ワタナベ星人の独語時間

所詮は戯言です。

映画部活動報告「アズミ・ハルコは行方不明」

「アズミ・ハルコは行方不明」観ました。

f:id:watanabeseijin:20161219075650j:plain

山内マリコの同名小説の映画化。

5月のある夜に失踪した28歳OLの安曇春子。
ふらふらと男に依存する20歳の木南愛菜。
男だけを襲う、女子高生のギャング集団。
交わるんだか交わらないんだか。そんな三者の生き様を描いた作品。

何かこれ、予告が凄く面白そうだったんですよね。それで、観に行ってきました。

「このパターン…当方は知っている…『渇き』案件だ」
「渇き」役所広司の顔面アップなど大スクリーンでは迫力のありすぎた、あの大爆発映画…劇場が明るくなった後皆が無言になった。あの。


「ちょっと…思っていたんと違う…。」

それは当方がうら若き女性では無いからだと思います。
当方は老いた、ロッキングチェアに座って、文句を言いながら延々とゆすっているだけのおいちゃんですから。

「もう若くない」と言われ始める27歳。(27歳は若いですよ)ぱっとしない毎日。小さな会社で、明らかに働いていない無能上司からの「女ってのは」という偏見パワハラを受け続ける日々。実家は辛気臭く、どこに居ても居心地が悪い。そんな地元生活。

20歳。何も考えていなくて。水商売とアクセサリーショップ店員。一見誰とでも仲良く騒いでいるようで。女友達なんて居なくて。男とはすぐに寝てしまう。

少女とかいうファンタジー生物ではもう無い。でも、一足飛びに大人にはならない。女子高生は無敵。
女子高生たちは群れを成し。男を襲う。それは「男であるというだけで、問答無用にぼこぼこにする」という理不尽なもの。

28歳になった春子の失踪するまでの日々と。春子が失踪した後、町の掲示板に貼られた「安曇春子尋ね人ポスター」をグラフティーアートとして拡散しまくった二人の男とつるんでいた愛菜。そしてずっと活動し続けている、女子高生ギャング集団。

この三者の時系列がもう。ずっとシャッフルし続けるんですね。

「しかし、蒼井優。「オーバー・フェンス」と続いたからか。この「地方都市に住む、妙齢の不安定女子」の既視感。板に付いているな~」

そしてよくトイレットペーパーが切れる家だなあと。当方も長く実家に生息していましたが。当方の宅だけだったんでしょうか?母親っていうのは「何かが安い日」という時にこの手の日常消耗品を買う傾向があるので、トイレットペーパーのみが夜に切れるなんて無かったですね。なんて、それはさておいて。

家族に頼まれて。トイレットペーパーを買いにドラッグストアに行って。そこで再会する幼馴染み。

特に甘く盛り上がる訳でも無く。でも何となく距離は縮まって。セックスし。互いの孤独を満たしていって。穏やかで。満たされていく心…のはずが。


成人式で再会した同級生。そこから一気に加速して「付き合っている感じ」の20歳カップル。

「というか!高畑充希のはっちゃけ感よ!」

役柄的にも鬱々としがちな蒼井優とは全く正反対。もう「居る居る。こういう頭悪そうな空っぽギャル」全開。下品な言葉使い。緩すぎる頭と貞操観念。結局は男に依存して鬱陶しい。(顔が可愛いからアリ)リアル過ぎて…NHK朝ドラ女優なんて肩書きを叩き割っているその姿に、好感度が急上昇しまくった当方。完全に主役を食う勢い。

言ってる事もコロコロ変わって。彼氏とその新しい友達は「男同士の遊び」に夢中で。そうするとすぐに二人に便乗。(何故かすぐにストリート系ファッションに完全切り替え)散々騒いで。でも男たちはちょっと怒られたら止めてしまい。ついでに自分も二人に捨てられて。


「春子が失踪するまで」の経過。「愛菜が一人で疾走するまで」の経過。
男達の勝手や態度があるあるで。その積み重ねが結構なストレスになってくる。

「お互いに心を寄せていたと思っていたけれど。ただ相手が弱っている時に都合よく慰めていただけの存在だった」
「男二人で仲良くなって。途端に自分は切り捨てられた」「男だけでつるむ」
「女は30になると終わりという言葉の暴力」「女は能力が低い、だから給料も安いという管理職の考え方」
「本命が現れたら、ポイ捨てされる」「無かった事にされる」「キレられる」「無視される」「あの睦まじい日々は何だったのか」

「そもそも、自分は本気で愛されていない」

何も疑う事の無かった子供の頃。少女のままで。そのままだと思っていた。まさか。自分がこんな人生を送る事になるとは。

誰からも愛し、愛されて…とはいかなくても。少なくとも誰かには愛されて。そう思っていたのに。何故自分を愛してくれない。認めてくれない。


散々黙って受け止め続けた、男たちの「無邪気な暴力」を。最大のダメージを与える形で返した先人。でも、彼女の様な手段はレアケースでしかない。

その、たまりにたまったフラストレーションの爆発。を暗喩するものが「女子高生ギャング集団」であったのかなあと思う当方。

男たちに反撃など与えさせない。いきなりの先手。男でありながら弱い相手にやられるという屈辱。それは…形は違えど、長きに渡って男たちから受け続けた暴力に対する反撃。


「そんな風に考えるしか無いなあ~」ロッキングチェアーを前後に揺らしながらぼやく当方。

ちょっと時系列がちゃかちゃか動きすぎかと。登場人物の会話とかはリアルそのものなんですが…如何せんとっ散らかってしまって、下手したら「一体何を言いたかったのか」と思われかねないかなあと思う当方。

