ次」その猪突猛進振りに次第に当方とは距離が離れていきましたが。『女30』というパワーワードはこうも人を変える力があるのだと強く実感。

 

「でもあれですな。生き方って正解は無いしな。」ぼんやり呟く当方。

 

いつだって一生懸命。向上心に溢れ。仕事はきちんと。日々のスケジュールをこなし。

アフターファイブは女子会、恋人との時間。見た目もいつも綺麗に。手を抜かない。

今は結婚する時じゃない。だらしないところのある恋人との生活なんて考えられない。

憧れの女社長。一代でこの会社を立ち上げ、大きくした。そんな社長に認められた。「この会社を大きくするために私は新天地を開拓するから、今の会社は貴方に任せる。」嬉しくて。

けれど。一気にのしかかる重圧。迫りくる企画。なのに上手くいかない。不安と苛立ち。

上手くいかない。これまでの様に上手く立ち回れない。

その苛立ちは恋人にも向けられ。喧嘩。挙句距離を置く事に。

しかも邪険にしていた父親に新しい局面が起きた。
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「いくら何でも。たった一か月で問題が起き過ぎやろう。」険しい顔の当方。

 

「水を差して申し訳無いんですが…。一か月かそこらで、昇進。住宅の退去。仕事の暗礁。恋人との別れ。親との別れ。仕事との離別って…詰め込み過ぎやろう。」

 

年代的に起きそうな事柄をてんこ盛りに盛り込んで。どれにも漏れなくオチを付けて。確かに幾つかは切なくツンときましたが。…きましたが。

 

「あの女社長は全然凄腕じゃないな」「元々クリスティがどういうポジションだったのか分からないけれど、いきなり支部長?的なポジションに抜擢って。無茶過ぎるしせめてサポートを付けてやれよ。あんたの会社はあれか。あんた(社長)以外は管理職不在で、他は20~30歳代の若者でワイワイやっている部活か。会社潰れるぞ。」「案の定一人できりきり舞い。」「そんな大役を貰って、たった一つのプロジェクトで傷付いて。一か月で降りるって。ある意味クリスティ潰しやないか。それで去るときにはああいう声掛けって。納得出来るか。」「後進育成の出来ないワンマンカリスマ経営者。」「そして一体どういう衣装をモデルに着せるつもりやったんやろう。」

主にクリスティの仕事について。リアリティが無さ過ぎて…モヤモヤし続けた当方。

「その会社。変すぎるから。辞めて正解。」

 

いつだって一生懸命に頑張ってきた。なのに。グイグイと袋小路に追い詰められる。

仕事。恋人。家族。どれもこれも歯車が狂いだして。

 

「まあでも。ティンロパートの圧倒的ポジティブ感と、それが一転する切なさ。そして疾走感。」

 

クリスティが仮住まいする事になったアパートの住人。ティンロ。『ジェーン・ス―』さんにしか見えないビジュアルの彼女の天真爛漫さ。

小さなレコード店に勤めて10年。底抜けに明るい性格。いつだって笑顔。コロコロ笑って。幼馴染の男友達といつも一緒につるんで。遊んで。
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そんな日々が続くと思っていた。

 

今は憧れのパリに旅行中。そんなティンロのはじける様な日記を読んで。同い年の彼女に思いを馳せるクリスティ。

 

愛嬌はあるけれど。お金がある訳じゃない。幼馴染だって恋人では無い。なのに。

ティンロの住んでいたこの部屋。ビデオレター。そして日記。溢れんばかりの多幸感。

どうして?どうしてそんなに楽しそうなの?どうして笑っていられるの?

何処で私は間違ったの?ねえティンロ。貴方は私みたいに一人でやるせない気持ちになった事がある?泣くクリスティ。

 

「そうか。そうかティンロ…。」

(その落としどころに、正直モヤモヤともしましたが。)

 

「兎に角笑えれば」

いつだってポジティブに。そうやって生きてきた。けれど。人生に有限を感じた時、目の前の景色は全く変わった。

年齢は関係ない。今。今を悔いなく生きる。自分を大切にする。見たいものは今見に行く。やりたいことは今する。今すぐ。

誰かと自分を比べない。いつだって変われる。でもそれなら今。今すぐ変わる。

 

(後ねえ。あの夕日の中の。幼馴染とのモダモダしたやり取り。全当方が悶死。「頼む!もうヤッテくれ!」そしてあの年齢でそのステージはシビア過ぎるし…女性にとって後のボディイメージの変化は許容しがたいと思うし。それこそ今だよ今‼)

 

29歳問題』そのタイトルから想像するような「焦った女性のドタバタコメディ」なんかとは全く違う方向性。途中訝しく思う所もありましたが…非常に爽やかに着地した作品。

 

「これ。29歳の時に観たらどう思ったやろう。」

そう思って今、ふと身近(職場後輩)に29歳の女性が居た事を思い出した当方。

ちょっと薦めてみたいと思います。

 