結局、あの女子高生ギャング集団の存在がふわふわし過ぎていて…。


結論も含め。何だかしまらんなあ~多分当方が老いたからやろうなあ~とともやもやしながら。劇場を後にしました。

映画部活動報告「 砂の器」

午前十時の映画祭「 砂の器」観ました。


f:id:watanabeseijin:20161218214941j:plain

1974年公開。松竹、橋本プロダクション第一回提供作品。野村芳太郎監督。脚本橋本忍山田洋次
ベテラン刑事今西に丹波哲郎。相棒の若手刑事吉村に森田健作。新進気鋭の作曲家和賀に加藤剛。その他緒形拳菅井きん渥美清等のそうそうたるメンバーで渋く渋く染めた作品。

「ああ。これもまた何曜日かのロードショーとかで観たんやろうけれど。全然覚えていない作品」

当方の父親の本棚には松本清張西村寿行が並んでいましたが…如何せん、あんまり食指が延びず。

恥ずかしながら。今更この映画を観に行きました。

もう42年前の作品なのか…そりゃあ、時代を感じるなんてもんじゃないな…ならば「何だよそれ!」という突っ込みは野暮という事を肝に銘じて。

一応、最終的なネタバレはしないで進めていきたいと思います。

6月。電車の操車場にて顔を潰された男性の死体が発見される。元々は身元不明であったその男。

彼と若い男性を前日酒場で見かけたという証言。
彼らの会話から「ズーズー弁でカメダと言っていた」というエピソードを得て、秋田県の亀田に刑事二人が調査に行く所から話は始まる。しかし捜査は空振り。

ほどなくして被害者の養子が現れ、身元が判明。全く東北とはゆかりが無かった被害者。まさかの中国四国地方出身者。

しかし「ズーズー弁と島根弁は似ている」という驚きの事実が判明。しかも島根に「亀嵩」という地域があると判明。向かう今西。
しかし、殺された被害者は全く人から恨まれる様な人物ではないと聞かされるばかり。
その間、にわかに信じられない勘と執念で吉村が新たな証拠を見つけ出す。

そして浮かび上がる、和賀という男。

一体被害者は何故殺されたのか。
和賀はどう関わっているのか。

和賀という男は、一体何者なのか。

てな事をやっていました。

「いやあ~。流石松本清張作品。そしておおらかな時代。警察がこんなに当てもない私見で電車で地方に行かせてくれているとは」

大体「カメダ」という地域名。流石にこの時代でも警察ならデータベースで調べられるでしょうが。て言うか地図を見なよ。伊能忠敬が日本地図を作り上げてどんだけ経っていると思っているんだ。

(ああ…やっぱり当方は突っ込みありきでしか話を進められません)

新聞で毎日連載されていた原作ではきちんと意味があったらしいのですが。正直「冒頭の秋田はいらんな~」と思ってしまった当方。

ただ、その超大作をあれこれとはしょり。「新事実が浮かぶ度にまた振り出しに戻る」という繰り返しを最小限にしたらしい映画版。

まあ…大変お疲れな体で行って、暖かい映画館に温められたら…ちょっと眠くなってしまいそうな前半の捜査編。

f:id:watanabeseijin:20161218235654j:plain


一応当方は寝たりはしませんでしたが。正直な話、ちょっとまったりしてしまいました。

なので「夏で暑いんなら、スーツのジャケットは何処かにしまっておいたら。肩に掛けたらしわしわになるし、いつか無くすぞ」「瓜美味そう~」「加藤剛の男前さよ」「血がいかにも絵の具」「そもそも酒場のお姉さんは、若い男とかズーズー弁なんてざっくりした事よりもっとはっきり相手が誰か分かるやろう」なんてぼんやりした事を考えてしまいました。

その後和賀という男に行きつき。彼の事を探っていく事になるんですが。

「いや…新聞の社説コラムからあのシャツに思考が行き着いて見事見付けるって。ちょっと考えられない奇跡やけれど…」

若くて情熱的な森田健作ならばそれが可能なんだと。モヤモヤするこちらの気持ちを押さえ込み。

和賀は一体何者なのか。彼の背景は?
一体どんな過去があったのか?

秋田。島根。その二つの地域が。40年以上経って、一体今どうなっているのか。

秋田のあの風景は、何となく今でもあんな感じなんだろうなと思いましたが。
「おそらく島根県亀嵩という地域はあんな田舎では無くなっているんやろうな」
あの映画のロケ地がそのままの地名なんでは無かったりするんでしょうが。

なんて。何故そんな事を思ったのかというと。

「大阪は今でも一緒だからだ。特にあの地域は」

新大阪駅が現在と全く変わらず。そして通天閣のある新世界。あそこは今でもまんまあの景色。(細かい事を言えば店とかは違うでしょうが)

「3月14日」と聞いて直ぐに「大阪大空襲か」とピンとくる当方。そしてその後の混乱で和賀が取ったどさくさの行動も「あるやろうなあ~」と思った当方。(これは地域差では無く。戦争という混乱した時代ならどこでもあったんじゃないかという話。そして余談ですが。大阪は戦争が終わる前日の8月14日にも空襲があったんですよ。そのたった一日の悲劇も悲しい話で聞いた事があります)

どう考えても怪しい和賀。しかし、彼と容疑者を繋ぐものがはっきりしない。(観ている側は何となくピンと来るエピソードが早くにありましたが)ただ、それがどうしてそうなるのかが弱い。そう思っていながら話は中盤を過ぎ。