映画部活動報告「ランペイジ 巨獣大乱闘」

ランペイジ 巨獣大乱闘」観ました。
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2018年5月18日金曜日。ランペイジ公開日。当方にとってのXデー(職場の歓迎会)。

昨今の酒呑みに対する社会からの圧力。及び自身が他人との酒宴よりも自宅の一人呑みに安住の地を見出しており。酒に酔って自身では制御出来ないキャラクター(狂人)が当方及び人様を傷付けるのでは無いかと恐れ。

そして何よりも、その日の会場が、昔盛大に酔ったという気恥ずかしさから4年程足を向けなかった居酒屋。そんな事今回の幹事が知る訳が無いけれど…怒りと不安で迎えたXデー。

「今日は巨大化した動物が街を襲う事態をこの目に収めなければいけないんです」当方の悲しすぎる攻防も『全員参加』というパワーハラスメントに押され。

結果。いつもの『メニュー表の上から順番に酒を頼む(そしてその日も下まで完了)』という下品なオーダーをかましながらも「ウォーター」を随所に折り込む事で、何とか正気を保った当方。

 

翌日。這う這うの体で『巨大化した動物が街を襲う事態』を目に収めましたが。

 

「平たく言うと…5月病…ですか?心が骨折…」GW以降、心が折られる事案が小さく積み重なり。最早当方の心は踏み慣らされた麦畑。そうして最終この宴。

何だか無気力。当然通常業務には一切支障はきたしませんが、帰宅後の自炊も粗野なテイストとなり。毎夜ゴロゴロと布団に慰められる日々。(当方を温かく包んでくれるのはお前(布団)だけだよ!)そうして自堕落に過ごした1週間。

 

「さ。もうええ加減感想文いきますか」(勇気を持って布団から退団)

 

いやあ~。これ。予告での期待値半端なかったんですけれどね~。はっきり言うとB級どんちゃん騒ぎ映画でしたね~。(本当にばっさり)

 

(結局何を売りにしている会社なのかのかよく分からなかったけれど)某大企業の『遺伝子操作をし、巨大&凶暴化した動物を軍事使用する』という目的で、宇宙で秘密裏に行われていた実験が失敗。宇宙ステーション及びサンプルを積んで地球に向かっていたロケットは爆破。

その破片が地球、北米の一部に落下。そのサンプルから出た物体を吸い込んだゴリラ、狼、ワニが巨大化&凶暴化してしまう。

荒れ狂い、誰彼ともなく襲い掛かり暴走する三頭。逃げ惑う人々。

某企業は当然秘密裏に巨獣の回収を試みる。と言うのも彼等には巨獣の凶暴化を止める薬剤があるから。(巨大化については手立て無し)

巨獣を確保し、当初の目的通り研究続行。そう目論んで。遺伝子操作の内容を周知している某企業は巨獣に組み込まれた習性を利用し本社におびき出す。

ただただ無作為に暴れていた三頭は見事、本社に向かい始める。しかしそこはシカゴのど真ん中。

人類(アメリカ人)にとっての有事が始まった。

 

「え?」何度でも何度でも何度でも立ち上がり呼びましたけれど。声が枯れるまで。

「この薬剤は一本一個体にしか効かないんですか?そして個体差(主に巨大化)が凄まじいんですけれど。」

ゴリラ:ジョージ 12m/9t。
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だれもそう呼んでいませんでいたけれど。狼:ラルフ 26m/13t。
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最早これ一体何だ。ワニ‼:リジ― 16m/150t。
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「狼も空を飛ぶよな」何だって⁈(当方の心の声)

いくら何でもあんなに噴煙立ち上る地上にそんなに長時間ワニは居れんやろう!!。

そして一番元々のサイズがでかいはずのゴリラが一番小さいって。何この薬。元々の母体のサイズに反比例するんですか??

 

「まあ…ゴリラのジョージは主人公オコイエ:元軍人で霊長類学者のお友達という設定やから。ある程度のサイズに留めておいたという事だと理解していますよ」オコイエ舐めのジョージ、という絵面を成立させるにはあのサイズが限界かと。弱弱しく呟く当方。

「だって。だって。職業に貴賤は無いけれど…あんまり軍人から霊長類学者って進路ない気がするし…って言うか、ドウェイン・ジョンソン(面倒なんでロック様称)のビジュアルが全然学者然としていないし…寧ろ彼もまたゴリラやし。」
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(手錠を引きちぎる強さよ‼)

先日公開された『ジュマンジ』の。早くも続編かな?そんなキメ顔満載のロック様。

 

元々動物保護センターに居たジョージ。ゴリラ故当然言葉は話せないけれど。知能の高い彼はオコイエと手話で会話。心が通じていた。

そんなジョージが巨大&凶暴化。「俺ならジョージを止められる!!」そうして彼らを追うオコイエ。

「私はかつてあの会社で働いていたの。そしてあの薬を開発した」とんだマッドサイエンスト、ケイト博士の登場。そしてオコイエと合流。

「お前はクズだ」何故そんな風に言われなければいけないのか。そう思うラッセル捜査官。結構まとも。

 

巨獣が街になだれ込んで。街を。人を。生活を破壊しまくる中。まともに対応しているのはその3人のみ。アメリカ、まさかの軍頼み。

 

「日本を見習え!!かつて怪獣に何度も領土を踏み荒らされたあの島国を‼国の有事と直ぐ様判断。国家を挙げて対策本部を設置する俊敏な対応力を‼」立ち上がる当方。(心の中で)

 

「アメリカンよ!!これは戦さやぞ!!『KAIJYUU いいなあ~。街をぶっ壊されたいな~』って思うのは自由やけれど、出したなら出したなりの収束の仕方を考えろ!!少なくとも奴らは軍の攻撃ごときではびくともしない!!犬死!!そんで元来その拮抗薬云々は笑止の案件な‼結局巨獣同士のバトルロワイヤルって!!当方がシカゴ市民ならどこか別の所でやってくれって言うよ!!後アメリカンお決まりの『件の最終兵器を落として事態を収束』って思考、原水爆禁止の思想の持ち主からしたら不快でしかないから!!あんた達、第二次世界大戦から何を学んだんだ!!」

おっと。怒りの方向が危険な方向に向かいましたが。

 

「いいんですよ。ただただ大きな獣が何かを破壊している絵面を観たいんですから。」

そうして穏やかに受け入られる人にはその広大な心の海で飲み込める作品。ですが、心が多重骨折しまくっていた当方は一々いちゃもんを付け続け。

 

「最後に言う。もし当方がシカゴ市民なら、あいつがどんなに良い奴になったと言われても殺処分を要求する。そして下品な手話(ジェスチャー)してんじゃねえ!」

 

1週間のリハビリ期を経てみると、一体何故そこまでカリカリしたのか分からなくなってきましたが。

何だかんだ結局、楽しく観たんやなあ~と振り返るばかりです。

 

映画部活動報告「孤狼の血」

孤狼の血」観ました。
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「これは『アウトレイジ』に対する東映の答えですね」ー古舘伊知郎

 

「最早現代の日本に『ノアール作品(暴力映画)』は存在しない」

当方の属する、たった二人の映画部で。時折語られる、『日本ノアール作品絶滅説』

深作欣二監督亡き後の継承者不在」「アウトレイジは『死に方大喜利』と化した」「園子温監督は?」「冷たい熱帯魚以降のマンネリ感」「敢えて言うなら井筒和幸監督かも…」そして「もうバイオレンス畑は韓国映画に持って行かれる」となっていた昨今。

「ああそうか。白石和彌監督!『日本で一番悪い奴ら』の‼」しかも会社は東映

これは期待できるかなと。胸を膨らませて公開翌日に観に行きました。

 

「冒頭の『東映』ロゴの古さ!ぐっとくるわああ~」まだ何も始まっていないのに。高まる当方。

 

東映』言わずと知れた、任侠映画の老舗。『網走番外地』『仁義なき戦い』『極道の妻たち』どのシリーズも最早伝説。

 

「けれど。これはあくまでも『呉原東署第二課暴力団係の刑事』が主人公。ヤクザの仁義がどうこうという話では無いんよな」

 

昭和63年。広島。架空の都市、呉原東。

広島大学を卒業したエリート、日岡秀一(松坂桃李)。広島県警から配属され、第二課暴力団係:マル暴のベテラン問題刑事大上省吾(役所広司)とコンビを組まされる。

大上。数多の功績を挙げながらも。その手段を選ばない犯罪すれすれな捜査手腕と、余りにも多くの情報を握っている事から、ヤクザも警察も一目置かざるを得ない刑事。

地元を取り仕切る尾谷組とズブズブの関係に見せながら。対立している加古村組にも多少話が出来る。

両者の組はかつて衝突。一般市民を多数巻き添えにした大抗争を起こし。余多の血が流れた挙げ句、加古村組の上層部ヤクザが刺殺され。抗争の結果尾谷組組長が逮捕された。

それから14年。尾谷組は若頭一ノ瀬守孝が取り仕切り。対する加古村組はバックに付く五十子会に守られながら。

両者は一触即発の日々を送っていた。

 

ある日。とある消費者ローンに努める会社員の男が行方不明になった。

数か月後。会社員の妹が呉原東署に捜索届けを提出。その消費者ローン会社が加古村・五十子会の傘下であった事から、ヤクザの仕業だと。大上・日岡は捜査に向かうが。

 

「どっちがヤクザか分かったもんじゃない」という強引スタイルで。ヤクザだろうが何だろうが踏み込んでいく大上。証拠を得る為には暴力、恐喝、放火。何でもあり。

そして「広大」と呼ばれながら。大上に付いていって。「ちょっと!大上さん!」「こんなの駄目ですって」一々正論を言うけれど。結局大上に押し切られる。そうして次第に『大上スタイル』に仕上がっていく日岡。(実は空手の達人)