そして、遂に和賀の新曲を引っさげたコンサートが行われる。そこで流れる新曲「宿命」

その協奏曲「宿命」に合わせ。捜査本部一同が集まる中「和賀の逮捕状を請求したい」と切り出す今西。そして明かされる和賀の過去と殺人に至る動機。


「ああ…そうくるのか」

種明かしまで一切語られる事が無かった、悲し過ぎるエピソード。流れる「宿命」



f:id:watanabeseijin:20161219000611j:plain


昔の日本映画は本当に冬が辛い。
厳しい親子の心情に寄り添いまくる雪景色。寒い。寒い。
(またも余談ですが。近年の日本映画で「雪景色が辛い」と心底震えたのは「北のカナリアたち」でした。あれはお話し事体はどうかと思いましたが、雪の冷たさ、景色と辛いエピソードに涙が出ました)

辛すぎる放浪の親子。

f:id:watanabeseijin:20161218235835j:plain

役者たちは殆ど無声で、流れるのは「宿命」の演奏。あの父親加藤嘉)の演技に映画館でも鼻をすする音がどこかしらから聞こえ始め。少年の歪んだ表情と、時折演奏シーンにバックしてスクリーンに現れる、整いまくった加藤剛の顔。

f:id:watanabeseijin:20161218235915j:plain


「もうこのシーンだけで、くどくど語らなくても分かる」

圧倒され。
泣くとかでは無く、兎に角無言で見入っていた当方が。あの、加藤嘉の最後の姿にどっと涙が出て。

だって。だって。あの父親がどんな気持ちでああ言ったか。それを思うと…。


「午前十時の映画祭に外れなし。やっぱり名作を出してくる」胸が一杯で劇場を後にした当方。

後日。母親とたまたまこの「砂の器」の話になって。

「これ。京都の映画館で当時観に行ったわ。何かデラックスシートみたいなやつで」「昔の映画館って二階席とかあったもんなあ」

「これ、加藤剛がお父さんを殺してしまうやつやんな」「うん?全然違うで」

悲しいかな…。概ね内容は合っていましたが。
母親には近日中に改めて観てもらいたいと思います。

映画部活動報告「シークレット・オブ・モンスター」

「シークレット・オブ・モンスター」観ました。

f:id:watanabeseijin:20161206161231j:plain

ジャン=ポール・サルトルの「一指導者の幼年時代」を下敷きにした?と言われる作品。

1918年。ベルサイユ条約締結前のフランス。アメリカからやって来た、政府高官の幼い息子。
まるで少女の様な美しい少年が。その麗しい外見とは裏腹にどんどん歪んでいく…。
果たして、何が少年をそうさせたのか?そしてその少年の行く末は?

f:id:watanabeseijin:20161215231123j:plain

主人公プレスコット役を演じた、トム・スウィート(撮影当時9歳)その美しさ。

「まあ…美少年を愛でる作品なんやろうなあ」

ヒトラーを。スターリンを。ムッソリーニを。そんな独裁者達を思わせる…事も無く…。

変態映画作品を得意とする当方がワクワクして観に行った作品。そして…。

「これ。思ってたんと違う」

不安定な年頃の少年が。馴染みの無い土地に行って。父親は仕事で忙しく。バイリンガルの母親と二人。他に少年に関わる人間は、年老いたメイドと、若いメイド。そしてフランス語を教えてくれる若い女家庭教師。

f:id:watanabeseijin:20161215231151j:plain


父親の存在感は無。母親は気難しく、はっきり言って子育てには興味が無い。年老いたメイドのみが彼に対して甘々で。そして何かエロい家庭教師。

「こんなナイスな布陣で。何でこんな事になってしまうのかね?」

勿体無い。勿体無い。

何故当方がそう思うのかというと…少年、初めから嫌な奴やからですよ。

少年の癇癪=爆発を、三段階で一応みせる構成なんですけれども。冒頭から人様に石を投げる少年。そして悪い事とは思っていない少年。

「これ普通は…元々は純粋やった少年が、環境が変わったりしていく中で視野が広くなったり狭くなったりしながら人格形成されていくっていう流れじゃないの?」

確かに少年に対して起きていくアクション。唯一懐いていた年老いたメイドとの別れ。エロい家庭教師との関係。


f:id:watanabeseijin:20161215231211j:plain
(っていうかね!何なのかねあのスケスケのブラウスとその下は!どういうつもりかね!そりゃあ、あの少年じゃなくても同じ事をするよ‼…また彼女と二人で居るシーンの光の柔らかさよ)

f:id:watanabeseijin:20161215231226j:plain


少女と間違われる事を最強に嫌悪しているくせに…美意識は半端ない。

あの、プライドが高くて不安定で強引な母親は、間違いなく少年の人格形成に関与しまくっているのに。そして母親だけではなく、あの夫婦の関係もネックやのに…あんまりみせる事も無く…。

f:id:watanabeseijin:20161215231247j:plain


何だか、要所要所で布石は置いていっているな~と思ったのですが。ちょっと置きっぱなしで、回収が雑かなあと思いました。

「あんたね。話は一から十まで全部言わなあかんのかね?自分で考えたり、思いを巡らせたり。頭を使いなよ」そんなご意見。ごもっともではありますが。

最後に「時代考証などの映像は配給会社で追加しました」みたいなテロップが流れた時。「それは流石に無かったら訳わからんかったぞ」と思った当方。

つまりは「自分で考えな」が多すぎる。にしては思わせぶりなヒントが多すぎて、でも繋がらなくて。却ってエピソードと大きな流れがちぐはぐになってしまって…持って回った言い方をしてしまっていましたが…一言でいうと「何が言いたいのか分からない」と感じてしまう。
(一応映画鑑賞後に解説みたいなやつは読みましたが…それは分からんやろう~としか…)


「合う人にはばしっと合うんやろうけれど。これは好き嫌いがはっきり分かれそうな作品やなあ」

ビジュアルは最高でした。何より少年が美しい。そして女性陣が軒並み美人。屋敷も背景もゴシック。色のトーンも落ち着いている。

f:id:watanabeseijin:20161215231333j:plain

そして音楽。

この作品で特記する事は「音楽のものものしさ」もう終始不穏な音楽。何かが起きていくという、不安を煽る音。人によっては「オーバーだ」と言われかねないですが。当方はサントラを買っても良いなと思ったくらい、好きなタイプ。

「そうか。終始この音楽を流して、セリフが一切無くて。それなら楽しめる気がする」
出ました。当方の「オサレバーで流れるオサレ映像映画枠」それならしっくりくる。

散々グチグチ言いましたが。

あのパーティー。カーテンに移る炎。

ラストシーン。実は誰だったのか。それを思うと、やっぱりなかなか憎めない。癖は強いけれど…そんな作品でした。

f:id:watanabeseijin:20161215231359j:plain

映画部活動報告「ファンタスティックビースト と魔法使いの旅」

「ファンタスティックビースト と魔法使いの旅」観ました。

f:id:watanabeseijin:20161206161139j:plain

ハリーポッターの新しいシリーズが遂に幕を開ける!今度の舞台はハリーポッターの活躍した時代から70年前のアメリカ。人間界と魔法界の間に交流が無かった時代。
主人公は、魔法動物学者ニュート・スキャマンダー。魔法動物の収集をしていた彼。まさかの一体を人間界に逃がしてしまった事で、魔法界からも迫害されつつある。そんな彼が人間界で魔法動物を探しながら巻き起こす、ドタバタファンタジー」

f:id:watanabeseijin:20161212235518j:plain


大体こんな感じの煽り文句で予告していたと思いますが。

「ハーリハリハリハリポタ~」昔クドカンの夜中にやっていたドラマで子供が歌っていたあのメロディーを脳内で流しながら。


ハリーポッターシリーズ、一作たりとも映画館で観ていない」

何曜日かのロードショーでは見たり…見なかったりしましたが。でも、原作は読んでいます。しかも一巻以外は発売日購入で。(と言っても、コスプレして書店に並んだりはしていませんよ…お若い方はご存じ無いでしょうが、当時そういう社会現象があったんですよ。当方はひっそりと地元の田舎書店にて購入しました)

とはいえ、別にハリポタファンでもなかった当方。(面倒なんでここからはハリポタと省略させて頂きます)

専門学生であったはるか昔。同級生のクミが熱く薦めてきた「ハリーポッターと賢者の石」後にも先にも彼女に何かを薦められた記憶はありませんが、兎に角面白いんだと。その勢いに負けて件の本を購入した当方。貧乏学生には厳しい、まあまあなお値段で、尚且つ武器になりかねない分厚いハードカバー本を。

注意)ここからの感想はあくまで当方の主観であって、ハリポタファンを不快にさせる意図はありません…先にお詫びします。

「これ…好きじゃない」目を輝かせて感想を待つクミに一体何を言ったのか全く覚えていませんが。これは当方の苦手な部類の児童文学。

「ハリーは偉大な魔法使いなんだ」こういうフレーズが意味なく太字で表記。何だか登場人物達の言葉の言い回しが変。(確かヴォルデモードが俺様とか言っていた様な気がする。何だよ!お前ジャイアンか)細かい設定が所々曖昧。

あとがきの作者のサクセスストーリー…わざわざ少年少女にその事情を書かなくてもいいんじゃないか。知らんがなという自己顕示欲を感じたり。そして本に折り込まれていた「ふくろう通信」なる、訳者のこの本に対するダダ漏れの思い。ほんまにな…わざわざ少年少女に(以下繰り返しの為、省略)

「文句ばっかり!じゃあ何で全巻買ったんだよ!」ハリポタファンの皆様はキレてそう言うでしょうが。

「続きものだったからだよ!!」(逆ギレ)

初めから7部あると言われたから。連作の作品はきちんと見届けるのがマナーだと当方は思っていたから。それだけですよ。

ダンブルドアとハリーの、船で延々水を飲む下りなんだ」「て言うか、従弟のダズリー家での下り、心底要らない」「スネイプ先生を幸せにしてやってくれ」エトセトラ。エトセトラ。

そのハリポタ全巻の現在ですか?知り合いの小学校教師に譲渡しました。
当方の様な荒んだ心の持ち主では無く、然るべき健全な少年少女達がワクワクしながら物語を楽しんでいると聞いています。

いかんいかん。初めて当方がハリポタに対する思いを口にしてみたら、とんでもない長さになってしまいました。


「で。何でこの作品は観ようと思ったの」うんざりの口調でしょうが。

「それは…あの。ちょっと仕事とかでやるせなくて…真っすぐ帰宅したくない時とかあるじゃないですか。そういう時になんかスカッとしそうな映画を観たかったというか。で、丁度上映時間が良い感じに合うやつとか…そういうのやったんですね」「エディ・レッドメイン目当てですか」「何でだ。それはちゃうぞ(即答)」

f:id:watanabeseijin:20161212235730j:plain

エディ・レッドメイン。「そう言えば「レ・ミゼラブル」も「博士と彼女のセオリー」も「リリーのすべて」もこの映画館のこのスクリーンで観たな」そう思い返して地味に驚いた当方。甘々の顔立ちと、幅広すぎる役者魂。体を張る事も厭わず。非常に男気を感じる役者だと、当方は思っているのですが。