 

ヤクザ映画あるある。組のメンツ。組の中のヒエラルキー。その誰に顔を立てなければいけない云々。「オヤジ」「お前うちのシマで何さらしとるんじゃ」「どの面下げてうちのシマ歩いとるんや」「お前らの組はお終いじゃ」「全面戦争やぞ」「おどれ。警察ちゃうんか」「警察じゃけえ。なにしてもええんじゃ」「おもろいこと言うちょるな」「今のうちが居るんはガミさんのお蔭じゃあ」「ガミさんが本当に大切にしちゅうは何か分かるか?」「カタギの人間守る為やったら何でもするわ。」「ガミさんにとっちゃあ、ヤクザは捨て駒じゃあ。」あるあるほっとワードのみで構成、展開される世界。

 

つまりはいつでも戦争寸前だった二つの組(プラスもう一つ大きな闇組織)。そこに関わっていたカタギの人間の失踪が起きた事で警察が介入せざるを得なくなる。

それをきっかけに双方の幾つかのトリガーが引かれ。あわや大戦争寸前。しかし、そうなるとまた一般市民が巻き添えを食ってしまう。そこで一番穏便な方法での終結を目指した大上と、その破たん。そして大上の後継者となっていた日岡の取った行動とは~という流れ。

 

「まあ~綺麗何処を集めましたな」革張りの黒いソファーに沈みながら。足を組んで。肘乗せから伸びた腕を…腹の上で…指を組む当方。(目を閉じてご想像下さい)

 

「『渇き』の実績があるから。アウトロー寸前の汚い刑事大上を役所広司。そして徐々に仕上がっていく若手エリート刑事日岡松坂桃李。このキャスティングは間違いない。」

(先日の映画部長と当方のやりとり。「松坂桃李は面白い」「一つ頭突き抜けましたね。『彼女がその名を知らない鳥たち』のクズ、最高でした」「ああいう汚れが出来るって頼もしいよな」)

「尾谷組若頭一ノ瀬に江口洋介って。って言うか一ノ瀬の下の名前『守孝:モリタカ』って。絶対狙ってるよな!だって大上に何で若頭が下の名前で呼ばせてるよ!笑ってもうたやろ!」

その他。クラブママに真木よう子。そしてヤクザサイドに中村倫也竹野内豊石橋蓮司ピエール瀧等々。比較的『驚きもしない綺麗処』集結。

 

この手の作品にありがちな、『スクリーン一杯に広がる俳優の顔。キメ顔とキメセリフ』それが一々決まる。でもそれが少し物足りない。

 

「北野組、園組の面々を概ね省いて行って。(ピエール瀧石橋蓮司は別)そうなると綺麗処になっちゃうんやなあ~」全体的に絵面が綺麗すぎて。のれない当方。

 

國村隼。でんでん。渡辺哲。そして女性陣の活躍はもっと見たかった。そうなるとやはり黒沢あすか姐さん。

「それか。畑違いの起用狙いならばいい加減、中井貴一織田裕二池脇千鶴忽那汐里のヤクザ映画参入はどうだ。」脳内キャスト置き換え遊びが発動する当方。

 

一見アウトロー寸前の不良刑事。しかし彼が本当に守りたかったものとは。そして当初の目的と変わって。次第に『本当のマル暴刑事』に仕上がっていく若手刑事。

 

「そういう話やって事は良く分かった。そして良く出来ていた。そこそこバイオレンスな描写も頑張った。間違いなく及第点。なのに少し食い足りない」

 

「続編?」汚らしい恰好の松坂桃李が、アウトロー寸前の不良刑事をしっかり継承しながら呉原東を闊歩する姿?そんな続編?いらんいらん。(そしてあんな落とし前をつけた日岡が生きておられる訳が無い。そう思う当方)

 

「一体何を観たかったのかと言われたらあれやけれど…おそらくもっとむさ苦しい男男したしたものを欲していたのかと…分かるよねえ?東映さんよ」

 

完全に当方の嗜好の問題。「良いんやけれど…スマートで綺麗すぎる」という理不尽ないちゃもんを付けて。歯切れが悪く終えたいと思います。

 

映画部活動報告「心と体と」

「心と体と」観ました。
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静謐。雪が音もなく降る森。そこにある池のほとりに佇む、オスとメスの鹿。

寄り添い。水を飲み、草を噛み、共に駆ける。

 

そんな夢を共有していた。そう知って惹かれ合う男女。

 

ハンガリー映画イルディコー・エニェディ監督作品。

 

「いやもうこれ。完全にノーマークでしたけれど!『なんか良い…』っていう声に押されて観に行ったら…何これ?ホンマに『なんか良い…』としか言いようが‼」

語彙力が無くて…全然この作品の事を説明出来る気がしません。「もう‼ええから!観に行って!」としか。

 

牛肉食品処理工場が舞台。そこの財務部長エンドレ。管理職であり、実際の精肉現場には殆ど立ち入らない。かつては妻子も居たけれど、離婚して男やもめ。見た目にも枯れ切っている。片手が不自由。

部長室の窓から工場を見下ろしていて、ふと目に入った女性。マーリア。

産休に入ったスタッフの代理として採用された、品質検査官。

透き通るように美しい彼女。硬質な雰囲気を纏う彼女は、無表情で厳格。仕事は確実だけれど融通は一切きかず、とりつくしまもない。当然、直ぐ様職場で浮いてしまったマーリア。

そんなマーリアを気に掛けて、食堂で声を掛けてみたりもしたけれど。噛み合わず。

ある日。工場に保管されていた牛の交尾促進薬が紛失。警察沙汰になり、全職員が精神分析医のカウンセリングを受ける事となった。

そのカウンセリングから、エンドレとマーリアは同じ夢を毎夜共有していたと知る。


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『雪の森で交流する、つがいの鹿』

 

夢の話をきっかけに急接近。次第にそれは好意へと発展するが。

夢の中では自然で居られるのに。現実ではすんなりとはいかなくて…。

 

『生真面目な人』

マーリアを一言で言うと、そうとしか言いようが無い。『こじらせ女子』なんてぬるいぬるい。

驚異的な記憶力を持ち。職場ではコンプライアンス重視。品質検査官として優秀ではあるけれど、その融通の利かなさは他の従業員にとって息苦しさしかない。けれど。

マーリアは決してお高くとまって他者を見下している訳では無い。ただ驚異的に不器用なだけで。

万人と関わりたい訳では無い。愛想良く振舞って仲間を作りたいなんて微塵も思わない。そんな自分に疑問も無かったし、一人でも何とも思っていなかった。なのに。

 

毎夜夢に現れる、そして一緒に居る事で心が満たされる。そんなつがいの鹿。

まさかそれを共有していた人が。こんなに近くに居たなんて。

 

初めて誰かを欲した。けれどどうしたらいいのか分からなくて。

 

「また。枯れた切ったエンドレが久しぶりに恋をしたのに。恋の仕方、忘れた訳じゃ無かったのに。生真面目なマーリアのペースに絡まって。彼もまたどうしていいのか分からなくなってしまう」

 

普通。互いに憎からず思っている男女が一緒に居て。相手の気持ちなんて何となく伝わるし、そうなると自然に寄り添いたい。ややこしい確認とかは飛ばしたい。だって大体分かるじゃないのと。大人ならそう思うじゃないですか。

 

なのに。工場に新しく入ったチャラ男に嫉妬して「これ、私の携帯番号だ」とマーリアにメモを渡しても「携帯電話を持っていません」と真顔で返事され。「ちょっと思い違いをしていたみたいだ」と顔を歪める(内心「バカバカバカ!俺!」ってなるやつ)…なのにマーリア。実は本当に携帯電話を所持していない。

「一緒に寝ませんか」「目覚めて直ぐに夢の話が出来る」そういって自宅にマーリアを呼んだのに。そしてマーリアは来たのに。結局カードゲームをする羽目になる。

 

何故。何故夢の中では、視線を交わしただけで互いの想いが伝わるのに。

 

何もかもやるせなくて震えるエンドレの背後から。そっとその肩に手を置きたい。ただただ無言で一緒に居てやりたい。そう思った当方。

(エンドレ役のゲーザ・モルチャー二。本業はドラマトゥルクや編集者等で全くの演技未経験だったなんて!脱帽!)

 

「でも。マーリアだってエンドレに惹かれている。ただ…彼女のペースっていうものを辛抱強く待ってやらんといかんのやな。」

 

「成人専用のカウンセラーを紹介するって」マーリアの、おそらく小児期からのカウンセラー。マーリアから恋の相談を受け。「専門じゃないから全然分からん」と困惑するけれど。お構いなしに何度も相談をしに訪問してくるマーリアに「取りあえず携帯電話を買ったら」とアドバイス

「この気持ちをどうしたら良いのか分からないから、AVを見たりしている」という真顔のマーリアにも「何それ駄目。音楽とか聴いたりしたら?」と結果的確なアドバイスを提示。そして次第に情緒を深めていくマーリア。

 

このカウンセラーしかり。この作品は、サブキャラクター陣も非常に良かったですね。エンドレの同僚、「この工場の大半の男は俺の妻と寝ているんだ!」奔放な妻の尻に敷かれっぱなしの人事部長。

新しく入ってきたチャラ男。結局「人を見かけで判断するな」というごもっともな教訓を残した彼。(パンフレットで知ったんですが。実生活ではマーリア役のアレクサンドラ・ベルボーイと彼がパートナーなんですね)

実は恋のエキスパート。掃除のおばちゃん。

「何その質問」というエロい精神分析医。堪らん。

 