「でも…ちょっとこの作品に於いては女性ウケを意識しすぎたキャスティングやったんちゃうかなあ~」

だって。この主人公が魔法動物を逃がしてしまったのが発端なんでしょう?いや。他に問題は多々ありましたけれど。元々事態を引き起こしたのは彼の魔法動物なんでしょう?おっちょこちょいでは済まされない。エディ・レッドメインの男前魔術で目くらまししていましたが。この主人公に「男前」以外の良い所、ありますかね。

「不景気。時代も暗く」「そして魔法使いと人間の折り合いも悪く。と言うか、ほとんど交流など無い」「暗い心が呼び覚ます、闇の力」

J・Kローリングは本当に毎度暗い題材を持ってくるよなあ~と思う当方。そして概ね登場人物は陰気。でもそこでぶっちぎりの明るさで話を盛り上げる人物。

f:id:watanabeseijin:20161212235923j:plain

「パン屋~のおじさん!」

f:id:watanabeseijin:20161213000057j:plain

いやあ~。この作品は彼無しでは救われませんでしたよ。この圧倒的な陽のキャラクター。

f:id:watanabeseijin:20161212235940j:plain


コミカルで、動きも機敏。唯一の人間でありながら、魔法云々の奇妙な事態にフレキシブルに順応。純粋。総じてキュート。ちょっと切ない展開もあるけれども。

f:id:watanabeseijin:20161213000034j:plain


「彼を幸せにして下さい」汚れちまった当方が思わず祈った、彼のこれからの人生。

後は…コリン・ファレルですかね。

f:id:watanabeseijin:20161213000115j:plain


「このベタベタの男前は…誰でしたかね」と一瞬プロファイル出来なかった当方。「ロブスター」以来でしたから。そう思うと同一人物とは思えないですけれども。正直、当方は「ロブスター」の彼の方が好きです。

f:id:watanabeseijin:20161213000144j:plain
f:id:watanabeseijin:20161213000852j:plain


f:id:watanabeseijin:20161213001105j:plain

(後、余談ですが…この画像で思い出してしまって。帰宅が遅くなったからといって、その人物のしていたベルトでお仕置きって。それを示唆していたシーンはワクワク案件でしたが。その実態が「ベルトの金属部分で手を打ち付ける」という折檻でしかないものだった時。心底嫌悪感に襲われました)

まあ。ハリポタシリーズには、基本チャチャばかり入れてしまう当方の健在という確認。

エディ・レッドメインの髪型。ラーメン大好き小池さんをベースに8:2位で分けている感じか?変じゃないか?」「大型魔法動物と目線が合っていない」「最後の悪キャラの下り…急転直下な変身。何故?」「大風呂敷を大慌てでしまう感じ…」エトセトラ。エトセトラ。


「今回の作品シリーズは全5作?」

今回は小説も買っていませんしね。付き合いませんよ。

f:id:watanabeseijin:20161213000310j:plain

映画部活動報告「ガール・オン・ザ・トレイン」

「ガール・オン・ザ・トレイン」観ました。

f:id:watanabeseijin:20161206161100j:plain

電車に乗る主人公の女性。どうやらこの電車は彼女にとっての通勤電車らしい。車窓からの景色を眺める彼女。
彼女が必ずチェックする一軒家。そこに住む若い夫婦。二人の生活を想像する彼女。

これだけなら、電車通勤あるあるなんですが。

「この一軒家は、かつて彼女が別れた夫と住んでいた家。夫は今でもその家に住んで。新しい家庭を築いている。その夫婦の様子を毎日車窓から眺める主人公」

おっかねえええ。それだけでもアンタッチャブルな案件ですが。

結婚生活中から。アルコールに溺れていった彼女。悲しかな、現在は立派なアルコール依存症

己をセーブ出来ず。酔っては元夫に連絡するという、悲しいストーキング行為。周囲の目も冷たく。

ある日。血だらけで目を覚ます彼女。そして、元夫の家の隣家の女が行方不明になったという報道を目にする。すぐさま彼女の元に現れる警察。
その隣家の女が行方不明になる前、現場近くで目撃された彼女。でも酔って記憶の無い彼女には何も説明が出来ず。

一体あの日。何があったのか?元夫恋しさ故、憎い現在の妻と間違えて隣家の女に危害を加えたのか?まさか…殺したのか?