そして。つがいの鹿。

「鹿に演技は強要出来ないだろうから。ひたすら二頭の鹿を撮り続けたんやろうけれど…(といっても一週間)けれど実際スクリーンに映し出された時の雄弁さ。何も語っていないのに‼鹿たちがこちらに語り掛けてくる」何この鹿映画。

 

兎に角美しい、鹿のシーン。

そして食肉加工工場という、生死の生々しさがシステムチックに昇華される現場。

登場人物の生真面目故のおかしさ、哀しさ、愛おしさ。

 

最後の最後。あのセリフとマーリアの表情で締めた時。

 

「あああ~一から十まで全部好き…好きやわあああ~なんか良い。なんか良いこの作品」

 

体中の空気を抜きつくす。そんな深いため息と共に。映画館の座席に沈んだ当方。


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映画部活動報告「 太陽がいっぱい」

「午前十時の映画祭 太陽がいっぱい」観ました。
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1960年公開。フランス・イタリア合作。パトリシア・ハイスミスの同名小説の映画化。当時24歳のアラン・ドロン主演。『禁じられた遊びルネ・クレマン監督。

 

言わずと知れた名作。とは言えうろ覚えだった当方。

 

「1960年の名作をデジタルリマスターした高画質で。スクリーンで観られる贅沢よ!」

 

GWのお楽しみとばかりに。息せき切って観に行った当方。そして。「ギブミー!ブランケット!」鑑賞後胸を押さえてのたうち回る当方。

 

「何この滴るアラン・ドロンよ」「太陽がいっぱい!」「太陽がいっぱい!」呆ける当方…這う這うの体ですが。これでは話が進みませんので。拙い感想文をシュッとしたためて…今日は早く夢の国に墜ちたいと思います。

 

大金持ちのドラ息子フィリップ(モーリス・ロネ)。その腰ぎんちゃく、トム(アラン・ドロン)。そしてフィリップの婚約者マルジュ(マリー・ラフォレ)。概ねその三人の話。
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フィリップの家族から「アメリカに連れ戻してこい」と報酬をちらつかされ指令を受けた貧しいトム。しかしのらりくりとかわすフィリップ。結局帰らない、気ままなフィリップ。金は入らない、しかしどこにも行く当てのないトムはフィリップから離れられず。

そんなトムを一見友人扱いしながらも、結局馬鹿にしているフィリップ。「上品ぶるのは下品な奴のすることだ」ふざけた挙句の行きずりの女性とは一緒に遊ぶけれど。自分の本気の彼女、マルジェとラブラブな時にはトムを遠ざける。フラストレーションが積のるトム。

 

そして遂にその時がやってきた。

 

フィリップの船で。マルジェとトムの三人の船旅。けれど。

結局はフィリップとマルジェのラブラブ旅行。当てられ。一度はふざけたフィリップに依って漂流しかけ。日焼けによる大やけどで死ぬところだったトム。

「俺を殺したいんだろう?」そんなフィリップの挑発も相まって。

マルジェと喧嘩をするように仕組んで、思い通りマルジェは途中下船。晴れてフィリップと二人になった所でフィリップを殺害するトム。

 

そうしてトムの快進撃が始まる。

 

「おお…防犯カメラと指紋捜査の無い、大らかな時代よ…」

 

思わずそう震えてしまったくらいの…よく言えば大胆な。はっきり言えば雑なトムの行動。

 

つまりは「フィリップに成りすまし全財産をむしり取ってから、尚且つフィリップの彼女マルジェも頂く」というトムのミッション・イン・ポッシブル。そして自爆劇。

 

しかもその切り札は『フィリップの直筆サインを模写出来る』それだけ。

 

パスポートもただ自身の写真と張り替えただけ。「どうしよう…喧嘩してからフィリップと連絡が取れないの」と気落ちするマルジュにはタイプした手紙を配送。手紙の最後にはフィリップの(模写した)サインがあるから大丈夫。

銀行はサインとパスポートさえあれば金を下ろしてくれる。

 

しかも。途中フィリップの家族と鉢合わせになるピンチにも。そしてフィリップの友人が滞在先のホテルに襲撃してきても。何とかかわす、アラン・ドロン無双。

 

まさかの危険を幾多もひらりマントでやり過ごして。何もかも手に入れる。フィリップの恋人、マルジェすらも。

 

「幸せだ。太陽がいっぱいだ」そこからの。

 

「こういう話やったのかあああああ」もんどりうつ当方。

 

「さよなら。さよなら」さよならおじさん、淀川長治先生が「これはゲイ・セクシャルの話だ」と言った。その逸話。

 

浅瀬に住む当方が何を言うことも。ましてや1960年の作品に。そう思うと気が引けますが。

ただ。真っすぐに思った事を書きます。

 

金持ちの息子、フィリップの甘さ。恐らく20代の彼の。当時の社会背景なんて知ったこっちゃないですが。

 