彼女自身が説明できない中、どんどん容疑者としてマークされていって…。


「酒飲みにキツい映画…」涙目の当方。


「飲んで~飲んで~飲まれて~飲んで~飲んで~飲み潰れて眠るまで~飲んで~」そんな酔いどれ当方にとって。身を切るような厳しいあれこれで一杯。息もだえだえになる作品。


「て言うかな。記憶無くすまで飲むなよ」

夕日の差し込む取り調べ室で。下戸ポリスの声が聞こえる。震える当方の声。「分かっていますよ」「いや、分かっていない。そんなになるまで酔っぱらうって事のみっともなさ。自覚しなさいよ」「分かってる。でもな…どうしても酔わなやってやれん事があるんや。しんどい気持ちをぶつけられるんは…酒だけなんや…。」「噓泣きは止めて貰えますか。大体、生きていてしんどいのは貴方だけじゃないでしょうが。そんなのは弱虫の戯言ですよ」「…うわあああああああ。殺せ!当方を殺してくれえええ!!殺してえええ!!!」

辛い…酒飲みと下戸の間にある溝の深さ。決して交わる事の無い、真っ黒な奈落。


すっかりアルコール依存性で廃人寸前の主人公と。新しく妻の座に収まった元愛人。その子供のベビーシッターで、行方不明になった元夫の隣家の女。

その3人の女の視点。時系列を前後しながら。物語は進んでいく。

子供が欲しかった。でも出来なかった事からアルコールに溺れだした主人公。この夫婦の家を仲介した不動産業者であった元愛人。いわくありげな少女時代を送った隣家の女。

そして、話のキーとなる、カウンセラー。隣家の夫。そして元夫。3人の男達。

「元夫…。どうして主人公はそんなに依存するのか?どういう魅力が?マイホームを買う為に知り合った不動産屋の女と出来て、挙句結婚ていうのもアレやけれど。普通、そのマイホームに新しい女と住むかね?それとも、この国ではそれはよくある事なのかね?」おかしくないか?その神経。「そしてそんな危ない元妻からの連絡は拾わないように出来るやろう。着信拒否設定とかさ。警察に言うとかさ」一応言い訳はしていましたが…納得しかねる。

「面倒臭えええ。という隣家の女のメンヘラサクセスストーリーを延々聞かされるという(いや、そういう大変なお仕事なんだとは理解しています。…お疲れ様です)カウンセラー。ちょいちょい仕掛けられるハニートラップ。という名の、とんだ地雷。一筋縄ではいかない隣家の女。そしてその夫。DVスレスレ。


「犯人はこの中に居る!」

当方の中の、蝶ネクタイをした眼鏡少年や金田一家のご子息はそう言ってるし、そういう話でしたが。

「これ…なんだかんだ言って、この主人公の彼女やったら悲しすぎるけれど…サイコな感じも出せるな」なんて思っていた当方。

流石に「犯人はさあ~」なんて続けませんので、話の先はこれ以上は書きませんけれども。

「うん。そうやろうな」(真顔)映画館で頷いた当方。結構凡庸な展開。現実世界では穏やかに受け入れた最後。ですが…。



「酒飲みを馬鹿にするなああああああああああ!」

もうすっかり夜のとばりが落ちた取り調べ室で。他の下戸ポリスに取り押さえられながらも、椅子を蹴り倒し、机をひっくり返そうとする当方。大暴れ。

酒を飲む奴は愚かだと。善悪の判断もつかない、誰からも信用されない。

「いい加減にしろよ」「俺に抱かれようと思ったんだろ?誰がお前みたいな酒飲みのクズと!!」作中の彼女への発言のひどさ。膝を折って泣きたい言われ様。

(まあ。確かに彼女の飲み方は怖かったですけれどね。でっかいマイボトルにリキュール詰め替えて、ストローで飲むって。当方の父親は「酒をストローで飲むな」とよく言ってましたし…あれ、凄い酔うんですよ。大体、人目を気にして入れ物を移し替えて酒を飲むという行為自体が依存症。流石に当方も新幹線とか長距離移動で遊びに行く時以外には社内で酒は飲みませんし。後、そんな彼女の凄い所は二日酔いになっていなかったという事。流石にあんな飲み方をずっと続けたら胃も肝臓もやられますけれども)


そこまでドン底やった彼女が。浮き上がれる場所を見つけた。光が差し込んだ。


「彼女にとって、それが新しい朝でありますように…」

未だ暗闇の取り調べ室から。酒飲み当方はひっそりとエールを送りたい。そんな作品でした。

映画部活動報告「聖の青春」

「聖の青春」観ました。


f:id:watanabeseijin:20161130075058j:plain

1998年に29歳の若さで他界した、実在の将棋棋士村山聖」の将棋人生を描いた小説。の映画化。

村山聖役を松山ケンイチ。そしてライバルの羽生善治東出昌大が演じた。


「将棋か…全く存じ上げませんなあ」

日曜日。NHKでうっかり遭遇する将棋番組。3秒もしない内にチャンネルを変える当方。ルールを知らなさすぎて。

「正直、将棋の駒ではドミノ倒ししかした事がありません」

そんながっかり当方が。NHKでやっていた「村山聖特集」を目にして。そのストイックさに驚いて。思わず観に行きました。

当方は将棋トウヘンボクで。(羽生善治が将棋界のレジェンドである事は一応知ってはいましたが)ましてや、特別松ケンファンでもない。一体どうなる事かと思いましたが。

結論から言うと素直に楽しめましたし、真面目に作られた作品だなと思いました。

因みに、当方の座席隣りには将棋ファンの方(おそらく)が居られまして。
劇中身を乗り出して。時折「おお~」と息だけの声。そして溜息…に「何?!何が起きているのか‼」と焦った当方。

「松ケンって太りやすいんやろうな~」

デスノートのLをリアルタイムで知っている当方としたら、あれから瞬く間に丸っこくなっていった松ケン。
どんな役でも出来る力を持ち。でもその朴訥とした外見からか、ほんわかキャラかイロモノ俳優になりつつあった松ケン。
(あの、全編青森弁という「字幕付けろや!」という映画はなかなかのインパクトでした。まああれは…脳みそでハンカチ落としとかもありましたし…って脱線)