恐らく自分はこうやって遊んで暮らしていても許される。暫くは。お金があるから。

けれど自分には可愛い彼女が居る。愛している。彼女は自分を求めているし、自分も彼女を逃したくない。彼女はいずれ生涯の伴侶になる。けれど。

自由でいたい。まだ自由でいたい。

そんな時。いやがおうにも目に入る、自分の腰ぎんちゃく。貧乏人トム。

どうせプライドなんて無い。金の為には何でもするトム。ポリシーなんてない。いいよなあいつ。あいつは自由だぞ…でもあいつの自由なんて、金次第。

そうやって侍らせる。一緒に遊ぶのは構わない。けれど。大切にしているマルジュと親密な時はトムは邪魔。(フィリップとマルジェがいちゃついている時。隣室でフィリップの洋服を着て一人遊びしていたトムを見つけて叱るフィリップ、鞭片手でしたよ)

 

けれど。トムに自意識が無い訳が無い。

フィリップとは友達。一緒につるんで楽しい友達。そう言い切りたいけれど。

 

哀しいかな、トムは自覚している。この友情がフラットな関係ではない事を。

 

「上品ぶるのは下品な奴のする事だ」「お前のナイフの持ち方、違うぞ」フィリップと対等だと錯覚すると、すかさずマウントを取って来る。「お前は俺の腰ぎんちゃくだぞ」自覚させられる。その積み重ね。静かに重なるフラストレーション。

 

そして。フィリップ自身からの「俺を殺したいと思っっているだろう」。「これがおれのサインだ」。

 

それはつまり。ピーターパン症候群を有するフィリップからトムへの委託殺人。(フィリップからしたら冗談半分)

トムはそれを大真面目に遂行したのだと。

極端な話、そう解釈した当方。

 

じゃないと。終始トムがフィリップに固辞した理由が分からない。だって。正直「二人で船旅を続行していたら海に落ちました」でも良いじゃないですか。二人きりの空間で。他人は殺人すら立証できないのに。後のお金絡みさえ何とか上手くやれば。

けれど。あくまでもフィリップが生きている呈で。ちまちま金を下ろしたり。マルジュに手紙書いたり。そうやってゆっくりフィリップを殺していく。

 

トムは馬鹿ではない。なのに。

 

「俺が憎いんだろう?」そう言ってニヤニヤ笑ってくるフィリップに。馬鹿にするなと刃を向ける。けれど自身の足元に横たわるフィリップを大海原に捨てられないトム。

 

愛憎。そういう言葉で片づけて良いのか。兎に角フィリップがやるべき後片付けをしてから、自身の幸せを手に入れようとするトム。。けれどその時間は余りにも短すぎて。

 

「確かにフィリップが好きやったんやろうな。でもそれは…当方はあくまでも同性同士の友情にとどまった様に見えた」

 

身分の違い。そこから生まれる愛憎。けれど。『お前のやりたかった人生』を自身と照らし合わせながらなぞる。そんな弔い。出来るかと。

 

1960年の古さと、古びれなさよ。ひとまずはそれをスクリーンで拝めた有難さと。胸の痛みを抑えながら。のたうち回る当方です。


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映画部活動報告「サバービコン 仮面を被った街」

「サバービコン 仮面を被った街」観ました。
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ジョージ・クルー二ー監督・共同脚本+コーエン兄弟脚本作品。

主演、マット・デイモンジュリアン・ムーア

1950年代のアメリカで起きた人種差別暴動をモチーフとして。

 

『アメリカンドリームの街、サバ―ビコン』郊外の。インフラも整備され、人々も大らかで暮らしやすい。そんなうたい文句の街。しかしそれは『白人の街』だった。

そんなサバ―ビコンに、黒人一家が引っ越してきた。街の住民達は動揺、嫌悪感が抑えられず…。

それなりに地位のある職に就いているガードナー(マット・デイモン)、足の不自由なローズ(ジュリアン・ムーア/2役)、一人息子のニッキー。3人で暮らすロッジ家。

ローズの双子の姉マーガレット(ジュリアン・ムーア)はしょっちゅう自宅に一緒に居て。何てことない、平凡な一家…だった。例の黒人一家が隣りに越してくるまでは。

 

隣家に対する、住民達の刺さるような視線を感じる中。母親ローズだけはニッキーに「お隣の子と仲良くしなさい」と勧め。丁度同じくらいの年頃の息子とキャッチボールを始め、友情を深めていくニッキー。

 

しかしある夜。ニッキーの日常は食い破られる。

 

深夜。押し入った強盗にロッジ家一同が襲われ。ローズが命を失ってしまう。

 

残されたガードナー。ローズの姉マーガレット。ニッキー。三人での暮らしが始まるが。

 

まあ…はっきり言うとガードナーとマーガレットがデキていて、邪魔者ローズを街のゴロツキに委託殺人をしてもらった、という話。

そうして手に入れた新生活に正直ウキウキしている二人。特にマーガレットに至っては、元からロッジ家に入りびたりだったけれどすっかりローズのポジションに収まり。髪の毛もローズと同じ金髪にして、明るい色の洋服で着飾って。新婚気取り。

 

けれど。そんな大人二人の姿を終始怪訝な顔で見ているニッキー。

 

強盗が押しいった時、彼らの顔をしっかり見ていたニッキー。後日警察で面通しに呼ばれた時。間違いなく犯人がその中に居たのに「知らない」と言い切った父親と叔母。

明らかに浮ついてラブラブな二人。

 

父親と叔母に対する不信感をニッキーが募らせて行く中。同じくサバ―・ビコンの住民達は「あいつら(黒人一家)が越してきてから治安が悪くなった」とロッジ家の強盗殺人事件に絡めた見解を下し。

「この街にニガーは要らない」「出ていけ」日に日に住民達の嫌悪感は剥き出しになっていって。暴動へと発展していく。

 

「何か…中途半端やなあ~」

鑑賞後。腑に墜ちなくて。何回も溜息を付いた当方。

まあ。歯切れが悪くぼそぼそ書いていきますが。

 

ジュリアン・ムーアがいい加減こういう『若奥さんに収まる』という年齢じゃない、という事は…とやかく言わんようと思うんやけれど…(次第に小声)」

ジュリアン・ムーア57歳。まあ日本でも、いつまでも『幼い子供を持つお母さん役』の女優さんっていますけれど。いますけれど…)

 

ジョージ・クルー二―の監督としての手腕、それを見抜く力なんて大それたもの、勿論当方にはありません。ありませんが…でも演出の妙って奴、感じなかったですね。

そしてそもそも脚本事体が変。

 

コーエン兄弟の作品全てを知る訳ではありませんが。『何だか奇妙で変わっている』ファンの多い脚本家。そこに今回ジョージ・クルーニーも共同執筆したと。

 

これを言っては話にならないのは分かっていますが。「何故委託殺人の時点でニッキーも殺さなかったのか」

「いやいやいや。彼らは妻のローズが邪魔だっただけで、子供憎しというタイプでは無かったですよ!」分かりますけれど…二人の新生活の相当な足かせになっていたじゃないですか。

「それなら何故、強盗に襲われた時寝ていたニッキーも叩き起こして同席させたんですか?あれ、相当リスキーやし意味無くないですか」

本当にそれ。理解出来ない。ニッキーが子供っていっても、何も分からない程幼い訳じゃ無いし、実際に犯人の顔を覚えていた。「あくまでも一家全員が襲われ、そして不幸にもローズのみが命を落とした」という演出の為?別にニッキー寝ていても良いじゃないですか。大人三人で談笑でもしていた時に強盗に押し入られた、という事で。

 

そして。折角(という言い方はアレですが)黒人家族に対する人種差別暴動という題材を扱っているのに。ロッジ家の、渦中に置かれた隣家に対しての関心が無さ過ぎる。

まあ、自宅の騒ぎの方が大変だという事も分かるし、もしこの問題をクローズアップしたら話の焦点がどんどんズレて違う作品になってしまうのも分かる。

『隣合わせの二家族に。同時期に起きていたとんでもない事件』という対比をしたかったのも分かる。分かるけれど…何だか上手くいってない。

 

そして。話のテンポやどこか間抜けな大人たちのキャラクター設定。コミカルでブラック。そんな雰囲気に薄っすら『ウェス・アンダーソン作品』っぽさを感じた当方。

(あの。病的なまでに整った絵面と独特のテンポ。不器用なキャラクター達が織りなす不気味でキュートな世界観。注:褒めています)

似ている。けれどあそこまでビシッと世界観が決まらない。何だか全てが中途半端。

 

散々文句を言いましたが。個人的にはマット・デイモン演じるガードナー、良かったです。

マーガレットとデキて妻を殺す。そうして手に入れた生活。けれど委託したゴロツキに払う金など無い。案の定ゴロツキ達に追い回され。

妻の保険金を目当てにしていたのに。保険会社はなかなか金をくれない。それどころか保険担当者は厄介な事を言い出した。

妻が居なくなってから、子供も邪魔になってきた。

もう、何もかもが嫌。

一つ無茶をしたことで、次々足元を掬われて。そうなるともうやけっぱち。

墜ちていくガードナー。堪らん。

(後、ニッキーに「寄宿学校に入れ」と自室で命令していたガードナーの背後に写っていた水槽。その中にあったモチーフ?空気を送るやつ?宇宙飛行士のフィギュア?あれ、何なんですか。地味に気になって釘付けでしたけれど…)

 

突っ込みまくっていた1時間45分。そう思うと意外と楽しんでいたんだなとも思いますが。

 

ところで。この作品はその日のスケジュール上、あまり普段行かない映画館で鑑賞したのですが。

「何故。当方の隣に座るカップル(推定20代)のカップルは終始いちゃついている⁈この作品ってそういうムードになる要素一切無い気がするのに‼そして一体?一体どちらがこの作品を観ようと思ったのか??」

 

「この二人、何かおかしい」

 

劇場ポスターのキャッチコピーを、何回も脳内で繰り返した当方。