「いや。今回に関しては太りきれていない。松ケンは太りやすい訳じゃ無かったんやなあ」

村山氏の実際の画像を見る限り、松ケンがいかに「太る努力」をしたのか、その大変さ。でありながら「ネフローゼなどの泌尿器科疾患患者の独特な風貌(浮腫)」を「ただ太る」事では再現できないのだとしみじみ思いました。

そして東出昌大羽生善治

やっぱり、役柄によってはムラのあるとしか言いようのない彼が。「自身も将棋好きであり、研究を重ねた」と発言していたのも成る程。今作はばしっと決めていました。
当方の(あくまでもテレビで浅~くですが)見たことのある羽生善治。(褒めています)確かに似ている。

村山聖
広島で生まれ。小児期にネフローゼと診断され。入院し、院内学校で過ごした学童期に将棋と出会う。めきめきと頭角を現し、14、5歳で単身大阪に上京。森先生に弟子入りする。

「この森先生との日々が、原作ファンの大好きな所なんやろうな~」

後から色々資料を読むと…本当に村山氏は良い師匠に出会えたんやなあと思いました。親御さんも、病気を持つわが子がまだまだ子供の時に巣立つのは不安で仕方無い。でも、その相手が森先生であったのはほっとしたんやろうなと。

関西将棋会館…そしてこの街並み…馴染みがありすぎる。」

おいおいこれあそこやないかと。急に穏やかさを失う当方。大阪環状線内回りの。京橋から梅田に向かう、その景色。

「1990年後半当時とは大阪駅の出で立ちが全く違うんやけどな…」そして「こんな標準語を喋る古本屋があるか」「皆一体どこの言葉を喋っている」言語問題に若干モヤモヤし。まあそれはご愛嬌。

そんな村山氏の大阪時代。強くなるために。もう一つ上京。東京。

同世代でぐんぐん伸びて。もしかしたら手が届かない所までいってしまいそうな羽生善治。その人と。将棋を指したい。勝ちたい。兎に角同じ土俵に昇りつめたい。

そして実現する、羽生善治との一戦。

「しっかし。あの雪の旅館での将棋戦。実際の一戦を再現したという驚異もさながら。あの夢みたいな美しさ」

f:id:watanabeseijin:20161204232157j:plain


羽生善治の負ける時のエレガントさ。しびれる当方。


…ちょっとその後の酒場での会話にはやりすぎかなと感じてしまった当方でしたが。
(後ね…どこまで真実かは知りませんが。あの…女性に関してはプロの方を試していいんじゃないかと思ってしまった汚れちまった当方。だってあんな事、羽生氏だって言われてもどうしようもないですよ…)


「太く短く生きた人」

当方が。映画を通した村山聖氏を観て、思った事。

腎臓の機能が落ちていて。すなわち、体から出る排出物の排出が上手く出来ない、毒素が溜っていく。それは不可逆性のモノで、奇跡はあり得ない。進行は遅らせる事は出来る。でもその為には、かなり生活をセーブして、慎重に己を管理しないといけない。でも。

自分はそうやって生きたくない。病にびくびくしたくない。やりたい事を思いっきりやりきって、やりたい事だけに集中したい。

やりたい事だけに集中したい。そう思う事はあっても。一体どれだけの人がそれを実行出来るというのか。

「大阪時代は森先生が居た。森先生は将棋だけではなく、恐らく心身に渡って面倒を見てくれたんやろう。でも…単身東京に向かった後。彼の健康管理はどうなっていたんやろう…」

完全に勝手な推測ですが。あんまり好ましい感じじゃなかったんじゃないかと邪推する当方。

「膀胱癌。ネフローゼとは関係無いけれど…せめて…せめて同じ泌尿器科なんやし…定期的に受診して、早く見つかっていたら…あの当時から初期なら内視鏡で取れたんちゃうか。」たらればですが。

ただでさえ腎機能が悪く。片方の腎臓はほぼ死んでいる。手術をしないと余命3か月。なのに。

全身麻酔をしたら頭がボケる」

麻酔科学会が思わず総立ちになる偏見。「全身麻酔をせずに膀胱とその周りの組織を取るなんて不可能だよ」外来での泌尿器科医師と同じ早さで同じ言葉を(脳内で)返す当方。そんなの、江戸時代位の拷問やぞと。

20代後半の男性。本人の首に紐を付けて。無理やりにでも手術を受けさせたい。だって。再発のリスクがあろうとも、そもそも手術をしなけれは死んでしまうもの。なのに。しんどくても。例え体がままならなくとも、目の前の将棋の事しか考えていない。

ああもどかしい。切ない。やりきれない。でも本人はそう思っていない。

結局「頭がボケる」状況が起きて、やっと手術を受けたんやなあと思いましたが。

ちょっとここらへんからの描写が…正直、急速にはしょりだすんですよね。始めから中盤にかけて時間を掛けすぎているんでしょうか。駆け足。そして。

最後の羽生善治との対戦。



29歳で生涯を終えるという事。勿論短すぎるし、彼にもっと生きて欲しかったと思う人は沢山居る。生きていれば。どんな姿であったとしても、生きているという事には意味がある。でも。

将棋に。たった一つ打ち込めるものが将棋で。それを見つけて。徹底的に向き合えた。そんな人生。

歳を取る事なんて。老いる事なんて考えない。今向き合うモノは将棋。

そして、将棋が打てなくなる時は命の終わり。

「カッコええやないか。そんな人生。」

そんな村山聖氏の生き方に多くの人が魅せられ。だから今でも色あせない。

まさか地味としか思っていなかった将棋の世界がそんなにドラマチックやなんてな。


とある映画を観た後。少し足を伸ばし。「関西将棋会館」と、その周りを散歩した当方。

f:id:watanabeseijin:20161204232456j:plain

映画部活動報告「エブリバディ・ウォンツ・サム‼ 世界はボクらの手の中に」

「エブリバディ・ウォンツ・サム‼ 世界はボクらの手の中に」観ました。


f:id:watanabeseijin:20161127214232j:plain

1980年。9月。アメリカ。

スポーツ推薦枠(野球)にてテキサス大学に入学する主人公。
アメリカでも1,2位を争う強豪校での活躍を夢見て「野球部専用寮」のドアを叩く主人公。でも。

そこに居た、完全に振り切った先輩たち。愛すべきボンクラ達。

f:id:watanabeseijin:20161127231201j:plain



「6才のボクが、大人になるまで」のリンクレイター監督最新作。

「主人公が大学寮に入って、入学式を迎えるまでの3日間」を描いた作品。


大学生。馬鹿ばっかりやれた時期。異性を見ては、恰好を付けて。結局はヤリたいだけで。勉強なんてそっちのけ。ただただ刹那的で。でも能天気だった。そんなあの頃…。

目を閉じて…(例のボロンボロンギターが流れてきて)想像してごらん 天国なんて無いんだと (色々略) 皆がただ今を生きているって…。

「分かるかああああ」

当方は大学には行きませんでした。現在生業にしている職に就くため、3年制の専門学校に入学。キチキチのカリキュラム故、ふざけるような余暇は無く。アルバイトはしていましたが…それもせいぜい2年生位まで。今思えば、もっと気楽にやれよと思いますが、周りの友達も至って真面目で誰も色恋にうつつを抜かさず。

それどころか。専門学校での狭すぎる人間関係から、異様な連帯感が生まれ。「貴方の為を思って」という相互駄目だしが平然と横行。

「当方の属しているのは日本赤軍か」総括かと。イラついた想い出…。

あかん。あかんな。この展開は暗すぎる。なのでこれ以上突っ込んでは書きませんが。

そんな陰鬱とした専門学生であった当方から見た大学生…今と同じく不景気な時代ではありましたが…非常に自由に見えました。

まず「朝イチから登校しなくてもいい」単純に羨ましい。「カリキュラムをカスタム出来るらしい。何か単位制って奴の自由さ」専門学校は全部必須科目。「サークルとかいう名のコミュニティー」「そこでの恋」単純に羨ましい。そして「何かを見つける為に大学に行く。自分の可能性を広げる為に大学に行く」目標を先延ばしにしての、自由な4年間。

完全に自分の目的を決めて、だからこその専門学校入学。(当方の職業も昨今では大学卒がポピュラーになりましたが)選んだ事は後悔していない。回り道はしたくなかったし、今この歳で同じことは出来ないと思うと若さでしか乗り切れなかったあの生活。ですが。

大学生だって、楽しい事ばかりじゃない。ずっとふざけている訳じゃない。そりゃあそうでしょうが。

「人生の中で唯一、ふわふわしていても許される時間」

そう見えて。そんな時間はもう手に入らないから…心底羨ましく思う訳ですよ。

という長い前置きを置いてから、もう一度この作品を振り返ろうとしてみますが。



f:id:watanabeseijin:20161127231306j:plain

「やっぱり何も共感出来ないな…当方がこの後の世代で、こんなイケイケな時代を知らんのもあるからかもしれんがな…。」

18歳で。車を乗り回して。入った寮の先輩たちは軒並み能天気。皆で朝から酒を飲んで。大学の近くにあるディスコやバーに繰り出して。「スポーツ優待生は顔パス」つまりはタダで飲み放題。そこで出会う女子は入れ食い状態。野球部であれば必ずモテる。必ずヤレる。
監督からは「寮の寝室に女は連れ込むな」と言われたけれど。皆そんなのお構いなし。がんがん「ヤリ部屋」に連れ込んで。そして基本ヤリ捨て。

そして練習風景。

「こんな奴ら、絶対全米トップじゃないよ」としか思えない野球部の面々。そして案の定…。

f:id:watanabeseijin:20161127231325j:plain


映画では「俺たちトップ選手。トップチーム」みたいな事を言ってましたがね。まあ、正直そんな風には見えませんでした。嘘でも良いからここはリアリティーを出すべきやったはずだと思いましたが。

そして、主人公の超特急の恋愛事情。



f:id:watanabeseijin:20161127231344j:plain

「そんな上手い話があるかあああ。」

なんなんだと。この驚くほどに都合の良い話は。パーティーピープルは。あり得ない絵空事だよと。


そうぶった切れるはずなんですが。

「何やろうな…それでも何か嫌いにはなれない」

お馬鹿な面々を。都合の良すぎる主人公を。嫌いにはなれない。それは多分。「それがいつかは終わる」事を当方は知っているから。

全編馬鹿馬鹿しい事をやっていながら。ふっと過る虚無感。今だけだぜ。だからせいぜい楽しんでおきなという老兵当方の声。

作品の中でもそんな声は時々ありましたがね。…でも。そんなの関係ないんですよ。主人公も野球部の面々も、大学生たちも。今を楽しむ事が最優先なんだから。パーティーはまだまだこれからなんだから。

f:id:watanabeseijin:20161127231409j:plain


目を閉じて…(例のボロンボロンギターが流れてきて)想像してごらん 天国なんて無いんだと (色々略) 皆がただ今を生きているって…。

「何一つ、共感はしないがな…」